概要
AIを用いた半導体設計プラットフォームを開発するスタートアップCognichipは2026年4月1日、Seligman Ventures主導のシリーズAラウンドで6,000万ドルの調達を発表した。SBI Investment、Mayfield、Lux Capital、FPV、Candou Venturesも参加し、2024年の創業以来の累計調達額は9,300万ドルを超えた。今回の資金調達と同時に、IntelのCEO Lip-Bu Tan氏とSeligman VenturesのマネージングパートナーUmesh Padval氏が取締役に就任している。
同社を創業したCEOのFaraj Aalaei氏は、ネットワーク半導体のAquantiaやCentillium Communicationsを立ち上げた3度目の起業家。Amazon、Google、Apple、Synopsys、KLAといった企業の出身者に加え、数学・物理のオリンピックメダリストを含む精鋭チームを率いている。
技術的な詳細:ACI®プラットフォーム
Cognichipの中核製品は「ACI®(Artificial Chip Intelligence)プラットフォーム」と呼ばれる独自のフルスタックアプローチだ。従来のEDA(電子設計自動化)ツールが設計プロセスを逐次的に処理するのに対し、ACIは「物理インフォームド基盤モデル(Physics-Informed Foundation Model)」を採用し、物理的制約・回路動作・製造上の複雑さを設計プロセス全体に統合している。
最大の特徴は並列設計探索の実現だ。従来は順番に行う必要があった設計判断を同時並列で探索できるため、設計期間を約50%以上短縮できると主張する。同社は設計サイクルを数ヶ月から数日規模へ加速させるとも述べている。また、デジタル・アナログ・混合信号の全設計領域に対応しており、コンポーネント間の相互依存性を横断的に計算できる。同社はすでに30社以上の半導体企業と取引しており、業界上位20社の多くが顧客に含まれるとしている。
業界背景と意義
現代の高度な半導体チップの設計には数年の期間と数億ドルの投資が必要とされており、AI自体の進化を支えるチップの開発サイクルがAI産業全体のボトルネックになりつつある。Seligman VenturesのPadval氏は「次の波による設計サイクルの大幅短縮は、既存ツールの漸進的な最適化ではなく、AIによって直列化されていたチップ設計プロセスを並列化することから生まれる」とコメントしている。
Intel CEOのLip-Bu Tan氏が取締役に就任したことは、業界大手がCognichipの技術的方向性を評価していることを示す象徴的な出来事だ。CEOのAalaei氏は、ソフトウェアエンジニアがAIツールを当然のように使うように、半導体設計の世界にも同様の変革をもたらすことを目指している。チップ設計コストの75%削減と開発期間の半減という主張が実現すれば、AI向け半導体の開発競争に大きな影響を与える可能性がある。