Anthropic、サムスン電子と2nmプロセスによる自社製AIチップ製造を協議か Nvidia依存脱却を模索

概要 Claudeを開発するAnthropicが、サムスン電子と自社専用のAIアクセラレータチップ製造をめぐって初期協議を行っていると、BloombergやThe Informationなど複数のメディアが報じた。検討されているのはサムスンの2nmプロセス技術と先進パッケージング能力で、狙いはNvidia GPUへの依存低減にあるとみられる。同様の協議はMetaとの間でも進んでおり、サムスンのファウンドリ事業にとって大型受注獲得のチャンスとなる可能性がある。 協議の内容と技術詳細 報道によれば、プロジェクトはまだ初期段階にあり、チップの機能や性能目標、Anthropicのサーバーインフラ内でどのような役割を担うかは未定という。複数のチップ設計企業との協議も並行して進められており、詳細な設計フェーズにはまだ入っていない。Bloombergの取材に対しAnthropicは、AmazonのTrainium、GoogleのTPU、Nvidia GPUを引き続き計算基盤の柱とする方針を示す一方、カスタムチップ計画そのものについてはコメントを控えている。 Anthropicはメモリ製品の供給能力についてもサムスンに関心を示しているとされる。同社は総額約500億ドル規模のAIデータセンター建設計画を進めており、そのうち半分程度をASICやDRAM、NANDフラッシュメモリなどのハードウェア調達に充てる見込みだという。 背景 Anthropicは2026年5月、総額650億ドル規模のシリーズH資金調達時に、サムスン電子・SK Hynix・マイクロンの3社を「戦略的インフラパートナー」に指定していた。このうちファウンドリ事業を持つのはサムスンのみで、以前からAIチップ製造の有力候補と目されていた。さらに同社は元OpenAIのカスタムチップ開発チームでハードウェアエンジニアを務めていたClive Chanを採用しており、カスタムシリコンへの関心の高さがうかがえる。 一方Metaは、次世代のMeta Training and Inference Accelerator(MTIA)チップの製造をサムスンに委託する見通しで、契約規模は約65億ドル相当と推定される。これまでMTIAの第1・2世代はTSMCが製造してきたが、TSMCの先端プロセス生産能力がAMD・Apple・Nvidiaなど大口顧客で埋まっていることが背景にあるとみられる。 今後の見通し サムスンは2027年からのTesla向けAIチップ製造契約(165億ドル規模)をすでに獲得しており、AnthropicやMetaとの案件が加われば、低迷が続いていたファウンドリ事業の採算改善に寄与する可能性がある。ただしAnthropic側の計画はまだ交渉の初期段階であり、実際の量産に至るかどうかは今後の詳細協議の行方次第となる。

