概要

富士通は2026年4月11日、AI推論処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)の製造を国産半導体ファウンドリのラピダスに委託すると発表した。開発するチップは回路線幅が1.4ナノメートルという最先端の微細プロセスを採用し、サーバー向けAI推論処理において既存GPUと比較して大幅な消費電力削減を実現する設計となっている。総開発費は約580億円で、そのうち約3分の2をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金で賄う予定だ。

本プロジェクトは、先端半導体の設計から製造まで全工程を国内企業だけで完結させる「純国産AI半導体プロジェクト」として位置づけられている。赤沢経産相は「国益に関わる不可欠な国家プロジェクト」と表現しており、米中が支配するAI半導体市場において日本が「第3極」を目指す取り組みの核心となっている。

政府支援と経済安全保障

経済産業省はラピダスへの追加補助金として6,315億円を承認した。内訳は前工程(ウェハ製造)に5,141億円、後工程(パッケージング等)に1,174億円で、これによりラピダスへの国からの累計補助金は2兆3,000億円超に達する。

背景にあるのは経済安全保障上の危機感だ。これまで日本は先端半導体の設計・製造を海外の技術や製造拠点に大きく依存してきた。富士通とラピダスの連携は、この構造的課題を解消し、AI時代に不可欠な半導体サプライチェーンを国内で完結させることを目的としている。

今後のロードマップ

ラピダスは2027年度から2ナノメートル世代チップの量産を開始する計画を持ち、その後1.4ナノメートル世代へ順次移行する予定だ。富士通の1.4nm NPUはこのロードマップの中核的な案件として位置づけられ、ラピダスの量産技術確立に向けた重要な商業受注となる。AI推論チップ市場での国際競争力獲得に向け、日本の官民連携による半導体産業再建が本格的に動き出した形だ。