概要

英国の競争・市場庁(CMA)は2026年3月31日、Microsoftのビジネスソフトウェアエコシステムを対象とした「戦略的市場地位(SMS: Strategic Market Status)」調査を2026年5月に開始すると発表した。焦点となるのは、MicrosoftのライセンスモデルがAzureを競合クラウドプロバイダー(AWSやGoogle Cloud等)に対して不当に優遇しているかどうかだ。最長9か月をかけて調査が行われ、MicrosoftがSMSに指定されるかどうかも検討される。

ライセンス問題の詳細

問題の核心は、Windows ServerとSQL Serverのライセンス体系にある。MicrosoftはオンプレミスのライセンスをそのままAzureに移行することを認める一方、AWS・Google Cloudなどの競合クラウド上でこれらの製品を利用する場合には大幅に割高な料金を課している。Googleの報告によれば、非Microsoftプラットフォームへのレガシーワークロード移行コストはAzureと比較して最大5倍に達するケースもあり、実質的にAzureへの囲い込みが生じているとされる。

Microsoftが提示した対応策

CMAの懸念を受け、Microsoftはすでにいくつかの改善策を表明している。具体的には、英国顧客向けに標準インターネット転送とMicrosoft Global Network転送の両方を対象とした無料のデータ転送(Egress無料化)の拡充、クラウド切り替え時の移行期間を60日から180日へ延長、「適格スイッチ(Qualifying Switch)」の定義をAzureからの完全離脱だけでなく個別サービスからの離脱も含む形への拡大、さらにEUのデジタル市場法(DMA)を参考にした相互運用性リクエスト窓口の6か月以内の設置などが含まれる。

業界の反応と今後の展望

今回の調査に対し、業界団体CCIAは「過度に広範な介入」を避けつつ「制限的なソフトウェアライセンス条項」に焦点を当てたアプローチを評価する声明を発表した。一方、クラウドプロバイダーCivoのCEOは、AWSが同様のSMS指定審査から外れたことについて「規制上の不均衡を生む」と批判しており、Open Cloud CoalitionはMicrosoftのコミットメントが履行されない場合には速やかな措置を求めている。CMAは調査開始後に関係者からの意見を募り、6か月後に進捗を再評価する予定だ。SMS指定に至った場合、Microsoftには英国市場における追加的な規制遵守義務が課される可能性がある。