July 8, 2026

Apple、macOS 27「Golden Gate」でカーネル開発にSwiftを採用しメモリ安全性を強化へ

概要 Appleは、今秋リリース予定の次期macOS 27「Golden Gate」において、システムカーネルの開発にSwift言語を採用すると発表した。この方針はWWDC26で表明され、7月2日付のSwift公式ブログで改めて説明されている。Swiftはメモリ安全性を備えたコンパイル型言語で、バッファオーバーフローやメモリリーク、不正なメモリの読み書きといった脆弱性の温床となる問題を防げる設計になっている。読みやすく書きやすい言語仕様を持ちながら、ハードウェアに近い低レイヤのシステムソフトウェア開発にも対応できることから、C・C++・Objective-Cの後継として位置づけられている。 技術的な詳細 Appleはこれまでもファームウェアやコプロセッサ、各種ドライバの開発にSwiftを採用してきた実績があり、今回はその適用範囲をカーネルレベルにまで拡大する形となる。あわせて、既存のネットワーキングスタックに含まれるQUICトランスポート層についても、Swiftを用いて全面的に書き直すことが明らかにされた。実装にはAppleが開発した非同期・ノンブロッキング型のフレームワーク「SwiftNIO」を採用しており、高いパフォーマンスとスケーラビリティ、さらにクロスプラットフォームでの互換性向上を狙っているという。 業界的な背景 今回の決定は、ソフトウェア業界全体で進むメモリ安全言語への移行の流れに沿ったものだ。米国政府による2024年の声明を皮切りに、Linuxカーネル開発におけるRustの採用や、マイクロソフトがWindows開発の一部でRustを利用する動きなど、メモリ管理に起因する脆弱性への対策が業界横断的な優先課題となっている。Appleがカーネルという最も低レイヤかつセキュリティ上重要な領域にSwiftを持ち込むことは、こうした潮流の延長線上にある取り組みといえる。 今後の見通し macOS 27は今秋に正式リリースが予定されており、カーネル開発へのSwift採用やQUICトランスポート層の刷新がどの程度実際の製品に反映されるかが注目される。メモリ安全性の強化はセキュリティ面での恩恵だけでなく、開発生産性やクロスプラットフォーム対応にも波及する可能性があり、Apple製品にとどまらず今後のシステムプログラミング言語選定の議論にも影響を与えそうだ。

July 8, 2026

Linux Foundation、AIエージェントに信頼できる身元を与える新標準「Agent Name Service」を発表

概要 Linux Foundationは、インターネット上で活動するAIエージェントに信頼できる識別子と名前を与える新しいオープンソース標準「Agent Name Service(ANS)」の立ち上げ意向を発表した。既存のDNS(ドメインネームシステム)インフラを拡張することで、中央集権的な管理者を置かない形でAIエージェントに関する認証・信頼・ガバナンス・相互運用性の課題解決を目指す取り組みだ。Cloudflare、シスコ、セールスフォースなど複数の企業がこの立ち上げに賛意を示している。 解決しようとしている課題 近年、AIエージェントが自律的にコードを生成したり、システムの運用タスクを実行したりする場面が急速に増えている。しかし現状では、あるエージェントがどの組織や人物によって提供されているのかを検証する仕組みや、生成されたコードやシステム操作の履歴が実際にそのエージェント自身によって実行されたものかを確認する仕組みが整っていない。ANSは、AIエージェントに対してインターネット規模で分散された自律的なアイデンティティ層を確立することで、こうした身元不明・出所不明のエージェントが引き起こす認証やガバナンス上の問題に対応しようとしている。 技術的な仕組み ANSの特徴は、単一のアイデンティティ方式に依存せず、複数の識別システムに対応する設計になっている点だ。具体的には、既存のDNSに加えて、分散型識別子であるDID(Distributed Identity)、法人や取引主体を識別するLEI(Legal Entity Identifier)といった仕組みとの連携を予定している。これにより、企業や組織はすでに導入済みのアイデンティティ管理基盤を活かしながら、AIエージェントの身元確認の仕組みにスムーズに統合できるようになる。DNSという広く普及した既存インフラを土台にすることで、特定のベンダーやプラットフォームに縛られない、相互運用性の高い基盤を目指している点も特徴だ。 今後の展望 Linux Foundationによる本標準の立ち上げには、Cloudflareやシスコ、セールスフォースといった大手企業がすでに賛同を表明しており、業界横断的な取り組みとして進められる見通しだ。AIエージェントが企業システムやインターネットサービスと自律的にやり取りする機会が今後さらに増えることが予想される中、ANSのような信頼できる身元基盤の整備は、なりすましや不正なエージェントによるリスクを抑えつつ、AIエージェント同士やエージェントと人間との安全な連携を支える重要な基盤になると期待される。

