Amazon EKS、コントロールプレーンの詳細設定に対応 スケジューラやHPAの挙動を調整可能に

概要 Amazon EKSは8月12日、Kubernetesコントロールプレーンを構成する各コンポーネントの設定パラメータを、これまでのデフォルト値を超えて細かく調整できる新機能を発表した。対象となるのはスケジューラ、コントローラマネージャー、APIサーバーの3コンポーネントで、それぞれノードへのポッド配置戦略、Horizontal Pod Autoscaling(HPA)の応答速度、イベントなどリソースのライフサイクル管理に関わるパラメータを制御できるようになる。管理型サービスであるEKSはこれまでコントロールプレーンの内部動作をブラックボックスとして提供してきたが、今回の変更によりユーザーはワークロードの特性に合わせてクラスタの挙動をチューニングできる余地が広がった。この機能はEKSが利用可能な全AWSリージョンで提供される。 技術的な詳細 代表的な利用例として紹介されているのが、スケジューラのノードリソース適合戦略(node resource fit strategy)を「MostAllocated」に設定するケースだ。デフォルトの「LeastAllocated」戦略は、ポッドをできるだけ多くのノードに分散させ、各ノードに余裕(ヘッドルーム)を残す挙動をとる。一方「MostAllocated」に切り替えると、スケジューラは既に十分利用されているノードへポッドを優先的に詰め込むようになり、同じワークロードをより少ないノード数で稼働させられる。ノード間の余裕確保が重要でないバッチ処理系のワークロードなどでは、この設定によりノードコストの削減が期待できる。このほか、コントローラマネージャー側ではHPAがメトリクスの変化に対してどれだけ迅速にスケールイン・スケールアウトを行うかという応答速度を、APIサーバー側ではイベントなどのリソースをどれだけの期間保持するかといったライフサイクルパラメータを、それぞれ調整可能になる。 背景と今後の展望 EKSのようなマネージドKubernetesサービスは運用負荷を下げる一方で、コントロールプレーンの内部パラメータが固定されているため、大規模クラスタや特殊なワークロード要件を持つユーザーにとってはチューニングの自由度が制約になる場合があった。今回のアップデートは、マネージドサービスの運用のしやすさを維持しつつ、セルフマネージドクラスタに近い柔軟性を一部取り戻す方向性を示すものといえる。設定可能なパラメータの詳細な一覧は公式ドキュメントで案内されており、コスト最適化やオートスケーリングの応答性向上を目的にクラスタ構成を見直したいユーザーは、自身のワークロード特性に応じて設定変更を検討する価値がある。

August 15, 2026

Flutter 3.47リリース、Material/Cupertino UIが1.0到達しデスクトップのImpellerが標準に

概要 Googleは8月12日、クロスプラットフォームUIフレームワークFlutterの新バージョン3.47をリリースした。今回の目玉は、UIウィジェット群であるMaterial UIとCupertino UIパッケージが正式に1.0へ到達し、コアSDKから分離されたことだ。これにより開発者はFlutter SDK本体をアップグレードすることなく、最新のMaterialおよびCupertinoウィジェットのスタイルを個別に利用できるようになった。移行はdart fix --apply --code=migrate_design_widgetsコマンドで自動化されており、既存プロジェクトも比較的スムーズに対応可能だ。 デスクトップ向けレンダリングエンジンImpeller 次世代レンダリングエンジンImpellerが、macOS・Windows・Linuxのデスクトップ環境でデフォルトのレンダラーとなった。Impellerは実行時のシェーダーコンパイルを排除する設計になっており、アプリ起動直後の初フレームからシェーダーコンパイルに起因するカクつきがなく、滑らかなアニメーション体験を実現する。あわせてデスクトップでのテキストレンダリングにSignedDistanceFunction方式が採用され、より鮮明な文字表示が可能になった。 プラットフォーム別の変更 iOS/macOSでは対応バージョンの引き上げが行われ、iOSの最小対応バージョンは13から15へ、macOSは10.15から12へと変更された。あわせてiOS 27 SDK対応として、UISceneライフサイクルの採用が必須となる。macOSではApple Silicon移行の推進に伴い、Intel Macに対する自動テストが廃止された。またSwift Package Managerへの移行も進んでおり、利用の多いiOSプラグイン上位100件のうち92件が既に移行を完了しているという。 パフォーマンスと開発者体験の改善 WebAssembly対応では--wasmフラグによる有効化に加え、実験的機能として遅延ローディング(--enable-wasm-deferred-loading)がサポートされた。開発者向けにはWidget Previewにローカルキャッシング機能が導入され、.widget_preview/フォルダの活用によってセットアップ時のオーバーヘッドが削減されている。デスクトップでは複数ウィンドウ機能が強化され、ポップアップウィンドウのサポート、ウィンドウハンドルのクエリ機能、サイズ自動調整APIが新たに追加された。Androidでは仮想キーボードの修飾キーが固着する不具合も修正されている。 破壊的変更と今後の展望 一方で、flutter_localizationsパッケージがコアSDKからアンバンドルされ、GlobalMaterialLocalizations.delegatesを用いた新形式への移行が必要になる点には注意が必要だ。コアSDK内に残る設計ライブラリは11月予定のFall安定版で正式に廃止される見込みで、開発者は早めの移行が求められる。Googleは今後、WebAssemblyのデフォルト化やImpellerフォールバックの廃止、SwiftPMへの完全移行をさらに推進していく方針を示しており、Flutterのプラットフォーム基盤は今後も継続的に刷新されていく見通しだ。

