概要

Gartnerは2026年4月7日、インフラ・オペレーション(I&O)分野におけるAI投資の実態調査レポートを発表した。2025年11月〜12月に783人のI&Oリーダーを対象に実施した調査によれば、AIプロジェクトがROIの期待を完全に達成したのはわずか**28%にとどまった。一方で20%**が完全失敗と報告しており、**57%**のリーダーが少なくとも1件のプロジェクト失敗を経験していた。ただし、**77%**のリーダーは少なくとも1件の成功事例も持っており、成否が大きく分かれている実態が浮き彫りになった。

失敗の主な原因

Gartnerのリサーチディレクターであるメラニー・フリーズ氏は、失敗の最大の要因として「期待が高すぎ、早すぎた」点を挙げる。AIがすぐに複雑なタスクの自動化やコスト削減、長年の運用課題の解消を実現すると見込んでいたリーダーが多く、短期間で結果が出ないと自信を失いプロジェクトが停滞するケースが相次いだという。失敗が集中したユースケースは自動修復(Auto-remediation)自己修復インフラ(Self-healing infrastructure)エージェント主導のワークフロー管理など、複雑性が高く実装難度の大きい領域だった。また、多くのチームがAIをビジネス戦略の中核ではなく「実験的なサイドプロジェクト」として扱っていたことも問題として指摘された。スキルギャップおよびデータ品質・データ不足はそれぞれ失敗原因の**38%**を占めた。

成功している領域と成功要因

成功率が高かったのはITサービスマネジメント(ITSM)クラウドオペレーションで、これらの分野では53%のリーダーが成功を報告した。どちらも市場が成熟しており、AIが付加価値をもたらす実証済みのユースケースが存在する点が共通している。フリーズ氏はAIプロジェクトを成功に導く3つの条件として、①既存ワークフローへのAIの統合、②経営幹部によるサポートと資金継続、③組織の実際のニーズに基づいた現実的なビジネスケースの構築を挙げた。さらに、AIユースケースを「製品として管理する」こと——共有スコアリングモデルの導入や、セキュリティ・財務チームを巻き込んだ部門横断的な評価——を推奨している。

業界全体で共通するAI投資の課題

この調査は、AI投資のリターンに懐疑的な見方が広がる昨今の流れとも一致する。MITが2025年8月に実施した調査では、生成AIのパイロットプロジェクトの**95%**が測定可能な財務的リターンを生まなかったと報告されており、コーポレート幹部の80%以上が「AI投資にもかかわらず生産性向上を実感できていない」とする調査結果も出ている。Gartnerは今回の結果を受け、I&Oリーダーに対して中央集権的な戦略主導アプローチへの転換と、サイロ型の部門予算管理からの脱却を促している。AIの潜在的な価値を引き出すためには、技術的な実装だけでなく、組織設計やビジネスケースの精緻化が不可欠であることが改めて示された。