概要
2026年6月8〜12日に開催されたAppleの開発者向けカンファレンスWWDC 2026において、Swift 6.4が正式にリリースされた。今回のリリースでは、クロスプラットフォーム対応の大幅な拡張としてAndroid向け公式Swift SDKの提供が最も注目される。これはSwift 6.3で初めて同SDKが同梱されたことに続く進展であり、開発者はSwiftでネイティブなAndroidアプリを構築したり、既存のKotlin/Javaアプリとの連携を実現できるようになる。組み込み向けSwift(Embedded Swift)も引き続き改善が続けられており、CとのInteroperabilityやデバッグサポートが強化されている。
また、Swift Package Managerには全プラットフォーム共通のビルドエンジンであるSwift Buildのプレビューが統合されており(現時点ではオプトイン)、よりクロスプラットフォームで一貫したビルド体験を目指した取り組みが進められている。WebAssemblyを介したJavaScriptブリッジの高速化も含まれており、Swiftのウェブ方面での活用の幅も引き続き広がっている。
言語機能の強化
Swift 6.4ではいくつかの重要な言語仕様の追加・改善が行われた。
@c 属性によるC言語へのSwift関数エクスポートが新たに導入された。この属性を付けるだけで、対応するCヘッダーの宣言が自動生成されるため、これまで手作業が必要だったブリッジングの手間が大幅に削減される。
並行処理(Concurrency)まわりでは、weak let プロパティがSendable型でサポートされ、逆に~Sendableを使ってSendable適合をオプトアウトすることも可能になった。また、Continuation<Success, Failure> 型においてダブルレジューム(二重再開)がコンパイル時エラーとして検出されるようになり、実行時オーバーヘッドなしに安全性が向上した。コンパイラによる並行処理の診断も精度が向上し、Taskブロック内のエラーハンドリングパターンなど、これまで見逃されていた問題を検出できるようになった。
可用性アノテーションには @available(anyAppleOS 27, *) という省略構文が追加された。従来はiOS・macOS・watchOS・tvOS・visionOSを個別に列挙する必要があったが、このanyAppleOSショートハンドで一括指定できる。@diagnose 属性により宣言単位での警告制御も可能になった。さらに、インポートしたモジュール間の命名衝突を解消するための:: 構文によるモジュールセレクターが導入されている。
パフォーマンスとライブラリの改善
パフォーマンス面では、FoundationのURL解析が最大4倍高速化されたことが発表された。これはURLの頻繁な処理を行うアプリケーションにとって大きな恩恵となる。
@inline(never) / @inline(always) でインライン展開を明示的に制御できる機能と、@specialized によるジェネリクスのプリコンパイル特殊化もサポートされ、パフォーマンスクリティカルなコードの最適化手段が充実した。
安全性の観点では、新しい参照型 Ref<T> と MutableRef<T> が追加され、これまでunsafeなポインターに頼らざるを得なかった場面でより安全な記述が可能になった。
defer 文の非同期対応も注目される改善のひとつだ。関数がreturnまたはthrowを行う際にも非同期クリーンアップ処理が保証されるようになり、リソース管理のコードがより直感的に書けるようになった。また、for-inループがSpanやInlineArrayなどのnoncopyable型に対応し、不要なコピーを排除したパフォーマンス重視のコードが書きやすくなっている。
テストと移行性
Swift Testingフレームワークに対してXCTestとのスムーズな段階的移行が可能になるような互換性改善が行われた。既存のXCTestベースのテストスイートをそのまま保ちながら、新しいSwift Testingに段階的に移行できる体制が整いつつある。
今回のWWDC26でのSwift 6.4リリースは、Appleプラットフォーム外へのSwiftの広がりを加速させつつ、言語の安全性・パフォーマンス・開発体験を同時に高める内容となっており、Swift採用を検討するプロジェクトにとっても重要なマイルストーンとなる。