July 8, 2026

Oracle E-Business SuiteのPaymentsに深刻な脆弱性、パッチ公開後も攻撃継続し900台超が露出

概要 Oracle E-Business Suite(EBS)の支払処理モジュール「Oracle Payments」に存在する重大な脆弱性CVE-2026-46817が実際に悪用されていることが明らかになった。脅威インテリジェンス企業Defusedによると、6月27日、自社のOracle EBSハニーポットに対して同脆弱性を突く攻撃を観測したという。Shadowserver Foundationの調査では、インターネット上に公開されているEBSインスタンスは約950台に上り、その多くが米国に所在しているが、これらのインスタンスがすべて脆弱であるか、あるいはパッチ適用済みかは不明だとしている。Oracleは今回の脆弱性についてまだ「実際に悪用されている」と公式には認定していない。 脆弱性の技術的詳細 CVE-2026-46817はOracle E-Business Suite内のPaymentsコンポーネントに含まれる「File Transmission」機能に存在する欠陥で、CVSSスコアは最大値に近い9.8(Critical)と評価されている。権限を持たない攻撃者がHTTP経由のネットワークアクセスのみで、低い攻撃難易度のもとシステムを乗っ取れる点が特徴で、認証を必要としない点が被害拡大の一因となっている。The Registerの報道によれば、影響を受けるのはリリース12.2.3から12.2.15までのバージョンで、任意のファイルを読み取られる恐れがあるという。 攻撃のタイムラインと手口 Oracleは2026年5月のCritical Patch Update(定例パッチ)で本脆弱性を修正済みだったが、Defusedが最初に攻撃を確認したのはパッチ公開から約6週間後の6月27日で、しかもこれは脆弱性を突く公開エクスプロイトコードが出回るよりも前のタイミングだった。観測された攻撃は単一の攻撃元から6回の悪用試行が行われ、いずれも動作する実証コードを用いたものであり、無差別なスキャンというよりも機密ファイルを狙った標的型の手口だったとDefusedの研究者は分析している。研究者らは、攻撃者がOracleのセキュリティパッチをリバースエンジニアリングしたか、あるいは独自に非公開のエクスプロイトを保有していた可能性を指摘している。今回の事案は、重要なセキュリティアップデートがそれを解析する準備のある攻撃者にとってはロードマップにもなり得ることを改めて浮き彫りにした。 背景と今後の展望 Oracle製品を狙った攻撃はこれが初めてではない。過去にはShinyHuntersグループがPeopleSoftのゼロデイ脆弱性を悪用して100以上の組織を侵害した事例や、ランサムウェアグループClopがEBS顧客を標的に数ヶ月にわたるキャンペーンを展開した事例があり、今回の一件もこうした流れの延長線上にあると位置づけられている。なお、CISAの「既知の悪用された脆弱性」カタログには2021年11月以降、Oracle製品の脆弱性がすでに44件登録されており(うち13件はランサムウェアグループにも悪用された)、同社製品を狙った攻撃が高止まりしている実態を裏付けている。パッチ未適用のEBSインスタンスを持つ組織は早急な対応が求められる状況だ。

