急増するAI起因レイオフの実態
2026年上半期を通じてAIを理由に掲げる企業レイオフが急増している。TechRadarが引用するLayoffs.fyiのデータによれば、2026年第1四半期だけで約70,474人が職を失っており、これは2024年第1四半期(57,269人)・2025年第1四半期(29,845人)と比較して大幅な増加傾向を示している。うちおよそ4分の3が米国内での解雇だ。さらにTechCrunchの報道では、直近1ヶ月だけで約40,000人が解雇されており、過去2年間で最高の月間件数を記録。3ヶ月連続でAIがすべての業界を通じた「レイオフの最主要理由」として挙げられている状況だという。
削減を実施した企業の中でも目立つのがMetaとBlockだ。Metaは全従業員の約10%にあたる8,000人規模の解雇を断行し、同時期にCEOのマーク・ザッカーバーグがマイアミで歴史的な高額の豪邸購入を発表したことで批判を集めた。決済企業のBlockもまた、企業規模の半数近くに相当する約4,000人を削減。CEOのジャック・ドーシーは当初「AI導入による新しい働き方への移行」と説明したものの、後にパンデミック期における過度な採用が原因だったことを認めた。FreshworksやCoinbaseもAIを理由に挙げた大規模レイオフを発表しており、業種を問わずAIが「削減の大義名分」として使われる傾向が鮮明になっている。
AIが「万能の言い訳」になっているという指摘
専門家の見方は一様ではない。著名VC(ベンチャーキャピタリスト)のマーク・アンドリーセンは「AIは"万能な言い訳"になっている」と指摘しつつ、「大企業の多くは25〜75%過剰に人員を抱えている」という見解を示した。一方、CognizantのチーフAIオフィサーであるババク・ホジャット氏は「AIはリストラの責任転嫁に使われているにすぎず、実態はパンデミック期の過剰採用の是正やビジネスモデルの転換が主因だ」と反論する。削減理由がAI専一なのか、それともAIが便利な口実として利用されているのかは、現状では判別が難しい状況だ。実際、コスト削減名目でAI導入の影響を隠す企業もあるとされ、AI起因の削減比率は発表数値よりも高い可能性が指摘されている。
富の偏在と高まる社会的不満
職を失う労働者が急増する一方で、AI関連の富は少数のインサイダーに急速に集積している。AI半導体企業Cerebras SystemsのIPOは市場時価約670億ドルを記録し、共同創業者たちを一夜で億万長者に押し上げた。SpaceXのIPOも時価総額2.1兆ドルに達し、約4,400人の百万長者を誕生させた。こうした富の集中は統計にも現れており、2026年1月の調査では有権者の65%が「中流階級の生活は手の届かないものになった」と回答。米国民の76%が生活費を「最大の経済的懸念」と位置づけており、前年の58%から急上昇している。
TechCrunchはこの状況を2008年金融危機後に「銀行への公的救済」への怒りが爆発した「Occupy Wall Street」運動になぞらえ、今度は「AI富裕層の台頭」への怒りが同様に社会的な爆発点を迎えつつあると警告する。AI導入による生産性向上の恩恵が広く分配されず、ごく少数の創業者・投資家・株主に集中し続けるならば、この格差は今後さらに社会的摩擦を生む火種となる可能性が高い。2026年下半期に向け、テクノロジー業界がAI自動化の恩恵と労働者へのコストをどのように向き合うかが、社会全体の安定に直結する重要課題として浮上している。