概要
オランダ・デルフト拠点の量子プロセッサメーカーQuantWareは2026年5月、シリーズBラウンドで1億7800万ドル(約260億円、€1億5200万)の資金調達を完了したと発表した。同社はこのラウンドを「量子プロセッサ企業による過去最大規模のプライベートラウンド」と位置付けており、量子コンピューティング産業における重要な節目となっている。新規投資家にはIntel Capital、In-Q-Tel(IQT)、ETF Partnersが加わり、既存投資家のFORWARD.oneおよびInvest-NL Deep Tech Fundも引き続き参加した。
調達資金の用途:2つの主要プロジェクト
調達した資金は主に2つの開発プロジェクトに充てられる。
1つ目はVIO-40Kアーキテクチャの開発だ。これは最大1万量子ビット(キュービット)を処理できる量子プロセッサ設計で、現在の最先端システムの約100倍のスケールに相当する。QuantWareのVIO™プラットフォームはオープンアーキテクチャとして機能しており、他の量子コンピューティング企業が同社のインフラ上で独自のチップレット設計を開発・スケールアップできる仕組みを提供する。
2つ目は製造施設KiloFabの建設だ。「世界最大の専用量子オープンアーキテクチャファブ」と位置付けられるこの施設はデルフトに設置され、現在の生産能力を20倍に拡大することが期待されている。量子プロセッサの産業規模製造を実現することで、同社は量子コンピューティングのハードウェア供給ボトルネックを解消しようとしている。
企業背景と市場における位置づけ
QuantWareは2021年にオランダ・デルフト工科大学の量子研究機関QuTechからのスピンアウトとして設立された。設立から5年足らずで20カ国以上の50社超の顧客にプロセッサを出荷しており、出荷量ベースで量子プロセッサ業界のトップ商用サプライヤーとなっている。
今回の大型調達は、量子コンピューティングが研究段階から産業実用化へと移行する流れを反映している。特にIntel CapitalとIn-Q-Tel(米国政府系ベンチャー)という戦略的投資家の参加は、この技術が国家安全保障・先端産業の両面で注目を集めていることを示している。KiloFabの稼働によって量子ハードウェアの供給能力が大幅に向上すれば、量子コンピューティングの普及加速につながる可能性がある。