July 8, 2026

サムスン電子、AIメモリー特需で四半期営業利益19倍の過去最高も株価は急落

概要 サムスン電子は2026年4-6月期(第2四半期)の営業利益予想を発表し、前年同期の4兆6,800億ウォンから約19倍(1,800%増)となる89兆4,000億ウォン(約584億ドル)に達したと明らかにした。これはテクノロジー企業として四半期ベースで過去最大の営業利益であり、3四半期連続の最高値更新となる。売上高も171兆ウォンと前年の74兆5,700億ウォンから2倍以上に拡大し、前年比では129%の増収となった。前四半期(1-3月期)からも営業利益は約56%増加しており、AI向け半導体メモリーの需給逼迫が業績を大きく押し上げた形だ。 一方で好決算の発表にもかかわらず、サムスン電子の株価は急落した。取引時間中には一時10%超下落し、終値でも前日比7%近く下げて引けた。この影響で同社の時価総額は1,000億ドル(約875億ユーロ)超が失われ、競合のSKハイニックスや韓国総合株価指数(KOSPI)も連れ安となった。サムスン株は2026年に入ってから既に2倍以上に上昇していたため、好材料の織り込み済みによる利益確定売りが下落の一因とみられる。 技術的な詳細 今回の利益急増の背景には、メモリー価格の大幅な上昇がある。Citi Researchの分析によれば、DRAMの契約価格は四半期比で約44%上昇し、NANDフラッシュメモリーも約53%上昇した。特に高帯域幅メモリー(HBM)は最も収益性の高いセグメントとなっており、サムスン電子は2025年9月にNvidiaのHBM3E(12層積層)品質認証を取得するという重要な節目を達成していた。これは従来課題となっていた熱性能の問題を克服した成果であり、AI向けメモリー市場での競争力強化につながっている。 AIサーバー向けメモリー需要は、これまでの学習(トレーニング)用クラスタだけでなく推論(インファレンス)インフラにも拡大しており、これが汎用DRAM・NANDとプレミアム品であるHBMの両方で供給不足を招いている。競合のMicronも売上高が4倍に増加するなど、同様の需給逼迫パターンが業界全体で見られる。なお、今回の業績見通しには数十兆ウォン規模の賞与引当金が含まれており、調整後の実質的な営業利益は100兆ウォンを上回っていたとの指摘もある。 投資家の懸念と今後の見通し 好決算にもかかわらず株価が下落した最大の要因は、売上高がアナリスト予想の173兆ウォンをわずかに下回ったことにある。Morningstarのアナリスト、Jing Jie Yu氏は「今回のわずかな売上未達は、予想より緩やかだったDRAM価格上昇によるところが大きく、この分野の構造的な強さを織り込みつつあった投資家を動揺させた可能性がある」と分析している。 投資家の懸念の根底には、テクノロジー企業が巨額のAIインフラ投資を、確実なリターンが見通せないまま負債を積み増して続けられるのかという疑問がある。今回のAI関連メモリー特需が持続的な構造変化なのか、それとも周期的なメモリー市場のピークの再来に過ぎないのかを見極めようとする動きが、株価の乱高下という形で表れていると言える。