August 15, 2026

UberとPony.ai、欧州4都市以上へロボタクシー2,000台超を展開する提携拡大を発表

概要 Uberと中国の自動運転技術企業Pony.aiは8月14日、両社の提携を拡大し、欧州の4都市以上に2,000台超のロボタクシーを展開する計画を発表した。すでにクロアチア・ザグレブで地元企業Verneと協力した商用サービスを開始しており、今回の発表はそれに続く大規模展開となる。中東での機会も探っているとされ、詳細は今後段階的に公開される見通しだ。 提携の枠組み 両社は「共同展開モデル」と呼ばれる柔軟な体制を採用する。Pony.aiが自動運転技術を、Uberがライドシェアプラットフォーム(配車・決済・カスタマーサービスなど)とフリート運用能力を提供し、各市場では地元のフリート事業者が車両の保守・清掃・充電といった日常的な運用を担当する。市場ごとに異なるパートナーが車両を所有できる仕組みにより、地域特性に応じた展開を可能にしているという。 Pony.ai CEOのJames Peng氏は、「Pony.aiの実証済みの自動運転技術とUberのグローバルなモビリティプラットフォームを組み合わせる」ことで、持続的な商用規模でのオペレーション構築を目指すとコメントした。UberでAutonomous Mobilityを統括するSarfraz Maredia氏も、「個別のローンチから再現可能な商用規模への移行」が目標だと述べている。 背景と業界の状況 Pony.aiは北京、広州、上海、深センなど中国主要都市で完全無人・有料の自動運転サービスを運営してきた実績を持ち、レベル4の自動運転技術を強みとする。両社の提携は2025年5月、中東市場を軸にスタートしており、2026年初頭にザグレブでの商用サービス開始を発表していた。Uberはこれまでに30社以上の自動運転企業と提携しており、世界各地でロボタクシー市場の獲得を進めている。 業界的には、国家的な後押しと戦略的優先付けにより中国が自動運転技術で先行している一方、欧州では安全性への懸念や規制面のハードルから普及が遅れているとされる。今回の大規模な提携拡大は、中国発の自動運転技術が欧州市場へ本格的に進出する動きとして注目されている。 今後の展開 今回の発表では展開予定の具体的な都市名やサービス開始時期、車両の技術仕様などは明らかにされておらず、詳細は今後段階的に公開されるとしている。ザグレブでの商用運用の実績を足がかりに、欧州全域および中東への拡大がどのように進むか注目される。

