概要
モジュラーPCメーカーのFramework Computerは2026年4月21日(現地時間午前10時30分 PT)、サンフランシスコで「[Next Gen] Event」を開催し、新世代のモジュラーハードウェアを発表した。イベントはYouTubeでグローバルにライブ配信され、同社にとって最大規模の製品発表の一つとなった。
発表で特に注目されたのはLinuxへの積極的なコミットメントだ。告知ページやティーザー動画ではUbuntu・Fedora・Arch・CachyOS・Bazziteといった主要Linuxディストリビューションのロゴが並べて掲示された。メインストリームのPCメーカーがLinuxディストリビューションのロゴを製品発表の中心に据えるのは異例であり、Linuxコミュニティへ向けた明確なメッセージとなっている。同社CEOによれば、Framework製ラップトップの購入者のうちおよそ半数がLinuxを使用しており、Linuxファースト設計は「afterthought(後付け)」ではなく主要ユースケースとして位置づけられている。
期待されるハードウェアと技術的背景
新製品の具体的なスペックはイベント直前まで公開されなかったが、業界の観測筋はいくつかのアップグレードを予測していた。最有力候補とされたのはAMD Ryzen AI 400シリーズのメインボードで、AMD自身がCES 2026でローカルAIタスク向けにNPU性能を大幅に向上させたと発表しているチップセットだ。また、Intel Panther LakeやNVIDIA GB10を搭載したFramework Desktopの新バリアントも候補として挙げられていた。
現行ラインナップは、AMD AI Max 300搭載の「Framework Desktop」、Intel 13th Gen搭載の「Framework Laptop 12」、Intel Ultra 3搭載の「Framework Laptop 13」、AMD Ryzen AI 300シリーズ搭載の「Framework Laptop 16」で構成されており、次世代ではこれらのモジュラー交換可能なメインボード設計が継続・拡充される見通しだ。同社はイベント前に一部顧客に対して「まだ注文を急がないよう」と伝えており、それ自体が新製品が大きなアップグレードであることを示唆していた。
デジタル主権という思想的背景
Framework Computerは今回の発表を単なるスペックアップとして語らず、「コンピューティングの自己所有」という思想的文脈で位置づけた。CEOは「この世界にコンピュータを自分のものとして持ちたいと思う人がいる限り、私たちはそれを可能にするハードウェアを作り続ける」と発言。さらに同社は「OSを選択すること、ハードウェアを改造すること、あるいはデータと計算をローカルに保つことを含め、本当の意味で自分のものとして使えるコンピュータ」を目指すと明言している。
PC Gamerの取材に対しFrameworkは「個人向けコンピューティングが私たちの知る形で消滅するというシナリオは十分にあり得る」とも述べており、Big Techによるクラウド化・サブスクリプション化の波に対するカウンターカルチャーとしての立ち位置を鮮明にしている。今回のイベントでは新興市場として、ニュージーランド・ノルウェー・スイス・シンガポールへの販路拡大も発表された。
今後の展望
Framework Computerは今回の発表を通じ、修理可能性・拡張性・Linuxとの親和性という三位一体の価値訴求を一層強化した。メモリ価格高騰やサプライチェーン制約という業界全体の逆風のなかでも、同社はモジュラー設計によるハードウェアの長寿命化と、Linuxコミュニティとの連携強化を通じて、持続可能なPCエコシステムの構築を目指している。次世代ハードウェアの詳細なスペック・価格・発売時期は、イベントでの正式発表を経て明らかになる見込みだ。