July 8, 2026

Adobe ColdFusionの最大深刻度パストラバーサル脆弱性、パッチ公開からわずか2時間で実悪用が判明

概要 Adobeは2026年7月1日、ColdFusionとCampaign Classicに存在する最大深刻度(CVSS 10.0)の脆弱性7件を含むセキュリティアップデートを公開した。中でも注目されているのがColdFusionのパストラバーサル脆弱性CVE-2026-48282で、認証なしでリモートからの任意ファイル書き込みが可能というものだ。KEVIntelの創業者Ryan Dewhurst氏によると、この脆弱性はパッチ公開からわずか2時間以内に、同氏が運用するグローバルハニーポットネットワーク上で実際の悪用が観測されたという。Shadowserverの調査では、インターネット上に露出しているColdFusionインスタンスが約800台確認されており、パッチ未適用の環境は深刻なリスクにさらされている。 修正された脆弱性の詳細 今回のアップデートでは、ColdFusionに6件、Campaign Classicに1件、合計7件のCVSS 10.0の脆弱性が修正された。ColdFusion側の内訳は、危険な種類のファイルの無制限アップロードを許してしまうCVE-2026-48276とCVE-2026-48283、不適切な入力検証に起因しリモートコード実行につながるCVE-2026-48277・CVE-2026-48281・CVE-2026-48316、そして任意ファイル書き込みを許すパストラバーサル脆弱性CVE-2026-48282である。これらはいずれも特権を持たない攻撃者が、ユーザー操作を必要とせず低い攻撃複雑度で悪用できる点が特徴だ。このほかCVSS 9.3の任意ファイル読み取り(CVE-2026-48313)と権限昇格(CVE-2026-48315)も修正されている。影響を受けるのはColdFusion 2025.9および2023.20以前のバージョンで、それぞれColdFusion 2025 Update 10、2023 Update 21で修正済みだ。Campaign Classic側では、不適切な認可に起因し任意コード実行を許すCVE-2026-48286(CVSS 10.0)が修正されたが、こちらはオンプレミス展開のみが影響を受け、Adobeがホストするインスタンスは既にパッチ適用済みとなっている。 実悪用の状況 Adobeは今回のアップデートを全てPriority 1(悪用リスクが高い脆弱性への対応を要する最優先区分)に分類し、管理者に対して「72時間以内」のアップデート適用を強く推奨していた。当初Adobe自身は「これらの脆弱性が実際に悪用されている事実は確認していない」としていたが、その直後にCVE-2026-48282を狙った攻撃が現実のものとなった。インド発とみられるIPアドレスからのファイルシステム読み取りを狙った悪用試行が確認されているほか、Ryan Dewhurst氏はパッチ公開後2時間というごく短時間でハニーポットへの攻撃が捕捉されたと警告している。Shadowserverによれば、約800台のColdFusionインスタンスがオンラインで露出した状態にあるが、この中にどれだけのハニーポットや、既に緩和策が講じられたシステムが含まれるかは不明だとしている。 今後の対応 カナダのサイバーセキュリティセンター(CCCS)は、ユーザーと管理者に対し、進行中の攻撃から自システムを守るため速やかなアップデート適用を呼びかけている。また、Adobeは今回のアップデートに合わせて、セキュリティ情報の公開頻度を見直す方針も発表した。2026年7月14日以降、これまで月1回だったセキュリティ情報の公開を、毎月第2・第4火曜日の月2回に増やすとしており、脆弱性対応の迅速化を図る狙いがあるとみられる。今回のように公開直後から実悪用が始まるケースが相次いでいることを踏まえると、ColdFusionやCampaign Classicの管理者は本アップデートの適用状況を早急に点検する必要がある。

July 7, 2026

DeepSeek生成マルウェアがChromiumのFile System Access APIを悪用、ブラウザ完結型ランサムウェアを初確認

概要 イスラエルのセキュリティ企業Check Point Researchは、中国のAIモデル「DeepSeek」を使って生成されたマルウェアが、Chromium系ブラウザの「File System Access API」を悪用し、ブラウザの中だけでファイルを暗号化する新型ランサムウェア手法を実現していたことを明らかにした。このマルウェアは「InfernoGrabber v9.0」と名付けられたPython Flaskアプリケーションで、2026年1月25日にVirusTotalへアップロードされていたことが確認されている。これまで理論上のリスクにとどまっていた「ブラウザ完結型ランサムウェア」を、AIが実用的な攻撃チェーンへと初めて橋渡しした事例だとされる。 悪用されたAPIと攻撃の仕組み File System Access APIは、ユーザーが明示的に許可した場合にウェブサイトがローカルフォルダ内のファイルを直接読み書きできるようにするブラウザネイティブの機能である。InfernoGrabberは、Discord風のアバターAIアップスケーラーを装ってユーザーをフィッシングし、このAPI経由でファイルシステムへのアクセス権を取得すると、ローカルフォルダのファイルを列挙・読み取り、内容を暗号化した上で上書きし、恐喝メッセージを表示する。ネイティブなペイロードのインストールやブラウザ自体の脆弱性、ルート権限は一切不要である点が特徴で、従来のランサムウェアとは異なる感染経路を持つ。 このマルウェアは暗号化機能に加え、Discordトークンの窃取、クレジットカード番号や暗号資産のシードフレーズの収集、キーストロークロギング、ウェブカメラ・マイクの不正監視といった多機能を備え、WinLocker風のランサムウェア画面を表示してビットコインでの支払いを要求する。窃取したデータはハードコードされたDiscordのwebhookを通じて外部に送信される仕組みだった。 影響を受ける範囲 この攻撃はChromiumベースのブラウザを搭載するWindows、macOS、Linux、AndroidおよびWindows版Microsoft Edgeで動作が確認されており、iOSのみ再現できなかったという。Check Point Researchのマルウェア分析チームを率いるPedro Drimel Neto氏は、この結果について、攻撃面が当初の想定より広く、デスクトップおよびAndroidユーザーの大多数に影響し得ると指摘している。 DeepSeekが悪用された背景 研究者によれば、攻撃者がDeepSeekを選んだ理由は、Anthropic・Google・OpenAIといった西側企業のモデルと比較して悪意あるサイバー攻撃関連のリクエストに対する拒否率が低く、ウェブインターフェース経由で無料アクセスできる点にある。さらに「単一の広範なプロンプト」から完全に機能するマルウェアを生成できる効率性も指摘されており、研究者は「DeepSeekモデルは高度な悪意あるアイデアを、競合プラットフォームよりも少ない専門知識で具体的な攻撃コードへ変換できる」と述べている。 今後の影響と対応 Check Point Researchの研究部門責任者Eli Smadja氏は、「初めて、AIモデルが正当なプラットフォームの機能から独立的に攻撃手法を推論し、人間がこれまで理論化するにとどまっていた実用的な攻撃技術を発見した証拠を得た」と強い警告を発している。同氏は、複雑な攻撃を実行するための技術的障壁が崩壊しつつあり、AIセキュリティの将来を「モデルが明白な悪意あるリクエストを拒否すること」への期待だけに依存させることはできないと指摘する。現時点でこの手法が実際の攻撃キャンペーンで悪用された痕跡は確認されていないものの、脅威アクターの関心の高さから今後の悪用拡大が懸念されている。Check Point Researchは対策として、配信層でのセキュリティ強化、権限ベースの信頼体制の見直し、そしてブラウザが表示する権限リクエストのプロンプトすべてをセキュリティ上の重要な判断として扱うことを推奨している。

