概要

Googleは2026年5月19日、AI搭載コマンドラインツール「Gemini CLI」の無料・Pro・Ultraユーザー向けサポートを2026年6月18日で終了すると発表した。代替として提供されるのは、Google I/O 2026で発表されたクローズドソースの「Antigravity CLI」だ。ただしGemini Code AssistのStandardまたはEnterpriseライセンス契約企業は影響を受けず、従来通りのアクセスが維持される。

2025年夏にApache 2.0ライセンスでオープンソース公開されたGemini CLIは、わずか1年足らずで6,000件以上のプルリクエストをコミュニティから受け入れ、Dynatrace、Elastic、Figma、Shopify、Stripeなど大手企業との統合も進んでいた。このような状況での突然の方針転換に対し、貢献した開発者たちから激しい批判が巻き起こっている。

「おとり商法」批判の核心

開発者Andrea Albertiは「自分たちはエンタープライズ向けコードベースのために事実上無償で働いていたのか」と問い、別の貢献者はGoogleが「オープンソースで開発者を集め、貢献させた上でクローズドソースへ移行した」と直接的に批判した。

最も矛盾として指摘されるのは、企業ライセンスユーザーへの影響がゼロである点だ。Googleは「単一プラットフォームへの統合」という技術的必要性を移行理由として挙げるが、その技術的必要性が有料ユーザーには適用されないことから、コミュニティからは説明の整合性を欠くと見なされている。この構図——オープンソースでコミュニティの貢献を集め、成熟した段階でクローズドな企業向け製品に転換する——は「バイト・アンド・スイッチ(おとり商法)」と呼ばれ、OSS界隈での強い懸念を呼んでいる。

Antigravity CLIの課題と移行の問題点

後継となるAntigravity CLI自体にも問題がある。Googleは「初期段階では1対1の機能パリティを持たない」と自ら認めており、移行先が旧ツールと同等の機能を備えていない状態での廃止となる。使用量制限も厳格化され、従来の「1日1,000リクエスト」から「週単位」の制限に変わり、大規模なコード生成を行うユーザーが上限に達する事例が報告されている。さらに移行時点でnpmやHomebrewでの配布が未対応であり、既存ワークフローへの組み込みが困難な状況も批判を強めている。

OSSプロジェクトへの信頼と今後の課題

本件はApache 2.0ライセンスという形式上の「オープンソース」が、クラウドサービスや専有インフラへの依存によって実質的にクローズドソース化し得ることを示す事例として注目されている。Linux Foundation Model Openness Toolのような評価フレームワークがこの問題を可視化しつつあるが、大企業がオープンソースコミュニティとの関係をどう設計するかという問いは、業界全体に投げかけられた課題として残っている。