「所有するな、それで幸せになれ」への反旗

モジュラーPC企業FrameworkのCEO Nirav Patel氏は2026年4月10日、「私たちが知るパーソナルコンピューティングが死ぬという、非常にリアルなシナリオがある(There is a very real scenario in which personal computing as we know it is dead)」と警告するマニフェストを公開した。AIブームが引き起こすコンポーネント争奪戦により、一般ユーザーが自分のハードウェアを「所有」できなくなる未来を強く危惧した内容だ。

Patel氏は業界の動向を「The industry is asking you to own nothing and be happy(業界はあなたに『何も所有するな、それで幸せになれ』と求めている)」と表現し、かつてスティーブ・ジョブズが称えた「心の自転車(bicycle for the mind)」というコンピューターの理念を引き合いに出しながら、「コンピューターはもはや心の自転車ではなく、あなたを目的地へ直接連れていく自動運転車になりつつある」と、AIへの主体性の移転を批判した。

AIインフラ競争が引き起こすコンポーネント危機

背景にあるのは、AI需要に端を発する深刻なコンポーネント不足だ。2023〜2025年のGPU不足は、2025年末以降にはメモリ・ストレージ不足へと波及し、さらにAIエージェント向けサーバーCPUの需要爆発によってCPU不足の兆候も現れ始めている。RAM・SSD・HDDを含むストレージコンポーネント全般が前例のない需要にさらされ、価格が急騰している。

Frameworkも例外ではなく、DRAM価格高騰を理由に2025年〜2026年初頭にかけて複数回の値上げを余儀なくされた。デスクトップやマザーボード製品では最大27%の値上げに踏み切った事例もある。この流れが続けば、潤沢な資金を持たない一般ユーザーはハードウェアの購入を断念し、クラウド経由のトークン課金型コンピューティングに依存せざるを得なくなるとPatel氏は指摘する。

Frameworkの誓い:所有と自由のために戦い続ける

こうした状況に対し、Patel氏は「AIがすべてを奪うシナリオがどれほど不可避に聞こえようとも、世界に自分の計算手段を所有したいと思う人がいる限り、我々はそれを可能にするハードウェアを作り続ける」と宣言。Frameworkが守り続けるユーザーの権利として、OSの選択の自由、ハードウェア改造の自由、クラウド依存ではなくローカルでのデータ・計算処理の制御の3点を挙げた。

修理可能性の広がりについては前向きに評価しており、「Appleでさえ最新ノートブックで修理対応を採用するなど、修理が例外ではなく標準になりつつあることは喜ばしい」とコメントした。

4月21日「Next Gen」イベントで新製品を発表予定

Patel氏のマニフェストは新製品発表の予告も兼ねており、2026年4月21日(現地時間午前10時30分)にサンフランシスコで「Framework [Next Gen]」イベントを開催することが告知された。YouTubeでのストリーミング配信も予定されており、購入を検討しているユーザーにはイベントまで待つよう推奨している。また、ニュージーランド・ノルウェー・スイス・シンガポールへの新規市場拡大も合わせて発表された。