July 7, 2026

Microsoft、4,800人削減とXbox大再編を発表 スタジオ4つを独立・売却へ

概要 Microsoftは2026年7月6日、全従業員の約2.1%にあたる4,800人規模の追加人員削減を発表した。最も大きな打撃を受けたのはXbox部門で、1,600人が削減対象となった。Xbox部門では2027会計年度末(2027年6月30日)までに合計約3,200人が削減される見込みで、うち1,600人は今回の4,800人削減に含まれ、残る約1,600人が2027会計年度中に順次削減される。今回の発表は一連のリストラの一部に過ぎない。Xbox CEOのAsha Sharma氏はこれを「Xbox史上最大の再編成」と表現し、「我々のビジネスは健全ではない」と自ら認める異例のコメントを残した。同氏はまた、ゲーム業界全体が「歴史上最も深刻なハードウェア危機に直面している」と指摘しており、ゲーム機のハードウェアコスト高騰が業績を圧迫している実態が背景にあるとみられる。 Xbox部門の組織改革 今回の再編では、Xbox部門の意思決定構造そのものにもメスが入る。現状14階層にも及ぶ管理層を最大5階層(理想的には3階層)にまで圧縮する方針が示された。あわせて、Helen Chiang氏がコンテンツ・ハードウェア・プラットフォーム・サービス部門の損益責任を一手に担う新設の最高執行責任者(COO)に就任する。組織のスリム化と権限の一元化を同時に進めることで、意思決定の迅速化とコスト構造の見直しを図る狙いとみられる。 スタジオのスピンオフ・売却 再編の中でも特に注目されるのが、傘下ゲームスタジオの扱いだ。Compulsion GamesとDouble Fine Productionsの2社は独立した企業として再びMicrosoftの傘下を離れることになる。一方、Ninja TheoryとUndead Labsについては新たな所有者への移行が進められる予定で、いずれも進行中のプロジェクトを完成させるための資金が付与されるという。これにより、Microsoftは開発リソースを『Minecraft』のMojangや『Candy Crush』のKingといった主力タイトルを抱えるスタジオへ集約する方針を鮮明にしている。 背景と今後の見通し Microsoftの最高人事責任者であるAmy Coleman氏は、今回の一連の職務変化について「AIによる置き換えではなく自動化によるもの」との立場を強調した一方で、「業務の自動化が進む中、全従業員が継続的にスキルを習得していく必要がある」とも述べている。ハードウェアコストの高騰や市場環境の厳しさを背景に、Xboxはコンソール事業からコンテンツ・サービス中心の事業モデルへとさらに舵を切りつつあるとみられ、今後も追加のリストラや事業再編が続く可能性がある。

