概要

半導体製造装置最大手のASMLは2026年4月15日、2026年第1四半期(Q1)の決算を発表した。売上高は88億ユーロ、純利益は28億ユーロを記録し、いずれもアナリスト予想を上回る好決算となった。これを受けて同社は2026年通期の売上高見通しを360〜400億ユーロに上方修正した。AI(人工知能)向けデータセンターの拡大に伴う半導体需要の高まりが、先端露光装置への旺盛な需要を支えた格好だ。

ただし、決算発表後の株価は約6%の下落を記録した。好業績にもかかわらず株価が下落した主な要因は、中国向け輸出規制の強化に対する市場の懸念である。米国政府が対中半導体輸出規制を一段と厳格化する方針を示しており、ASML製品の中国向け販売が制限される可能性が投資家心理を冷やした。

業績と市場背景

ASMLはEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の唯一の製造会社として、世界の先端半導体製造において不可欠な立場を占めている。AIチップや高性能プロセッサの製造に欠かせない同社の装置は、台湾のTSMCや韓国のサムスン電子、米国のインテルなど世界の主要チップメーカーが導入している。AI関連の設備投資が世界的に増加する中、ASMLへの需要も拡大が続いており、Q1決算はこうした追い風を反映したものとなった。

中国輸出規制リスク

ASMLにとって中国は重要な市場の一つであり、中国向け売上が全体の相当部分を占める。しかし近年、米国主導の対中半導体輸出規制の強化により、ASMLは最先端のEUV装置に加え、旧世代のDUV(深紫外線)装置についても中国への輸出制限が拡大しつつある。2025年以降、規制の範囲はさらに広がっており、今後の中国向け受注や売上に影響が生じる可能性が懸念されている。通期見通しの上方修正はポジティブな材料である一方、中国事業への規制リスクが株価の重荷となっている構図だ。

今後の見通し

AI・データセンター投資の拡大を背景に、半導体製造装置への需要は中長期的に堅調が見込まれる。ASMLは依然として業界において独占的な技術優位を持っており、先進国での半導体生産能力増強(米国のCHIPS法や欧州のEU Chips Actに基づく補助金計画など)も追い風となる。一方で、地政学的リスクや規制強化の動向は引き続き不確実性の主要因として意識される見通しだ。