概要

スイスの製薬・診断大手ロシュは2026年5月7日、米国のAI病理診断企業PathAIを買収する正式合意(確定的合併契約)を締結したと発表した。取引額は前払い7億5000万ドルに加え、マイルストーン達成時に最大3億ドルの追加支払いが行われる構造で、総額は最大10億5000万ドル(約1530億円)に達する。PathAIはロシュの診断部門に統合される予定で、取引完了は2026年下半期を見込んでいる(規制当局および独占禁止法上の承認が条件)。

PathAIの事業とAISightプラットフォーム

PathAIは病理診断ラボおよびバイオファーマ業界向けにAI技術を提供する米国企業だ。同社の主力製品「AISight Image Management System(IMS)」は、組織スライドを高解像度デジタル画像に変換し、AIを活用した診断支援ワークフローを病理検査室内にシームレスに組み込む。臨床試験支援や橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)におけるAI解析でも強みを持ち、バイオマーカーの発見から薬物標的の特定まで幅広く活用されている。

戦略的意義と今後の展望

ロシュにとって今回の買収は、既存のコンパニオン診断(CDx)事業とデジタル病理学を組み合わせ、精密医療における診断ポートフォリオを大幅に強化する戦略的一手となる。ロシュ診断部門CEOのマット・ソーズ氏は「がんの精密診断の改善と、医師へのより良いインサイト提供」を実現すると強調。PathAI CEOのアンディ・ベック氏は「ロシュとの統合はPathAIの新時代の幕開けであり、AIを活用した病理学で患者アウトカムを改善するというミッション実現が加速される」とコメントした。病理×AIの融合による新たな診断ツールの開発が期待されており、がん治療における個別化医療の進展に寄与するとみられる。