概要

調査会社Gartnerは2026年2月に発表したレポートで、世界のソブリンクラウドIaaS(Infrastructure as a Service)支出が2026年に総額804億ドルに達すると予測した。これは2025年比で35.6%の増加に相当し、市場の急拡大を示している。さらに2027年には1,100億ドルへの成長が見込まれており、ソブリンクラウドはクラウド市場のなかでも特に高い成長が続くセグメントとなっている。成長の主な要因として、米中間の地政学的緊張の高まり、各国のデータ主権規制の強化、そして「重要なクラウドサービスを政治的理由で遮断されるリスク」への懸念が挙げられている。

地域別の成長見通し

支出規模では中国が最大の市場として470億ドルを占め、北米が160億ドルで2位につける見込みだが、両地域の成長率は20%台にとどまる。一方で伸び率では中東・アフリカが89%増、成熟アジア太平洋地域が87%増、欧州が83%増と突出して高く、特に欧州の動向が注目される。欧州のソブリンクラウドIaaS支出は2025年の69億ドルから2026年には126億ドルへ拡大し、さらに2027年には231億ドルに達する見通し。2027年には欧州が北米を上回り、世界第2の市場に浮上すると予測されている。欧州では多くの企業が年間売上の一定割合を地域内のITプロバイダーに支出する取り組みを進めており、米国系ハイパースケーラーへの依存度を低下させる動きが加速している。

支出の内訳と市場構造

Gartnerの分析によれば、ソブリンクラウドIaaS支出の80%は既存のクラウドワークロードの移行ではなく、新規デジタルソリューションの開発やオンプレミスからの移行待ちレガシーワークロードに充てられる。残りの20%は既存のハイパースケーラーから地域・国内クラウドプロバイダーへのワークロード移管(ジオパトリエーション)に対応するものだ。この傾向は2029年にかけてさらに強まると予測され、グローバル企業の既存ワークロードの20%がハイパースケーラーから地域プロバイダーへ移行するとされる。

需要を牽引する主体は政府・公共機関であり、次いで金融・医療などの規制業種、エネルギー・電力・通信といった重要インフラ分野が続く。

ハイパースケーラーへの影響と示唆

Gartnerのシニアディレクター兼アナリストであるRene Buest氏は、多くのハイパースケーラーがデジタル主権をコンプライアンス対応の問題としてのみ捉えている点を問題視している。「これは彼らが犯している過ちであり、その結果、市場シェアを失うことになる」とBuest氏は指摘する。ハイパースケーラーがソブリンクラウドの要件に戦略的・本質的に対応しなければ、地域・国内クラウドプロバイダーへの置き換えが進むことを示唆しており、グローバルクラウド市場の競争構造が変化していく可能性がある。