概要
Adobeの年次カスタマーエクスペリエンスカンファレンス「Adobe Summit 2026」が4月19日、ラスベガスのVenetian Convention Centerで開幕した(会期は22日まで)。今年のテーマは「エージェント型AIが顧客体験のオーケストレーションを大規模に実現する方法」であり、AIが単なる実験段階を脱し、企業全体に展開可能な実用的ソリューションとして成熟してきたことが示された。登壇者にはAdobe会長兼CEOのShantanu Narayen氏のほか、NVIDIA CEO Jensen Huang氏、P&G社長兼CEOのShailesh Jejurikar氏らが名を連ねる。200以上のセッションと13の専門トラックが用意され、オンライン参加も可能だ。
主要発表:AEPエージェントオーケストレーターとGenStudio
今回の目玉発表の一つが、Adobe Experience Platform(AEP)Agent Orchestratorだ。マーケティングキャンペーンの最適化や顧客体験の管理に特化した6つのAIエージェントを搭載し、常時人間の介入なしに顧客ジャーニーを自律的に管理できる。AdobeのVP Loni Stark氏は「孤立したAI実験から、測定可能な企業規模のインパクトをもたらすエージェント型システムへの構築」を目指すと述べており、エージェント型AIの実運用化へ向けた強い姿勢を示した。
あわせて、コンテンツサプライチェーンの課題を解消するAdobe GenStudioの導入も発表された。GenStudioはブランドのコンテンツワークフローを自動化し、製品ページやキャンペーン、パーソナライゼーション層にわたって安全かつ迅速にコンテンツ制作を拡大できるツールだ。AIを活用した検索エンジンの台頭でブランドの製品発見パターンが変化しつつあるなか、AI検索上でのブランド可視性を守るための戦略についてもセッションが設けられる。
Microsoft 365連携とパートナーエコシステムの拡充
AdobeのExpress Agent for Microsoft 365も注目を集める発表だ。WordやPowerPointなどMicrosoft 365アプリケーション内でグラフィックやデザインコンテンツを直接生成できるエージェントで、クリエイティブツールと生産性ソフトウェアの橋渡し役を担う。これにより、デザイン専任者がいない部門でも高品質なビジュアルコンテンツを即時に生成できる環境が整う。
パートナー企業側でも動きが活発で、TELUS DigitalはリアルタイムAIオーケストレーションを活用したコンタクトセンターの顧客保持・ロイヤルティ向上ソリューションを披露。Kalturaはエージェント型アバターとコンテンツインテリジェンスを組み合わせ、Adobe Experience Manager(AEM)内で静的なマーケティングページをリアルタイム対話型体験に転換するプラットフォームを展示するなど、エコシステム全体でエージェント型AIの実装が加速している。
リーダーシップ交代と今後の展望
戦略面では、18年にわたってAdobeを率いてきたCEO Shantanu Narayen氏の退任という重要な局面にある。後継者探しには数か月を要する見込みで、次期CEOは「エージェント型AIの次の波に向けてAdobeの製品と戦略を再構築する」ことを最優先課題とすると見られている。MicrosoftやOpenAI、Googleが急速にAI機能を強化するなか、Adobeが創造性とマーケティングの分野でどのように差別化を図るかが問われている。Summit 2026は、その答えとなる技術ビジョンを示す場として大きな注目を集めている。