概要
ソフトバンクグループの孫正義会長兼CEOは、2026年6月1日に開催された「Choose France」サミットにおいて、フランスのオー=ド=フランス地域を中心に5GWのAIデータセンター設備を整備する最大750億ユーロ規模の投資計画を正式発表した。これはソフトバンクにとって欧州最大規模のAIインフラ投資とみられており、フランス政府との密接な連携のもとで推進される。
第一フェーズでは約450億ユーロ(約520億ドル)を投じ、2031年までに3.1GWの容量を確保する計画だ。建設地はダンケルク、ボスケル、ブーシャンの3箇所が予定されており、残りの容量については追加拡張として別途検討される。
原子力電力を選んだ戦略的意義
ソフトバンクがフランスを選定した最大の理由は、同国の優れた電力インフラにある。AIデータセンターの普及に伴い、新規設備の制約要因は半導体や資本ではなく「大量かつ安定した低炭素電力へのアクセス」へと移行しつつある。フランスは国内電力の大部分を原子力で賄っており、安定した低排出の電力を競争力のあるコストで提供できる数少ない国の一つだ。これはアメリカの一部地域を含む多くの国が現時点では実現できない条件であり、データセンター誘致の強力な差別化要因となっている。
主要パートナーとインフラ活用
本プロジェクトでは、フランスの国営原子力事業者であるEDFおよびシュナイダーエレクトリックとの協力体制が構築される。EDFはブーシャンの旧発電所跡地と既存の高圧送電網接続を提供し、建設期間の短縮と送電ロスの低減を実現する。シュナイダーエレクトリックはダンケルクの港湾エリアにおける産業クラスター形成に関与する。既存インフラの再活用により、通常よりも効率的な整備が可能となる見通しだ。
欧州のAIインフラ競争における意義
今回の発表は、AI向けデータセンターをめぐる米国や湾岸諸国との競争において、欧州が本格的な誘致戦略を取り始めたことを示す象徴的な動きとして注目されている。一方で、フランスのような原子力余剰を持つ国では既存の送電網を活用しつつAI需要を吸収できる可能性がある半面、同様の電力余力を持たない地域では一般家庭の電気料金上昇につながるリスクも指摘されており、エネルギー政策上の課題も浮き彫りになっている。