概要
米議会の超党派議員グループは2026年4月2日、「MATCH法(Multilateral Alignment of Technology Controls on Hardware Act)」を下院に提出した。同法案はAIチップ製造に用いられる特殊な半導体製造装置、特にDUV(深紫外線)液浸リソグラフィ装置の中国向け輸出を厳しく制限することを主眼としている。共和党のマイケル・バウムガートナー下院議員(ワシントン州)が主導し、党派を超えた支持を集めている。上院でも共和党のピート・リケッツ議員(ネブラスカ州)と民主党のアンディ・キム議員(ニュージャージー州)が会期再開に合わせて同様の法案を提出する予定だ。
DUV装置をめぐる背景
法案が特に標的とするDUV装置は、最先端プロセスには届かないものの、高度な半導体を製造できる旧世代の露光装置だ。オランダに本拠を置くASMLはこの分野の最大手であり、2025年第4四半期の同社純システム売上の36%が中国向けだったとされる。シルバラード政策アクセラレーターのデータによれば、中国の半導体製造装置輸入額は2016年の107億ドルから2025年には約511億ドルへと急増しており、中国がこれらの装置を大量調達してAI開発能力を着実に強化している実態が浮き彫りになっている。
バウムガートナー議員は「米国は中国共産党が半導体製造において飛躍的な進歩を遂げるための抜け穴を放置し続けることはできない」と述べ、現行規制の不十分さを強調した。
同盟国への波及と外国直接製品ルールの活用
MATCH法の特徴は、米国単独の規制強化にとどまらず、オランダや日本など同盟国に対して同等の輸出制限を導入するよう求める点にある。現状では、米国のブラックリストに載った中国の工場に対しても、オランダや日本の企業は引き続き装置を販売できる状況にある。
外交交渉で合意が得られない場合、法案は商務省に対して「外国直接製品ルール(FDPR)」を発動し、同盟国の企業・政府を制裁する権限を付与する。これは米国製技術や設備が製造工程に含まれる外国製品にも米国の輸出規制を適用できる仕組みで、同盟国に対しても強い圧力となりうる。シルバラード政策アクセラレーターのサラ・スチュワートCEOは、強力な規制なしには「最先端に迫る技術を中国がスケールアップするのを許してしまう」と警告している。
今後の展望
MATCH法が成立した場合、中国のAIチップ製造能力の向上は大幅に制約されることになる。一方で、ASML株をはじめとする欧州・日本の半導体装置メーカーへの影響も大きく、国際的な通商摩擦に発展する可能性もある。中国は独自のリソグラフィ技術の開発を急いでいるが、現時点では外国製装置への依存度が高く、規制強化の効果は相当程度期待できるとされる。法案の行方は、米国の半導体輸出規制戦略と国際的な技術覇権争いの今後を占う試金石となりそうだ。