概要
Moonshot AIは2026年6月12日、コーディングに特化したエージェント型AIモデル「Kimi K2.7-Code」をHugging Face上でオープンウェイト公開した。ライセンスはModified MITで、商用利用を含む幅広い用途への活用が可能。Kimi APIおよびKimiCodeプラットフォームからも利用できる。
同モデルは前世代の汎用モデル「K2.6」をベースとしたコーディング特化派生版であり、K2.6が汎用プロダクトラインとして継続提供される一方、K2.7-Codeはリポジトリ規模のリファクタリング、プルリクエストのコードレビュー、Model Context Protocol(MCP)を活用したツール呼び出しワークフローなど、長期的・自律的なソフトウェアエンジニアリングタスクをターゲットとして設計されている。
アーキテクチャと技術仕様
Kimi K2.7-Codeは総パラメータ数1兆のMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用しており、推論時にアクティブになるパラメータは1トークンあたり320億(32B)に抑えられる。エキスパート数は384個で、各トークンに対して8個が動的に選択される仕組みに加え、常時稼働する共有エキスパート1個が組み合わせられる。
アテンション機構にはMLA(Multi-head Latent Attention)を採用し、フィードフォワード層にはSwiGLUを使用。総計61層(うち1層がDense層)で構成されている。さらに、画像・動画の入力に対応するMoonViTビジョンエンコーダ(約4億パラメータ)を内蔵しており、テキストと視覚情報を組み合わせた長文脈分析にも対応する。コンテキストウィンドウは256K(262,144)トークン、ネイティブINT4量子化もサポートする。
なお、思考モード(Thinking Mode)は必須であり、APIからこれを無効化しようとするとエラーが返される仕様となっている。サンプリングパラメータはtemperature 1.0・top_p 0.95で固定されており、最大出力トークン数は32,768となっている。
ベンチマーク性能
Moonshot AIが公表した社内ベンチマークによると、K2.7-CodeはK2.6と比較して以下の改善を達成している。
| ベンチマーク | K2.6 | K2.7-Code | 改善率 |
|---|---|---|---|
| Kimi Code Bench v2 | 50.9 | 62.0 | +21.8% |
| Program Bench | 48.3 | 53.6 | +11.0% |
| MLS Bench Lite | 26.7 | 35.1 | +31.5% |
また、MCPの検証済みツール呼び出し精度を測るMCPMark Verifiedでは81.1%を記録し、Claude Opus 4.8の76.4%を上回っている。推論効率の面でもK2.6比で推論トークン使用量を約30%削減しており、エージェント型ワークフローにおける「過剰思考(overthinking)」を軽減することでコストと遅延の両面での改善を実現した。
ただし、これらのベンチマーク結果はいずれもMoonshot AI自身が計測したものであり、独立した第三者機関による検証は現時点ではまだ公開されていない点に注意が必要だ。
展開と利用方法
セルフホスティングにはvLLM・SGLang・KTransformersが対応しており、Hugging Faceのリポジトリ容量は約595 GBに達するため、実質的にサーバークラスのインフラが必要となる。
API経由での利用料金は、キャッシュヒット時の入力が100万トークンあたり$0.19、キャッシュミス時の入力が$0.95、出力が$4.00。Kimi Codeのメンバーシッププランは月額$19〜$199の範囲で提供されている。