概要
Intelは2026年6月16日、ハワイ州ホノルルで開催されたVLSIシンポジウムにおいて、次世代半導体プロセス「18A-P」のリスク生産(risk production)を開始したと発表した。リスク生産とは量産に向けた初期製造検証フェーズであり、顧客要件を満たせる見通しが立ったデータが得られた段階で行われる。Intelはすでに既存の「18A」ノードをアリゾナ州の製造拠点で2025年12月から量産しており、18A-Pはその性能強化版となる。
この発表はApple・Nvidia・Googleなどの大手テクノロジー企業がIntelのファウンドリ事業を活用するかどうかの判断に直接影響するとされており、業界から注目を集めている。チップアナリストのBen Bajarinは「Appleは18Aではなく18A-Pが出るまで発注を待つ可能性が高い」と指摘しており、リスク生産開始はAppleとの契約交渉を大きく前進させる出来事となっている。
技術的な詳細
18A-Pは、トランジスタ・配線・設計技術の協調最適化(co-optimization)によって前世代の18Aと比較した場合に次の性能向上を実現している。
- CPU性能: 同電力条件で9%向上、または同性能で消費電力を18%削減
- 熱抵抗(熱耐性): 20%以上改善
- 設計互換性: 18Aと完全な設計ルール互換を維持しており、既存の18A向け設計資産を流用可能
設計ルール互換性は、既存のファウンドリ顧客が18Aから18A-Pへ移行するコストを大幅に抑える点で重要な特徴とされる。業界関係者からは、最初のファウンドリ顧客の多くが18Aを飛ばして18A-Pから採用を始める可能性があるとの見方も出ている。なお、Intelのロードマップにはさらにその先として、TSV(シリコン貫通電極)を最適化した「18A-PT」やCFET(Complementary FET)技術、窒化ガリウム(GaN)統合なども位置づけられている。
Appleとのファウンドリ契約と市場への影響
Intelの最高経営責任者(CEO)であるLip-Bu Tanは、2026年5月の時点で「2026年後半に複数のファウンドリ顧客から正式なコミットメントを取得できる見込み」と述べており、18A-Pのリスク生産開始はその実現に向けた具体的な進捗を示すものとなった。IntelはNvidiaおよび米国政府から出資を受けており、Appleを含む大手企業がIntelのファウンドリ顧客になるかどうかが今後の焦点となっている。
一方で、課題も残る。Intelはファウンドリ事業において、Armベースのアーキテクチャ向けチップ製造の経験がTSMCと比べて乏しく、Apple・Google・Amazonといった企業が主に採用するカスタムチップ領域での実績が少ない。また、量産段階での歩留まり(yield)を90%以上に維持できるかどうかも重要な評価ポイントとなる。TSMCのN2プロセスは依然として回路密度や量産規模で優位性を持つとアナリストは指摘しており、Intelがファウンドリ市場で本格的なシェアを獲得するには継続的な実績積み上げが求められる。18A-Pのリスク生産開始という節目を受け、Intel株は年初来で200%以上上昇しており、市場のファウンドリ復活期待が高まっていることを示している。