August 15, 2026

Z.ai、再学習なしの大規模事後学習でGLM-5.3公開 コーディング性能急伸も、意図せずサイバー攻撃能力が飛躍的に向上

概要 中国のAI開発企業Z.aiは8月14日、オープンウェイトの大規模言語モデル「GLM-5.3」を発表した。同社によれば、ベースモデルは前世代の「GLM-5.2」と同一のMixture-of-Expertsアーキテクチャ(パラメータ数7,530億、コンテキストウィンドウ100万トークン)であり、アーキテクチャ変更や再学習は行わず、スケールを大幅に拡大した事後学習のみで性能向上を実現したという。長期タスク評価であるTerminal-Bench 3.0ではオープンソースモデル最高スコアを記録し、コーディングエージェント評価でもGLM-5.2比で50%の性能向上が確認された。モデルはAPIおよびGLM Coding Planサブスクリプション経由で即座に利用可能となっており、モデルウェイトは安全性評価と対策強化を終えた約2週間後にHugging Face上でオープンソースライセンスの下、公開される予定である。 事後学習アプローチとコーディング性能 Z.aiが採用したのは「環境スケーリング」と呼ぶ手法だ。学習パイプラインでは、研究エージェントが実務上のコーディングタスクをシミュレーション環境に変換し、判定エージェントがその実行可能性を検証する仕組みを構築。開発者のワークステーションを模したサンドボックス環境で、経験豊富なエンジニアの数日分の作業に相当する複雑なタスクをこなす訓練を重ねたという。報酬信号には解法に至る軌跡(トラジェクトリ)を用いることで、モデルが近道をして正解にたどり着く「ショートカット」を排除する工夫も施されている。 この結果、長期タスク系ベンチマークで顕著な改善が見られた。Terminal-Bench 3.0のスコアは4.6%から28.3%へ、DeepSWE v1.1は46.2%から66.9%へとそれぞれ大幅に向上している。また同社独自の「Z.ai Code Bench」では、Anthropicの「Claude Opus 4.8」と同等の取り組み量でこれを上回り、出力トークンの消費量では、GLM-5.3が1タスクあたり約5万トークンで31.4%のスコアを達成したのに対し、Claude Opus 4.8は約12万トークンを要して29.5%にとどまり、効率面でも優位に立ったとしている。 意図せず獲得したサイバーセキュリティ能力 今回の発表で特に注目されているのが、開発チームが当初想定していなかったサイバーセキュリティ関連能力の急伸だ。Z.aiは、脆弱性データを学習に導入した際は個別の欠陥発見能力の向上を見込んでいたが、学習規模の拡大に伴って能力が複利的に増加し、結果として完全なエクスプロイトチェーンを一貫して立案する能力が「創発」したと説明している。 具体的には、サイバーセキュリティ関連ベンチマークのCyberGymで77.2%から84.5%へ、2時間の制限時間内でのタスク達成数を競うExploitGymでは29タスクから105タスクへと大きく成績を伸ばした。中国のセキュリティチームと協力して実施した実地検証では、269件のオープンソースプロジェクトを対象に2,436件の脆弱性を特定し、うち1,097件は重大(Critical)または高度(High)の深刻度に分類されるものだったという。なお、CyberGymではAnthropicの「Claude Mythos 5」を上回った一方、他の2つのサイバーセキュリティベンチマークではAnthropicのフラッグシップモデルに後れを取ったとも報告されている。 今後の展望 GLM-5.3はすでにAPI経由で利用可能となっているが、モデルウェイトの一般公開は安全性評価と防御策の強化が完了した後、約2週間の猶予を置いて実施される。これは、意図せず獲得したサイバー攻撃能力の悪用リスクを考慮した対応とみられる。オープンウェイトモデルが商用フラッグシップモデルに匹敵するコーディング性能を、追加の再学習なしに事後学習だけで達成した点は、今後のモデル開発における低コストな性能向上策として注目される一方、能力の急伸が安全性評価のあり方にも新たな課題を突き付ける事例となりそうだ。

