急落の発端——Broadcomの決算ミスと据え置かれたガイダンス
2026年6月3日、Broadcomが発表した2026年度第2四半期決算が半導体セクター全体を揺るがす引き金となった。同社のAIネットワーキング部門の売上高は41億ドルにとどまり、アナリスト予想の48億ドルを約14%下回った。さらにCEOのHock Tan氏が2027年の業績ガイダンスを引き上げず据え置いたことが、市場参加者が期待していた「連続的な上方修正」というシナリオを崩す形となった。
翌6月4〜5日にかけて、この結果が連鎖的な売りを誘発。Broadcom自身の株価は14%超下落し、時価総額で800〜3,000億ドル規模の損失を記録した。フィラデルフィア半導体指数(SOX)は6%超下落し、Nasdaq総合指数も4%の下げとなった。
市場への波及——1.3兆ドルの時価総額が消失
売りはBroadcomにとどまらず、半導体・AI関連銘柄全体に波及した。Intelは11.28%下落して99.17ドル、AMDは10.86%下落して466.38ドルとなった。NvidiaもAI需要の中核銘柄として6%超下落し、単独で約7,400億ドルの時価総額を失った。Micronも約7%下落して1,004ドルとなった。2日間の累計では、半導体・AI関連株全体から消失した時価総額は1.3兆ドルに達した。
背景には、セクター全体のバリュエーションが株価収益率50倍を超える水準まで積み上がり、「AIチップ需要の指数関数的な成長が永続する」という前提で価格付けがされていたという構造的な問題がある。加えて、予想を上回る雇用統計が利下げ観測を後退させたことや、原油価格が1バレル97ドルを超える水準で推移するといったマクロ経済面の逆風も売りを加速させた。
週明けの急反発——「過剰反応」との市場の総括
急落から3日後、主要銘柄は急速に値を戻した。Intelは8.5%上昇し、Micronも9%回復するなど、パニック売りに対する修正が起きた。この反発を後押しした論拠として、Broadcomの実態はむしろ強固という指摘がある。同社のAIチップ売上高は108億ドルで前年同期比143%増という極めて力強い成長を記録しており、「ガイダンスを引き上げなかったから売る」という判断は市場心理によるものだったとの分析が広がった。
AMDのMI300X アクセラレーターはハイパースケーラーへの採用が進んでいる実態に変化はなく、IntelもAlphabet(Google)から製造契約を獲得するなど、個別企業の基礎的な状況は売却を正当化するほど悪化していなかったとされる。
AI需要の長期トレンドは変わらず
アナリスト各社は、今回の急落がAI半導体需要の構造的な転換を示すものではないとの見方で一致している。グローバル半導体市場は1兆ドル規模へ向かって成長を続けており、AIチップがその50%超を占める見通しは変わっていない。主要テック企業の2026年のインフラ投資額は3,000億ドルを超える計画で推移しており、今回の株価急落は高水準のバリュエーションの調整局面と位置付けられている。今後の半導体株の行方は、各社の追加決算発表、FRBの金融政策の行方、そして企業によるAI導入の加速ペースによって左右される見込みだ。