概要
インドIT大手のInfosysは2026年3月25日、ヘルスケアITコンサルティング企業Optimum Healthcare ITの全株式を最大4億6,500万ドル(一括払いとアーンアウト込み)で、またP&C(損害保険)向けテクノロジー企業Stratusを最大9,500万ドルで取得すると相次いで発表した。両案件は合計5億6,000万ドル規模の大型投資であり、InfosysにとってOptimum買収は同社史上2番目に大きい案件となる。どちらも全額現金での取引で、Q1 FY2027(2026年4〜6月期)中のクローズを予定している。
Infosys CEOのSalil Parekh氏は、Optimum買収について「ヘルスケアプロバイダー向けにクラウド・データ・デジタル変革をエンドツーエンドで推進する差別化された価値提供が可能になる」と述べ、医療分野でのAIドリブンなサービス拡充を明確に打ち出した。
Optimum Healthcare IT——医療IT業界のベストプレイヤーを取り込む
Optimum Healthcare ITは2012年にフロリダ州ジャクソンビル・ビーチで創業し、約1,600名の従業員を抱える医療IT専門コンサルティング企業だ。直近決算年度の売上高は約2億7,600万ドルで、医療IT調査機関KLASの「Best in KLAS」評価を獲得するなど業界内での評価は高い。ServiceNowの「2026 Partner of the Year」を受賞するエリートパートナーであるほか、AWS・Workday・Microsoft Azureとも強固な連携関係を持ち、電子カルテ(EHR)最大手Epicの実装支援においても豊富な実績を誇る。
具体的な支援事例としては、テネシー州のBaptist Memorial Health CarのEpicシステムをAWSクラウドへ移行したプロジェクトや、バージニア州Inova Health SystemへのEpicのBeekerラボモジュール導入などが挙げられる。Infosysはこの買収によって医療プロバイダーセグメントへの足がかりを大幅に強化し、Optimumの顧客基盤に対してInfosys TopazのAI機能やInfosys Cobaltのクラウドサービス、サイバーセキュリティなど幅広い付加価値を提供できるようになる。
Stratus——P&C保険のコアシステム刷新をGuidewireで牽引
一方、同日に発表されたStratusの買収も保険分野での競争力強化を狙う戦略的投資だ。2001年設立のStratusはニュージャージー州フリーホールドを本拠とし、450名超の専門家が米国・カナダ・インドに展開する。年間売上高は約4,280万ドルで、P&C保険向けプラットフォームとして広く普及するGuidewire InsuranceSuite(PolicyCenter・ClaimCenter・BillingCenter)の実装・クラウド移行・アップグレードを専門とする。DatabricksやMicrosoft Fabricを活用したデータモダナイゼーション分野にも強みを持つ。
Infosys保険部門SVPのKannan Amaresh氏は「AIは保険業界のアンダーライティング・クレーム処理・不正検知を根本的に変革しており、P&Cセグメントがその中心にいる」と強調した。アナリストはこの案件をCY25売上の約2.2倍のEV/Sales評価と試算しており、クローズ後にInfosysの年間売上に約0.2%を上乗せすると見ている。
インドIT各社の積極的なM&A戦略——2026年に最大70億ドル投資へ
この一連の動きはInfosysだけの動向ではなく、インドIT業界全体のトレンドを反映している。調査会社UnearthInsightによれば、インドのIT大手各社は2026年に合計65億〜70億ドルをM&Aに投じる見通しで、前年の約50億ドルから大幅に増加する。案件数も2025年の25件から30〜35件程度に拡大が見込まれ、クラウド・AI・アジェンティックAI・データアナリティクス分野が主な対象となっている。
InfosysはFY26(2026年3月期)に合計5件・約8億800万ドルの買収を実施し、同社として過去最高水準の投資規模に達した。TCSも約7億7,300万ドルを投じており、HCLTech・Wiproも積極的な姿勢を示している。背景には、インドIT大手の売上高成長率がFY22の18.8%から直近のFY25には3.1%まで急低下しており、有機的成長の鈍化をM&Aで補う必要性が高まっていることがある。AI時代における技術的競争力と顧客基盤の急速な拡充が、各社の共通課題となっている。