August 15, 2026

ランサムウェア集団Cl0p、PTC製PLMソフトの脆弱性悪用でShellなど約50社からデータ窃取と主張

概要 ロシア系とみられるランサムウェア集団Cl0pが、石油大手Shellやオランダの electronics 企業Philips、General Electric(GE)、Fiservなど約50社からデータを窃取したと主張していることが明らかになった。Shellは声明で「潜在的なインシデントを認識しており、セキュリティチームおよび関連の専門家と協力して調査を進めている」と述べ、正式に調査を開始したことを認めた。世界70カ国以上で約8万5000人の従業員を抱え、1日あたり2000万人の顧客にサービスを提供するShellからは、およそ89GBのデータが盗まれたとされる。Philipsからも13.5GB相当のデータが流出したと主張されているが、被害内容については各社とも調査中であり、Cl0pの主張を裏付ける第三者による検証はまだ行われていない。 技術的な詳細 今回の攻撃は、PTC社の製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェア「Windchill」および「FlexPLM」に存在する脆弱性CVE-2026-12569を悪用したものとされる。この脆弱性は不適切な入力検証に起因するもので、Cl0pはインターネットに公開された同ソフトウェアのインスタンスを侵害し、JSP形式のWebシェルを設置してPLMシステムからデータを窃取したとみられる。Cl0pはこの手法により、Shellを含む43社の新たな被害組織をリークサイトに掲載したと報じられている。窃取されたとされるデータには、エンジニアリング図面、施設テストレポートのスキャン、施設の写真、プロジェクト計画書などが含まれるという。PTC WindchillおよびFlexPLMは航空宇宙、防衛、自動車、製造業、医療機器分野を中心に世界で3万社以上、1500以上の小売ブランドが利用する基幹システムであり、影響範囲の大きさが懸念されている。 背景と今後の見通し PTCは6月17日にこの脆弱性に対するセキュリティパッチを公開していたが、米CISAは6月25日にこの脆弱性が実際に悪用されていることを確認し、既知の悪用された脆弱性(KEV)カタログに追加した。ドイツの連邦情報セキュリティ庁(BSI)も深夜に緊急警告を発し、組織に対して直ちにパッチを適用するよう求めていた。こうした警告にもかかわらず、パッチ未適用のインスタンスが標的にされたとみられる。ShellとPhilipsはいずれも調査を継続しており、GEについても同様に標的にされたと報じられているが、コメントは得られていない。Cl0pによるデータ窃取の主張は現時点では検証されておらず、今後各社の調査結果によって実際の被害範囲が明らかになるかが焦点となる。

August 15, 2026

Google、Gemini 3.7 Flashを電撃発表 コーディング性能が大幅向上、価格は半額に

概要 Googleは8月13日、新モデル「Gemini 3.7 Flash」を発表し、Gemini Sparkを通じて160カ国以上で即時展開を開始した。前モデルのGemini 3.6 Flashからわずか3週間というハイペースでの投入となり、開発者からのフィードバックとアルゴリズム面の革新を反映した「実質的な改善」がもたらされているという。Googleはコーディングと自律型ビジネスワークフロー向けのモデルと位置付けており、ソフトウェア開発やデバッグ性能の向上を強調している。一方で、上位モデルとなるGemini 3.5 Proの提供は依然として遅延が続いている。 性能とベンチマーク Gemini 3.7 Flashはソフトウェアエンジニアリング関連のベンチマークで顕著な向上を見せた。DeepSWE v1.1では49.0%から65.3%へ、FrontierCode 1.1では34.4%から43.6%へとスコアが上昇している。とりわけFrontierCode 1.1 Mainのテストでは、単なるコード生成だけでなくバグ修正への対応やプロジェクト固有のスタイルガイド遵守も評価対象となる100件のプログラミングタスクにおいて、AnthropicやOpenAIの競合モデルを上回る結果を示したという。 ウェブ開発の分野では、より少ないプロンプトで機能的かつ完成度の高いアプリケーションを生成できるようになり、Arena.aiのWebDev ArenaにおけるEloスコアは1538から1588へと向上した。ユーザーインターフェース生成能力も強化されており、アップロード済みの参考画像に基づいて適切なレイアウトを設計できる。処理能力の面では、最大100万トークン分の画像・動画・テキストをプロンプトとして扱い、最大64,000トークンのテキスト応答を生成できるとしている。 知識集約型のタスクでも改善が見られ、ドキュメント理解を測るGDP.pdfベンチマークでは22.0%から34.0%へ、AutomationBenchでは17.0%から30.4%へとそれぞれ上昇した。GDP.pdfのテストではClaude Sonnet 5やGPT-5.6 Terraを上回る性能を記録したとされ、Googleは同モデルが複数のAIエージェントからなる「エージェント群」を動かすことも可能だとしている。 価格体系と提供範囲 Googleは2026年末まで導入価格を適用し、入力トークンが100万あたり0.75ドル、出力トークンが100万あたり3.75ドルと、前モデル比で50%引きの水準に設定した。提供先はGemini Spark(AI Pro/Ultraサブスクリプションが必要)のほか、Google Antigravity、AI Studio、Android Studio、Enterprise Agent Platformと幅広い。またCBRN(化学・生物・放射線・核)関連やサイバー脅威への対策として、セーフガードも更新されたという。 上位モデルの遅延という背景 今回のGemini 3.7 Flashの投入は、上位モデルであるGemini 3.5 Proの提供遅延が続くさなかに行われた点が注目される。エントリーレベルモデルの高速なアップデートサイクルによって競合他社に対する優位性を維持しつつ、フラッグシップモデルの遅れを補う狙いがあるとみられる。

