概要

北京を拠点とするAIスタートアップのMoonshot AIが、中国大手フードデリバリー企業Meituan傘下のベンチャー部門「Long-Z Investments」が主導する新ラウンドで、評価額200億ドル超にて20億ドルの資金調達を実施した。清華大学発のファンドTsinghua Capital、中国移動(China Mobile)、CPE Yuanfengも本ラウンドに参加している。直近6か月間で累計調達額は39億ドルに達しており、評価額も2025年末の43億ドルから2026年初頭に100億ドル、そして今回の200億ドル超へと急速に拡大した。オープンウェイトLLM「Kimiシリーズ」への需要急増が、この著しいバリュエーション上昇を後押ししている。

製品・技術の詳細

Moonshot AIの中核製品はオープンウェイト大規模言語モデル「Kimiシリーズ」だ。最新モデル「Kimi K2.6」は約1兆パラメータを持ち、384の専門エキスパートで構成されるMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用する。KVキャッシュ圧縮技術によってメモリ消費を抑制しており、LLMディストリビューションプラットフォーム「OpenRouter」では利用数第2位のモデルにランクインしている。コーディング分野で注目を集めた前モデル「Kimi K2.5」に続く成果だ。また、マルチモーダルモデル「Kimi-VL」(視覚・言語処理)、ハードウェア最適化研究ツール「Muon」、最大100万トークンの長文コンテキストを効率的に処理する「Kimi Delta Attention」なども提供している。収益面では、5段階のサブスクリプションプランを持つ有料チャットボット「Kimi」とプログラミング支援ツール「Kimi Code」を展開しており、2026年4月時点の年間経常収益(ARR)は2億ドルを突破している。

市場背景と競争環境

今回の大型調達は、推論コストの低さを理由にオープンソース・オープンウェイトモデルへの需要が世界的に高まっていることを背景としている。OpenAI、Google、Anthropicといった欧米大手に対抗する中国AIスタートアップへの投資家の関心の高さも示しており、アジアのAI市場における競争激化を象徴する案件といえる。中国国内ではDeepSeek、Zhipu AI、MiniMax、ByteDance(Doubao)、Alibaba(Qwen)などと競合する。なお、DeepSeekは評価額450億ドルでの外部資金調達を初めて検討しているとも報じられており、中国AI企業のバリュエーション競争が激化している。Moonshot AIの創業者Yang Zhilin氏はMeta AIとGoogle Brainでのキャリアを経て同社を設立した。