概要
Europolと11カ国の法執行機関が2026年6月10日、暗号資産マネーロンダリングサービス「AudiA6」の解体に成功した。2021年の稼働開始以来、ランサムウェアグループをはじめとする多数のサイバー犯罪組織のために総額3億3600万ユーロ(約4億ドル相当)超の不正資金を洗浄してきたとされる。ジョージアでウクライナ人とロシア人の管理者2名が逮捕されたほか、30台以上のサーバーと25ドメインが押収・閉鎖、80台超の車両と複数の不動産も没収された。暗号資産は69万2000ユーロが凍結、8万6000ユーロが差し押さえられている。
サービスの手口と技術的詳細
AudiA6は「産業規模」の資金洗浄プラットフォームとして機能していた。盗まれた他人の身分証明書を用いて複数の暗号資産取引所に数千件の不正口座(マネーミュール口座)を開設し、6,000件以上のKYC(本人確認)レコードをそれらに紐付けて追跡を困難にしていた。顧客からは洗浄額の3〜10%の手数料を徴収し、「クリーン」にした資金を約1時間以内に返却するという迅速なサービスを売りにしていた。ロシア語話者の仲介者が資金移動を支援し、複雑なトランザクションチェーンを構築することで資金の出所を隠蔽していた。
捜査の経緯とつながり
捜査の転機となったのは2025年9月のポーランド警察による捜査で、ウクライナ人容疑者1名を逮捕した際に押収したデバイスから、ネットワーク参加者を特定する重要な情報が得られた。AudiA6の管理者らはサイバー犯罪者向けダークウェブマーケットプレイス「Dark2Web」も運営しており、今回の作戦でこちらも同時に閉鎖された。また、2022年に発生したLastPassへの不正アクセスで盗まれた資金の一部もこのサービスを通じて洗浄されていたことが明らかになっている。米国ではこの2名に対し共謀罪とマネーロンダリング罪で起訴状が提出されており、有罪となれば各罪で最長20年の禁固刑が科される可能性がある。
今後の影響
Europolは今回の摘発について「数億ユーロ規模の不正収益を洗浄するために使われていた重要な金融パイプラインを遮断した」と評価している。本作戦にはEuropolとEurojustに加え、米国シークレットサービス(USSS)、IRS犯罪捜査部(IRS-CI)、ポーランド警察など11カ国の機関が参加した。ランサムウェア攻撃の収益化を支える洗浄インフラへの打撃は、サイバー犯罪エコシステム全体の弱体化につながるとみられており、国際的な協調捜査の有効性を改めて示す事例となった。