概要

Cloudflareは2026年5月、エッジ環境でのステートフルなマルチステッププロセスをオーケストレーションするためのプラットフォーム「Workflows」の大型アップデートとなる「Workflows V2」を発表した。今回のアップデートの核心は、決定論的かつ再実行可能な(replayable)実行アーキテクチャの採用であり、AIエージェント、データパイプライン、大規模バックグラウンド処理といった事例への対応強化が図られている。

スケーラビリティの大幅拡張

Workflows V2では、スケーラビリティに関わる制限値が軒並み引き上げられた。同時実行可能なワークフローインスタンス数は従来の4,500から5万インスタンスへと約11倍に拡大し、1アカウントあたりの新規実行レートも毎秒100件から毎秒300件に増加した。さらに、キューへのキューイング容量は200万インスタンスへと倍増している。これらの改善により、イベント駆動型の大規模システムでも Workflows を主要なオーケストレーション基盤として採用しやすくなった。

技術アーキテクチャと決定論的実行

V2の技術的な革新として、各ステップが独立して分離・再実行可能なステップベースの決定論的実行モデルが挙げられる。「各ステップはリプレイセーフになるよう設計されている」という設計方針のもと、ステップ間での耐久性のある状態管理、自動リトライ・タイムアウト処理が組み込まれている。また、Cloudflare Workers、Queues、Durable Objectsとのネイティブ統合も維持されており、既存のCloudflareエコシステムとシームレスに連携できる。

独立したステップを並行実行するファンアウト・ファンイン(fan-out/fan-in)パターンにも対応しており、複雑な並列処理フローを簡潔に記述できる。さらに、ステップレベルのトレーシングと実行履歴の記録によるオブザーバビリティの強化も図られ、本番環境でのデバッグが容易になった。

移行と今後の展望

V1からV2への移行には、明示的なステップベースのモデルへの書き換えとAPIのアップデートが必要となる。基本的なコンセプトは踏襲されているものの、新しい実行セマンティクスに沿って独立した再実行可能なステップへの再構築が求められる。Cloudflareは「V2によって実行フローの把握と障害時の復旧が容易になり、処理の重複を排除できる」としており、信頼性・スケール・可観測性の三拍子を兼ね備えたワークフローエンジンとして、エッジコンピューティングにおける複雑なオーケストレーション需要に応えることを目指している。