概要
NASAは2026年4月1日午後6時35分(EDT)、フロリダ州ケネディ宇宙センターの第39B発射台からスペース・ローンチ・システム(SLS)ロケットとオリオン宇宙船を打ち上げた。搭乗するのはリード・ワイズマン船長(NASA)、ビクター・グローバー操縦士(NASA)、クリスティナ・コック・ミッション・スペシャリスト(NASA)、およびジェレミー・ハンセン・ミッション・スペシャリスト(カナダ宇宙庁)の4名で、約10日間の月周回ミッションに出発した。1972年のアポロ17号以来、実に54年ぶりとなる有人月軌道外飛行であり、人類の深宇宙探査における歴史的な再出発を飾るマイルストーンとなった。
歴史的な意義とクルー
このミッションは複数の「初」を達成する歴史的な飛行だ。ビクター・グローバーは有色人種として初めて深宇宙を飛行する宇宙飛行士となり、クリスティナ・コックは女性として初めて月圏に向かう宇宙飛行士となった。またジェレミー・ハンセンはカナダ人として初の深宇宙飛行士となる。ミッション中、アポロ13号が記録した地球からの最遠到達距離である約40万1,000km(約24万8,655マイル)を超えることも見込まれており、人類の到達した最遠記録の更新が期待されている。
打ち上げの技術的詳細
SLSロケットは打ち上げ時に合計880万ポンド(約3,990トン)の推力を発生させた。2基の固体ロケットブースター(各高さ約177フィート・54メートル)はそれぞれ360万ポンド以上の推力を担い、全推力の75%超を供給した。打ち上げから約2分後に固体ロケットブースターが分離し、約8分後にコアステージのメインエンジンカットオフを完了。その後オリオン宇宙船のソーラーアレイウィング(SAW)4枚が展開され、各ウィングに1万5,000枚のソーラーセルを搭載した総翼幅約63フィート(約19メートル)のシステムが宇宙船に電力を供給する態勢が整った。なお宇宙船は「Integrity(誠実)」と命名されている。
打ち上げ当日の経過と今後の展望
当日は午後5時ごろに飛行終了システムの通信に不具合が発生したが、エンジニアが15分以内に解決し、天候も90%「発射可」の判定となった。発射ディレクターのチャーリー・ブラックウェル=トンプソン氏が実施した最終ゴー/ノーゴー確認では全チームが「ゴー」で一致した。今後、クルーは月へのフリーリターン軌道を飛行し、月面着陸を伴わずに月を周回して地球へ帰還する予定だ。アルテミス計画では将来的に月面着陸(アルテミスIII以降)を目指しており、今回のIIは月着陸船を含む本格的な月面探査に向けた重要な有人飛行実証となる。