概要

Financial Timesは2026年4月1日、Amazonが衛星通信企業Globalstarを約90億ドルで買収する交渉を進めていると、複数の関係者の話として報じた。この報道を受け、Globalstarの株価は10〜18%急騰した。Amazonは低軌道衛星インターネットサービス「Amazon Leo」(2025年11月にProject Kuperからリブランド)を通じてSpaceXのStarlinkと競争しており、今回の買収はその戦略を大幅に加速させる可能性がある。両社はいずれも公式コメントを出していない。

Amazonの衛星戦略と買収の狙い

Amazon Leoは現在、約212基の低軌道(LEO)衛星を運用しており、最終的に7,700基の星座を目指している。しかし、FCCのライセンス条件では2026年7月30日までに第一世代の3,232基のうち半数以上の打ち上げ・運用が義務付けられており、現時点で約1,400基が不足している。Amazonは2026年1月に期限延長をFCCに申請しているが、認可は不透明だ。

アナリストはGlobalstar買収の本質を「ハードウェアではなくスペクトラム(周波数帯)の獲得」と分析する。Globalstarが保有するLバンドおよびSバンドのグローバルに調和した周波数帯は、衛星から直接スマートフォンへの通信(ダイレクト・トゥ・デバイス)を実現するために不可欠な資産だ。Globalstarの既存衛星インフラと周波数資産を獲得することで、FCC規制上の要件を満たしながらAmazon自身の打ち上げペースの遅れを補う「時間を金で買う」戦略と見られている。

Apple株式と三者交渉の複雑化

買収の最大の障害はAppleの存在だ。Appleは2024年にGlobalstarへ15億ドルを投資し、約20%の株式を取得している。さらに、この投資契約ではGlobalstarがネットワーク容量の85%をAppleに提供することが約束されており、iPhoneやApple Watchの「衛星経由の緊急SOS」「衛星経由のメッセージ」「位置情報共有」機能を支えている。

Amazon主導の買収交渉が成立するためには、Amazonがこの容量供給契約をどう引き継ぐか、あるいは再交渉するかについてAppleとも合意する必要があり、事実上の三者間交渉となる。Appleは公式にコメントしていない。

規制上の障壁とSpaceXの反発

規制面でも複数の課題が浮上している。SpaceXはすでにFCC宇宙局に対し、Amazon・Globalstar連合の「スペクトラル効率」に関する異議申し立てを行っている。また、大手テック企業同士の統合として、DOJとFCCが独占禁止法の観点から厳しく審査する見通しだ。LバンドとSバンドという希少な周波数資源の集中は、将来的なグローバル接続性をめぐる「スペクトラム戦争」の様相を帯びており、各国規制当局の注目を集めている。

成立すれば、Amazonは衛星インターネット市場で圧倒的なシェアを持つStarlinkへの対抗軸として一気に存在感を高めることになる。一方で、Apple・SpaceX・規制当局という三方向からの障壁をいかに乗り越えるかが、ディール成否を左右する。