概要
Amazonが出資する小型モジュール原子炉(SMR)開発企業X-energyが、最大約8億1430万ドルの新規株式公開(IPO)を申請し、投資家向けロードショーを開始した。株価レンジは1株あたり16〜19ドルで、発行予定株数は約4290万株。上場先はNasdaq(ティッカーシンボル:XE)で、想定時価総額は最大75億1000万ドルに達する見込みだ。同社のこれまでの累計調達額は約18億ドルで、AmazonがシリーズC-1ラウンドで5億ドルをリードしたほか、2025年11月にはJane Street主導で7億ドルのシリーズDラウンドを完了し、約1年間で14億ドルを調達している。
技術的な詳細
X-energyが開発しているのは高温ガス冷却炉(HTGR)で、独自の「TRISO燃料」を採用している。TRISO燃料はウランをセラミックと炭素の複数層で覆った球状のペレットで、ヘリウムガスで冷却する設計が特徴だ。同社は「TRISOペレットは溶融せず、極限の高温でも構造的完全性を保つ」と説明しており、従来の核燃料と比べて安全性に優れるとしている。また、量産技術が「Nth-of-a-kind(N番目の製品)」段階に成熟した際には30%のコスト削減が見込まれるとしている。なお、現時点でSMRスタートアップの中で商業運転中の発電所を持つ企業はまだ存在しない。
AIデータセンター需要と原子力への注目
X-energyのIPO申請は、AI向けデータセンターの急増に伴う電力需要の高まりを背景に、テック大手が原子力エネルギーへの投資を加速している流れと軌を一にする。Amazonは2039年までにX-energyから最大5ギガワットの原子力電力を購入する契約をすでに締結しており、データセンターの安定的な電源確保に向けた長期的なコミットメントを示している。Trump政権が2026年7月4日を複数企業の「臨界達成」目標として設定するなど、政策面でも原子力の早期実用化への後押しがある。
過去の経緯と法的リスク
X-energyは2023年10月にSPAC(特別目的買収会社)を通じた逆上場を一度キャンセルしており、今回は通常のIPOルートへ切り替えての上場申請となる。一方でリスク要因も存在する。同社はUltra Safe Nuclear Corporation(2024年に破産申請済み)に対して燃料製造特許の侵害を主張しているほか、Standard Nuclearとの間でも燃料製造特許をめぐる係争が継続している。IPO後の成長戦略とともに、これらの法的問題の行方も投資家から注目されている。