概要

中国の技術安全評価機構は2026年5月27日、政府調達向けIT製品の「安全可靠」(安全・信頼性)評価リストに初めてAIチップを追加した。認定を受けたのはファーウェイ(Huawei)、アリババ傘下のT-Head、Biren Technology、Hygon Information Technology、Iluvatar CoreX、MetaX、Moore Threadsの7社9製品で、今後3年間にわたって政府機関・国営企業の調達カタログに掲載される。

この制度は「信息技術応用創新」(Xinchuang)と呼ばれる長期国家戦略の一環で、政府システムからIntelやAMDのCPU、Oracleのデータベースといった西側製品を段階的に排除することを目的として進められてきた。今回のAIチップ追加により、同政策の対象がNvidiaなど外国製AIコンピューティング製品にまで拡大したことが明確になった。

認定チップの詳細

今回認定された主な製品は以下の通り。

  • ファーウェイ:Ascend 310、Ascend 910
  • アリババ T-Head:Zhenwu M530、M890
  • Biren Technology、Hygon Information Technology、Iluvatar CoreX、MetaX、Moore Threads:各1製品

昨年12月の最初の審査ではファーウェイとカムブリコン(Cambricon)の2社のみが対象だったが、わずか5カ月で7社9製品へと一気に拡大した。一方、カムブリコンとバイドゥ傘下のクンルンシン(Kunlunxin)は今回のリストに含まれておらず、業界内で注目を集めている。

市場への影響と課題

中国国産AIチップメーカーは急速にシェアを伸ばしており、2025年には国内出荷台数の41%を占めるに至っている。ファーウェイ単体でも同年に約81万2千個を出荷し、2026年のAI向けチップ売上は120億ドルに達すると予測されている。モルガン・スタンレーは中国全体のAI市場が2030年までに670億ドル規模に成長すると試算しており、国産チップへの認定は市場の更なる拡大を後押しする構えだ。

ただし、製造能力が主要な制約として残っている。認定企業はいずれもSMIC(中芯国際)の限られた製造枠を奪い合う状況にあり、同社の最先端プロセスはN+2(7nm相当)にとどまる。米国の対中輸出規制によって最先端のEUV露光装置の調達が阻まれているため、性能面でTSMC製造のNvidiaチップとの差は依然として大きい。

背景:米輸出規制が加速させる国産化

米国は数年にわたり対中半導体輸出規制を段階的に強化しており、中国の高度なGPUへのアクセスを事実上遮断してきた。この状況が国産チップへの転換政策の緊急性を高め、中国政府は調達認定制度の整備を急いでいる。今回の認定拡大は、外部環境の圧力を国内産業育成の原動力に転換しようとする中国の半導体戦略における重要な一歩として評価されている。