概要
サムスン電子は2026年5月6日、時価総額が1兆ドルの大台を突破した。アジア企業としてTSMCに次ぐ2社目の達成であり、同日の株価は10%以上急騰した。AIブームによる半導体需要の爆発的な拡大が、この歴史的な節目を強く後押しした。同社の直近の決算では、前年同期比で利益が8倍以上に達したと報告されており、特にAIデータセンター向け高帯域幅メモリ(HBM)の販売好調が業績を大きく押し上げた。
HBMチップが業績急回復の核心
サムスン復活の鍵を握るのは、AI推論・学習に不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)チップである。大規模言語モデルの学習や推論には膨大な帯域幅を持つメモリが必要であり、サムスン、SKハイニックス、マイクロンの大手3社はいずれも、コンシューマー向け製品からHBM生産へと資源配分を急速にシフトさせている。それでもAIデータセンターの需要増加に供給が追いつかず、業界全体でチップ不足が続いている状況だ。HBMは通常のDRAMと比較して利益率が大幅に高く、この需要急増がサムスンの収益構造を根本から変えた。
Appleとの国内製造協力の可能性
業績回復に加え、新たな成長機会の報道も株価を押し上げる要因となった。AppleがサムスンおよびIntelと協力し、米国内でのチップ製造を模索しているとの情報が浮上している。これはTSMCへの一極集中リスクを分散させる狙いがあると見られており、実現すれば米国の半導体製造基盤の強化にも貢献する。地政学的リスクを背景に半導体サプライチェーンの多様化が加速する中、サムスンの立場は一層重要性を増している。
課題と今後の展望
好調な業績の裏で、いくつかの課題も浮き彫りになっている。従業員組合は18日間のストライキを予告しており、利益の分配拡充を求めている。また、スマートフォンやテレビなどのコンシューマー事業部門は、HBMチップの価格高騰によるコスト増圧力を受けており、半導体部門の好調と対照的な状況だ。AIインフラへの投資が世界規模で加速し続ける限り、HBMへの旺盛な需要は当面続くと予想されるが、供給過多に転じた際の価格急落リスクも市場は注視している。