概要

AmazonのCEO Andy Jassy氏は2026年4月9日に公開した年次株主書簡の中で、同社が独自開発する3種類のチップ(Graviton・Trainium・Nitro)の合計年間売上高が200億ドルを超え、前年比3桁成長率で拡大していることを明らかにした。さらに、スタンドアロンのチップ企業として事業展開した場合、年間500億ドル規模の売上に相当すると試算している。また、需要の旺盛さを背景に、将来的にチップラックを第三者へ販売することを「十分あり得る」と示唆した。Jassy氏はNvidiaやIntelなどの競合を念頭に置きながら、「顧客がより優れたコストパフォーマンスを求めて新たなシフトが始まっている」とも述べた。

各チップラインの詳細

Graviton(CPU)は同等のx86プロセッサと比較して40%優れた価格性能比を実現しており、AWS上位1,000顧客の98%が採用している。需要は非常に旺盛で、大口顧客2社が2026年の利用可能な全容量を購入したいと申し出るほどだったという(Amazonは断った)。

AIアクセラレータのTrainiumは世代を重ねて急速に進化している。Trainium2は競合GPUと比べ約30%優れた価格性能比を誇り、ほぼ完売状態。Trainium3はTrainium2からさらに30〜40%の価格性能比向上を果たし、2026年初頭時点でほぼ全量が予約済みでUberなど大手も採用している。次世代のTrainium4は広範な提供まで約18か月と発表されており、NvidiaのNVLink Fusionとの相互運用性も備える予定で、すでに相当量が予約済みとなっている。Nitroはネットワーク・セキュリティを担うチップとしてAWSの仮想化基盤を支えている。

AI投資と財務への影響

Jassy氏はAIインフラへの2,000億ドル規模の設備投資(CapEx)計画を「顧客需要に裏打ちされたもの」として強く擁護した。OpenAIはAWSに1,000億ドル超をコミットしており、その中にはTrainiumの約2ギガワット分の消費が含まれる。一方、大規模な先行投資の影響でフリーキャッシュフローは前年の380億ドルから110億ドルへと大幅に減少しており、507億ドルの資本支出増加が主因だ。

Trainiumへの移行はコスト面でも大きな意味を持つ。Jassy氏は自社チップの活用により「年間数百億ドルのCapExを節約できる」と述べており、競合チップへの依存からの脱却が数百ベーシスポイントの営業利益率改善につながると見込んでいる。

今後の展望

今回の株主書簡は、Amazonが自社インフラ向けに内製してきたチップを外部市場にも展開する戦略転換の可能性を初めて公式に示した点で注目される。NvidiaとはAWSでの協力関係を維持しつつも、独自チップの競争力を前面に押し出す姿勢は、クラウドとAIインフラを巡る半導体市場の勢力図を塗り替える可能性がある。TrainiumのNVLink Fusion対応など既存エコシステムとの統合を進めながら、外部販売への道筋が整えば、Amazonの半導体事業はAWS事業に匹敵する規模に成長しうると言えよう。