August 15, 2026

OpenAI、GPT-5.6 Solを最大14倍高速化する新階層「Ultrafast」をプレビュー公開、Cerebrasとの提携が基盤に

概要 OpenAIは8月13日、フラッグシップモデル「GPT-5.6 Sol」向けの新しいAPI階層「Ultrafast」のプレビューを開始したと発表した。標準処理と比較して最大14倍、毎秒最大750出力トークンという速度で応答を生成できるのが特徴で、品質を落とさずに推論速度だけを大幅に引き上げる取り組みだという。現時点では一部の限られた顧客のみを対象としたプレビュー提供であり、OpenAIは「処理能力の増強に合わせて段階的にアクセスを拡大する」としている。 技術的な仕組みとCerebrasとの提携 Ultrafastの高速化を支えているのは、AI向け半導体を手がけるCerebras Systemsとの提携だ。Cerebrasは今年初めにOpenAIと100億ドル規模のパートナーシップを締結しており、今回のUltrafastはその成果を活用した最初の主要な取り組みの一つとなる。従来、リアルタイム性が求められる用途では、応答速度を確保するために性能の劣る小規模モデルを選ばざるを得ないという制約があった。OpenAIはUltrafastによって、フラッグシップクラスの品質を保ったまま「1秒あたりでより多くの有用な仕事をこなす」ことを目指すとしている。 想定される用途と提供体制 OpenAIが想定する主な適用領域として、インシデント対応時のリアルタイム分析、金融市場における異常検知、カスタマーサポートの即時解決、eコマースにおける購買支援、インタラクティブな研究業務などが挙げられている。いずれも応答の遅延が体験や意思決定の質に直結する場面であり、Ultrafastはこうした低遅延が求められるユースケースを主なターゲットとしている。提供範囲は当初OpenAI APIを通じたGPT-5.6 Solのみに限られ、限定顧客向けのプレビューという位置づけだ。 価格戦略と競合との比較 OpenAIは既に2.5倍速の「Fast Mode」を提供しており、Ultrafastはその上位に位置する最上位の速度階層として設計されている。クラウドプロバイダーが処理性能に応じて価格を差別化するのと同様に、速度そのものをプレミアム機能として扱う戦略とみられ、Ultrafastの利用料金はFast Modeよりも高額になる見通しだ。競合ではAnthropicも同様の高速化機能「Claude Fast Mode」を提供しているが、報道によれば今回OpenAIが示した処理速度はそれを上回る水準にあるという。生成AIサービスの競争軸が、モデルの性能そのものに加えて応答速度にも広がりつつあることを示す動きといえる。

