概要

米国の輸出規制によってH200 GPUの中国向け出荷が事実上停止している中、Nvidiaが独自開発のArm系サーバーCPU「Vera」を早ければ2026年8月から中国顧客に提供する方針であることが報じられた。ロイター通信によると、すでに注文受付が開始されており、中国の大手クラウド事業者を中心に強い関心が寄せられている。CPUはGPUと比べて輸出規制の適用範囲外となることが多く、今回の動きは規制環境に適応しながら中国市場での事業基盤を再構築する戦略的な判断とみられる。

顧客・市場の動向

AlibabaとByteDanceは、Nvidiaが2026年3月にVera CPUを発表した時点からすでに協業を進めている。ある大手クラウド事業者は、Vera CPUを2基搭載するサーバーを300台以上発注する計画があるとされており、需要の大きさがうかがえる。

Nvidiaは今年のCPU事業収益として約200億ドルを見込んでおり、CEO Jensen Huang氏はVera CPUをビジネスの転換点として位置づけている。会計年度2027年(2026年内)には400万基のVera CPUを出荷する計画で、実現すれば「世界最大のCPUサプライヤー」となるポテンシャルを持つとしている。

技術・サプライチェーン

Vera CPUはArm系アーキテクチャを採用した88コアのサーバー向けプロセッサで、TSMCの3nmプロセスを用いて製造される。メモリはSK Hynixが供給する。

競合のIntelは中国顧客向けに6か月に及ぶ納期遅延を警告しており、AMDも需要が供給を上回り続ける状況を報告している。こうしたサーバーCPU市場の供給制約が続く中、Nvidiaの参入は中国市場に限らず、グローバルでの競争構図を大きく変える可能性がある。

背景と今後の見通し

AIワークロードの重心がモデルのトレーニングから推論(インファレンス)へと移行し、エージェント型AIの普及が加速する中、大規模なCPUリソースへの需要が急増している。この潮流はNvidiaにとって、GPU中心のポートフォリオを補完する形でCPU事業を拡大する好機となっている。

輸出規制という制約の中でも中国市場との関係を維持しようとするNvidiaの姿勢は、地政学的緊張が続く半導体産業において、各社がいかに柔軟な製品戦略を求められているかを示す事例といえる。今後、米国政府がVera CPUを規制対象に含めるかどうかが、同社の中国戦略の行方を左右する重要な焦点となる。