概要

JetBrainsは2026年4月22日、Kotlin 2.4.0のEarly Access Preview第2弾(Beta2)をリリースした。安定版のリリースは2026年6〜7月を予定しており、今回のBeta2では言語機能・標準ライブラリ・各プラットフォーム(JVM、Native、Wasm、JS)にわたる広範な改善が盛り込まれている。最大のポイントは、Experimentalステータスだった複数の機能がStableに昇格したことと、Kotlin/Wasmのインクリメンタルコンパイルがデフォルト有効化されたことだ。

言語機能の安定化と新機能

今回のリリースで最も注目されるのは、コンテキストパラメータ(Context Parameters) のStable昇格だ(呼び出し可能参照を除く)。コンテキストパラメータは関数シグネチャに暗黙的なコンテキストを宣言できる機能で、依存性の受け渡しを明示的に書くことなく表現できる。合わせて、明示的バッキングフィールド(Explicit Backing Fields)@all メタターゲット for properties もStableとなった。

新たにExperimentalで追加された機能として、明示的コンテキスト引数 が挙げられる。同名の関数が複数のコンテキスト型に対してオーバーロードされている場合に曖昧さを解消するための構文で、sendNotification(emailSender = defaultEmailSender) のように名前付きで指定できる。また、コレクションリテラル-Xcollection-literals フラグ)も新たに導入され、val fruit = ["apple", "banana", "cherry"] のような簡潔な構文でリストを生成できるようになった。さらに、コンパイル時定数の改善-XXLanguage:+IntrinsicConstEvaluation)として、文字列関数(.lowercase().uppercase().trim())や符号なし型演算、enumの .name プロパティがコンパイル時に評価されるようになった。

標準ライブラリの変更

kotlin.uuid.Uuid APIがStableに昇格した(V4/V7生成関数を除く)。また、コレクションのソート順序を検証する新しい拡張関数群(isSorted()isSortedBy()isSortedDescending()isSortedWith() など)が追加された。JVM向けには、符号なし整数(ULongUInt)から BigInteger への変換関数も追加されている。

プラットフォーム別の改善

Kotlin/JVM では Java 26 のバイトコード生成に対応し、Kotlinメタデータに保存されたアノテーションへのアクセスがデフォルトで有効化された。

Kotlin/Native では2つの大きな進展がある。GradleのビルドスクリプトからSwift Package Manager(SwiftPM)の依存関係を宣言できる Swiftパッケージインポート がExperimentalで追加された。また、ガベージコレクタのデフォルトがCMS(Concurrent Mark Sweep)に変更 され、GCによる一時停止時間が短縮されてCompose Multiplatformなどのアプリでのレスポンスが向上する。さらに、Swift Exportで kotlinx.coroutines.Flow をSwiftの AsyncSequence としてエクスポート できるようになった。

Kotlin/Wasm では、インクリメンタルコンパイルがStableに昇格しデフォルト有効化された。大規模プロジェクトではビルド時間の大幅な短縮が見込まれる。また、WebAssembly Component Model への対応により、言語非依存なコンポーネント構成やFaaS(サーバーレス)アプリケーションでの活用が可能になった。

Kotlin/JS では、インライン value class をTypeScriptにエクスポートできるようになったほか、js() 関数内でアロー関数・ESクラス・テンプレート文字列・スプレッド演算子など主要なES2015構文が使用可能になった。

今後の展望

Kotlin 2.4.0の安定版は2026年6〜7月のリリースを予定している。今回Beta2でStableに昇格したコンテキストパラメータは、Kotlinのコードスタイルに大きな影響を与える機能であり、フレームワークやライブラリ側での対応が今後進むと見られる。Kotlin/Wasmの継続的な強化とKotlin Multiplatformのエコシステム拡充も着実に進んでおり、クロスプラットフォーム開発の選択肢としてのKotlinの地位がさらに高まりそうだ。