August 15, 2026

QuantinuumとOracleが提携、量子コンピュータ「Helios」をOCI上でクラウドサービス化へ

概要 QuantinuumとOracleは2026年8月11日、複数年にわたる戦略的パートナーシップを発表した。Quantinuumの最先端量子コンピュータ「Helios」を米国のOracle Cloud Infrastructure(OCI)データセンター内に設置し、既存のOCIコンピュート、ネットワーク、ストレージ、ID、データサービスと同じガバナンス・アクセス制御のもとでマネージドサービスとして提供する計画だ。企業顧客は専用の量子ハードウェアを自ら調達・設置・運用することなく、クラウド経由でHeliosにアクセスできるようになる。OCI量子サービスのプレビューは数ヶ月以内に予定されている。 Heliosの仕様と技術的特徴 Heliosは2025年11月に商用化されたQuantinuumの第3世代量子コンピュータで、トラップイオン方式を採用している。98個の物理量子ビットを備え、48個の論理量子ビットを用いたデモンストレーション実績を持つ。2量子ビットゲート忠実度は99.921%と「3ナイン」の閾値を超えており、エラー訂正の観点でも高い水準にある。電力消費は約60kWと、大手スーパーコンピュータの報告値の1%未満に抑えられており、従来型HPC環境との統合に適した設計となっている点も特徴だ。 OCIとの統合とターゲット領域 Heliosは既存のOCIのGPUおよびHPCリソースと並行してアクセス可能な形で統合され、企業は開発スタックやオープンソースのハイブリッドプログラミングフレームワークを通じて量子・AI・古典計算を組み合わせたワークロードを構築できる。想定される応用分野は、創薬、材料科学、金融モデリング、大規模最適化など多岐にわたる。Quantinuumの経営陣は「量子、AI、高性能コンピューティングの統合が次段階のエンタープライズコンピューティングの鍵になる」と述べ、Oracle側も「量子はAIが実現可能にしたことをさらに拡張できる」とコメントしている。 市場での位置づけと今後の展望 Forresterのアナリストは、今回の統合が既存のクラウドガバナンスやセキュリティワークフローの中に量子アクセスを組み込むことで採用の障壁を下げると評価する一方、「ほとんどの企業組織は依然として概念実証(PoC)段階にあり、本番環境での明確な量子優位性はまだ限定的」とも指摘する。同アナリストによれば、企業の量子コンピューティング活用は投資収益の即時実現よりも、アルゴリズム開発や人材育成、特定分野での研究といった「能力構築」に重点が置かれており、採用タイムラインに大きな変化はないと見込まれている。それでも、AWSやMicrosoft Azureなど主要クラウド事業者が量子アクセスをサービス化する流れの中で、Oracleの参入はハイブリッド量子・AI活用の裾野を広げる一歩となりそうだ。

