概要
ジェフ・ベゾスが共同創業し、自らCEOを務める物理AIスタートアップ「Prometheus」が2026年6月11日、シリーズBで120億ドルの資金調達を完了したと発表した。企業評価額は410億ドルに達し、2025年末に実施した62億ドルのラウンドからわずか数ヶ月で規模を大幅に拡大させた。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、ブラックロック、DST Global、Arch Venture Partnersなどの大手金融機関や投資ファンドが出資に参加している。
ベゾスが2021年にAmazonのCEOを退任して以来、自らCEOとして陣頭指揮を執るのはPrometheusが初めてとなる。ステルスモードからの公式な姿を現したタイミングでの巨額調達は、物理AI市場への大きな賭けとして業界から注目を集めている。
技術的なビジョン:「人工汎用エンジニア」とは
Prometheusが目指すのは、ジェットエンジンや医薬品化合物といった複雑な物理システムの設計・製造を自動化する「人工汎用エンジニア(Artificial General Engineer)」と呼ばれるAIシステムの構築だ。ソフトウェア開発の自動化に焦点を当てる多くのAI企業とは異なり、Prometheusは物理世界のデータを取り込み、製造プロセスそのものにAIを適用するアプローチを取っている。
ベゾスは「今日100人のエンジニアが10年かけて構築するものが、10人が1年で構築できるようになる」と述べており、エンジニアリング生産性の飛躍的な向上を見込んでいる。また、AIによる労働市場への影響についても言及し、「仕事が失われるのではなく、労働力不足が起きる」と予測。AI導入による生産性向上が全体の生活水準を引き上げると主張している。
会社体制と今後の展望
Prometheusは現在、サンフランシスコ・ロンドン・チューリッヒの3拠点に約150人の従業員を擁する。共同創業者にはGoogle生命科学部門「Verily」の元共同創業者であるVik Bajajが名を連ねており、医薬品分野での知見を持つ人材が経営陣に加わっている。計算インフラとしては自社GPUクラスターを運営するとともに、外部プロバイダーからも調達しており、今回の大規模な資金調達はこうした計算基盤の強化に充てられる見通しだ。
長期的にはバークシャー・ハサウェイ型のポートフォリオ企業構築を志向しており、製造業大手の買収や新規事業の立ち上げによって物理経済全体を再構成する壮大な計画を描いている。物理AIという新興分野でのリーダーシップを確立すべく、Prometheusはその野心的な一歩を踏み出した。