概要
米国防総省は2026年5月、Amazon Web Services、Google、Microsoft、NVIDIA、OpenAI、SpaceX、Reflection、Oracleの8社に対し、機密ネットワーク(Impact Level 6およびIL7)へのAI展開を承認したと発表した。ペンタゴンのCTO、エミル・マイケル氏は「単一パートナーへの依存は無責任だ」と述べ、複数ベンダーを確保することでシステムの堅牢性と継続性を高める方針を強調した。配備の目的として、データ統合の合理化、状況認識の向上、複雑な作戦環境での意思決定支援が挙げられている。なお、具体的な配備時期や支払い条件は非公開となっており、一部企業はすでに契約済みで残りは詳細協議中とのことだ。
AnthropicとGoogleの対照的な立場
注目すべきは、AI企業のAnthropicが展開条件を拒否したことだ。これを受けてペンタゴンはAnthropicを「国家安全保障サプライチェーンリスク」に指定した。同ラベルはこれまで外国の敵対勢力に対して使われてきたもので、民間企業への適用は異例であり、事実上の圧力として機能している。NSAはAnthropicの非公開モデル「Mythos」を独自に使用しているとの報道もある。一方、Googleは2018年に従業員の抗議を受けてプロジェクト・メイブン(Project Maven)から撤退した経緯があるが、今回はGeminiを機密ネットワークへ展開することに合意した。Geminiはこれまで非機密システムでの利用に限定されていた。ペンタゴンではAIがドローン映像分析、情報分析、ターゲティング支援などの用途に活用されてきたが、Geminiの具体的な用途は現時点で明らかになっていない。
安全性への懸念と業界への構造的影響
安全性の観点では、協定には「適切な人間の監視なしに自律型兵器(ターゲット選択を含む)を可能にしてはならない」という条件が盛り込まれている。しかし、セキュリティ専門家のジェイコブ・クレル氏(Suzu Labs)は「これは公関向けの文言に過ぎず、実際の運用上の制御ではない」と批判する。機密ネットワーク上でペンタゴンが安全フィルターの修正を要求できる仕組みであり、Googleを含む提供企業が実際の使われ方を把握できない点が懸念されている。Xcapeのジョン・カーベリー氏は今回の動きを「Googleが完成品のベンダーから軍の生インフラのプロバイダーへ移行するという根本的なシフト」と評した。AI業界全体としても、防衛契約への参加か、連邦調達機会からの完全排除かという二択を迫られる構造が浮き彫りになっている。