概要

米商務省は、アリババ、テンセント、バイトダンス、JD.comなど中国の大手テクノロジー企業10社に対し、NvidiaのAIチップ「H200」の購入ライセンスを承認した。流通大手のレノボやフォックスコンも対象に含まれており、承認を受けた各社はそれぞれ最大7万5,000チップまで購入可能とされている。この承認はNvidiaのCEOジェンスン・フアンがトランプ大統領の北京訪問に同行し、取引の突破口を開こうとするタイミングに合わせて行われた。

しかし米政府の承認にもかかわらず、実際のチップ納入は一件も実現していない。中国側が北京の指示を受けて購入を見合わせており、両国の半導体をめぐる地政学的対立が取引の行方を左右している状況だ。

中国側が購入を踏み切れない背景

中国が購入を保留している最大の理由は、米国製半導体への過度な依存が国内半導体産業の発展を阻害するという懸念にある。中国政府はファーウェイなどの国内企業を通じた半導体の自給自足を戦略的優先課題と位置づけており、半導体の独立性を国家安全保障上の問題と捉えている。

米国側の輸出規制も障壁となっている。購入者は用途が軍事目的でないことを証明し、セキュリティプロトコルを遵守する必要があるほか、チップが中国へ届く前に一度米国領土を経由させるという異例の物流上の取り決めも報じられており、手続きを複雑にしている。

半導体市場と今後の見通し

H200はNvidiaの主力AIチップの中でも2番目の性能を誇るモデルで、大規模なモデルトレーニングやデータセンター運用向けに設計されている。輸出規制が強化される以前、NvidiaはAI向け高性能チップにおいて中国市場で約95%のシェアを誇っていた。

今回の事態は、AI覇権をめぐる米中の戦略的競争の深刻さを改めて浮き彫りにした。半導体市場の断絶が続けば、グローバルな技術エコシステムが米国主導と中国主導の圏に分断されるリスクがある。その一方で、中国が国産代替品への投資をさらに加速させる可能性もあり、Nvidiaをはじめとする米国半導体企業にとっても長期的な市場機会の縮小につながりかねない。