概要

Broadcomは2026年5月5日、VMware Cloud Foundation(VCF)9.1を正式発表した。本バージョンは、推論やエージェンティックAIアプリケーションを含む本番AIワークロード向けに設計されており、AMD・Intel・NVIDIAのGPU/CPUが混在する環境での統合的なプライベートクラウド基盤を提供する。コスト削減とパフォーマンス向上を同時に実現する複数の機能強化が盛り込まれており、企業がAIインフラをパブリッククラウドだけでなくプライベートクラウドで運用する選択肢を広げる狙いがある。

Broadcomの「Private Cloud Outlook 2026」調査によれば、56%の組織がすでに本番推論をプライベートクラウドで実行中または計画中であり、62%のIT責任者がAIインフラのコスト増大を課題として挙げている。VCF 9.1はこうした市場ニーズに直接応えるリリースと位置づけられている。

主要な改善点とコスト削減効果

VCF 9.1の最大の特徴は、インテリジェントメモリティアリング技術の導入によるサーバーコストの最大40%削減だ。AIと非AIワークロードが混在するクラスター環境において、メモリ使用を自動的に最適化することで、ハードウェア調達コストを大幅に圧縮できる。ストレージ面ではAIデータパイプライン向けのTCOを最大39%削減し、Kubernetes運用コストも最大46%削減を実現している。

パフォーマンス面では、Kubernetesクラスターのアップグレード速度が4倍に向上し、デプロイメントは70%高速化、アップグレード時間は75%短縮された。クラスタースケールは2.6倍に拡大し、フリート容量は2倍に増加するなど、大規模環境での運用効率が著しく改善されている。自動フリート運用は最大5,000ホストまでサポートし、エンタープライズ規模の展開を見据えた設計となっている。

セキュリティとネットワーク機能の強化

セキュリティ面では、ゼロトラストに基づく横展開検査で9Tbpsの脅威検査性能を達成し、アプリケーション識別能力が5倍に向上した。マルチテナント対応も強化されており、複数チームや部門がクラウドインフラを共有する際のセキュリティ分離をより確実に担保できるようになった。NVIDIA ConnectX-7 NICおよびBlueField-3 DPUとの統合、仮想ロードバランシング機能の追加も本バージョンの目玉となっている。

エコシステムの拡充においても、AMD・Intel・NVIDIA・Arista Networks・CrowdStrikeといった主要パートナーとの連携が発表されており、マルチベンダー環境での導入障壁を引き下げることが期待される。

今後の展望

今回のリリースは、企業が本番AIを大規模展開するにあたってプライベートクラウドをどう活用するかという問いに対するBroadcomの回答といえる。コスト・セキュリティ・運用効率のいずれの側面でも定量的な改善指標が示されており、パブリッククラウドのみへの依存を見直す企業にとって、VCF 9.1は有力な選択肢となりそうだ。AIインフラコストへの懸念が高まる中、エンタープライズ市場でのVCF採用がさらに加速するかが注目される。