August 15, 2026

Visual Studio 2026 v18.9.0公開、Gitワークツリーとサブモジュール管理をIDE統合しCopilotの組織カスタムエージェントにも対応

概要 Microsoftは8月11日、Visual Studio 2026の最新アップデートとなるv18.9.0(August Update)をリリースした。今回の目玉はGit関連機能の大幅な強化で、開発者から特に要望の多かったワークツリー対応とサブモジュールのGUI管理がIDEに直接統合された。あわせてGitHub Copilotにも、モデルの思考量を調整できる機能や、GitHub組織単位でカスタムエージェントを配布できる機能などが追加され、AI支援開発とバージョン管理の両面でアップデートが行われた。 Gitワークツリーとサブモジュール管理のIDE統合 もっとも注目される変更は、Gitワークツリーのネイティブサポートだ。Git Repositoryウィンドウでブランチを右クリックし「New Worktree from」を選ぶことで、新規ブランチ・既存ブランチ・任意のコミット履歴のいずれからでもワークツリーを作成できる。作成したワークツリーは現在のウィンドウで開くほか、新しいVisual Studioインスタンスで開いてサイドバイサイド作業することも可能で、stashやリポジトリの再クローンなしに複数ブランチを並行して扱える。 サブモジュール対応も同様に「最も要求の多いGit機能の一つ」だったといい、Git Repositoryウィンドウ内に専用の「Submodules」セクションが新設された。ここからサブモジュールの追加・更新・削除が行え、ソリューションやフォルダを開いた際には自動的に検出・有効化される。デフォルトでは編集不可の読み取り専用として扱われ、編集を有効にするには「Tools → Options → Source Control → Git」から「Automatically activate multiple repositories」を「Yes, include submodules」に設定する必要がある。Microsoftはこれを最初のマイルストーンと位置づけており、今後のリリースでさらに機能を拡充する方針を示している。 このほか、複数ファイルにまたがる変更を単一のビューにまとめて表示する「マルチファイル統合差分表示」も追加され、Git Changesやコミット詳細、プルリクエストのビューでファイル間を行き来せずに変更範囲を素早く把握できるようになった。ファイルの過去バージョンと現在の作業ツリーを比較する「Compare with Working Tree」機能や、プルリクエストの必須承認・ポリシーチェック通過後に自動完了させる機能なども加わっている。 GitHub Copilotの機能拡充 GitHub Copilot側では、対応モデルに対して低・中・高の思考量(Thinking Effort)を選択できる機能が追加された。モデルピッカーやモデル管理ビューから設定でき、単純なコード提案には低負荷・低コストのLowを、複雑なアルゴリズムやアーキテクチャ判断が絡む場面では深い推論を行うHighを選ぶといった使い分けが可能になる。モデル管理ビューではコスト情報や機能仕様、コンテキストウィンドウサイズなどモデルごとの詳細も一元的に確認できる。 GitHub組織を保有するユーザー向けには、組織オーナーが組織全体に配布するカスタムエージェントをVisual Studioが自動検出し、エージェントピッカーに表示する機能が加わった。あわせて、Git Agentによる未コミット変更やコミット単位のコードレビュー機能も強化され、GitHubおよびAzure DevOpsの両リポジトリでインラインコメントによるレビューが行えるようになっている。プロンプトボックス右上のドーナツチャートからはCopilotのコンテキストウィンドウ使用量やプラン使用状況を確認でき、制限が近づいた際の通知も改善された。 セキュリティ更新とサポート終了情報 リリースノートでは、先行するv18.8.3で対応されたセキュリティアドバイザリも案内されている。QUICのUse After Freeによる情報開示(CVE-2026-62898)、HTTPリクエスト/レスポンススマグリング(CVE-2026-62899)、.NET Frameworkの整数オーバーフローに起因するリモートコード実行(CVE-2026-62897)、WindowsDesktop.AppのDirectWriteForwarder.dllに関するRCE(CVE-2026-70354)、Git for Windowsの脆弱性(CVE-2026-62960)など、計11件のCVEが修正されている。また、Git for WindowsがWindows 8.1のサポートを終了したことも告知されており、Windows 8.1環境ではGit for Windows単体コンポーネントが利用できなくなる。ただしVisual Studioインストールに組み込まれたGit機能自体への影響はないとされている。

August 15, 2026

中国SMIC、AI需要の急拡大で四半期売上が初の30億ドル突破 純利益は3倍に

概要 中国最大手の半導体受託製造(ファウンドリ)であるSMICは、2026年第2四半期の売上高が初めて30億ドルを突破したと発表した。株主に帰属する利益は前年比で約3倍となる4億7920万ドルに達し、市場アナリストの予想を上回った。好業績の背景にあるのはAI関連需要の急拡大で、供給が逼迫する分野を中心にウエハー価格を引き上げたことが収益性の改善に直結した。 価格引き上げの経緯 SMICの共同CEOを務める趙海均氏によれば、同社は第1四半期に顧客との交渉を経てウエハー価格を引き上げた。趙氏は自社の技術力について「業界トップクラスの水準に達した」と述べる一方、価格については「業界主要企業の水準とSMICの現在の価格には依然として大きな格差がある」と述べ、今後も交渉を通じて値上げを進めていく方針を示した。同氏はさらに、第3四半期に処理するウエハーについても追加の値上げを予定していると明らかにした。 AI需要と生産動向 第2四半期の成長を牽引したのは強いAI関連需要だ。出荷ウエハー数は前四半期比14%増の290万枚に達し、平均販売価格も5.7%上昇した。生産能力面では月間110万枚に達し、稼働率は93.7%と高水準を記録している。経営陣は、AI需要が年後半(H2)も堅調に推移するとの見方を示しており、第3四半期の売上高については2〜4%の成長を見込んでいる。 今後の見通し 半導体の受託製造市場では、AI向けチップの需要拡大が価格・稼働率の両面で追い風となっている構図が鮮明になっている。SMICが今後も値上げを継続する姿勢を示していることは、業界全体の価格動向やAIインフラ投資の勢いを占う上でも注目される。同社の高稼働率と旺盛な受注状況は、当面AI関連の半導体需要が減速しないとの経営陣の自信を裏付けているといえる。

August 15, 2026