July 7, 2026

VS Code 1.127リリース、ブラウザ操作エージェントがGAへ ターミナルのサンドボックス実行も追加

概要 Microsoftは2026年7月1日、Visual Studio Codeの最新版となる1.127をリリースした。今回のアップデートでは、AIエージェントによるブラウザ操作機能が正式版(GA)となったほか、サイトごとのブラウザ権限管理、macOS/Linux向けターミナルコマンドのサンドボックス実行、複数チャットセッションの整理機能など、AIエージェントを軸にした開発体験の強化が中心となっている。 ブラウザ操作機能のGA化とサイトごとの権限管理 エージェントが統合ブラウザ上でWebアプリをビルド・テストできる機能が、設定workbench.browser.enableChatToolsのもとで正式提供された。この機能により、エージェントは外部のMCPサーバーを介さずに、スクリーンショットの取得、ページ内要素の選択、テキスト入力、ページ遷移といった操作を直接実行できる。 これに合わせて、サイトごとのブラウザ権限設定も新たに導入された。位置情報、カメラ・マイク、加速度計・ジャイロスコープ、クリップボード、Bluetooth・USB・シリアル・HIDといった各種Web APIへのアクセスについて、サイトごとに許可・ブロックを選択でき、「Site Permissions」メニューから一元管理できる。 ターミナルのサンドボックス実行とAgentsウィンドウの改善 セキュリティ面では、macOSおよびLinux環境において、エージェントが実行するターミナルコマンドをサンドボックス内で実行できるようになった。ネットワークアクセスのブロックやファイルシステムアクセスの制限を伴う環境でコマンドを動かすことで、サンドボックス外での実行が必要な場合にのみ承認を求める仕組みとなり、これまで頻発していた承認プロンプトを削減しつつ安全性を確保している。 Agentsウィンドウでは、関連するセッションをグループ化してヘッダーで折りたたんだり、ドラッグ&ドロップで並び替え・グループ追加・ピン留めを行えるようになった。また、1つのエージェントセッション内で複数の独立したチャットを同時に実行できるようになり、各チャットの進捗や変更内容がまとめて集約表示される。CI失敗やプルリクエストのコメントに対しては、チャット入力欄上部に表示される「Chat input banner」から直接対応できるほか、コード行にホバーすると表示される「Add Feedback」グリフを使って、エージェントへのフィードバックをインラインコメントとして挿入することも可能になった。 今後の展望 このほか、サブエージェントが消費したAIクレジットをホバー表示で確認できるコスト管理機能や、カスタム指示が無視される原因や応答遅延を診断する/troubleshootコマンドも追加された。エンタープライズ向けには、managed-settings.jsonによるCopilot設定のファイルベース配信や、BrowserChatTools・ChatAgentNetworkFilterといったポリシーによるブラウザツール制御機能も強化されており、組織単位でのAIエージェント機能の管理・統制がより容易になった。なお、組み込みのOllamaプロバイダーは非推奨となり、公式拡張への移行が推奨されている。一連の変更から、VS Codeがエージェントによる自律的な開発作業を前提に、安全性と管理性を両立させる方向へ舵を切っていることがうかがえる。

July 7, 2026

国連初の「AIガバナンスに関するグローバル対話」開幕、グテーレス事務総長「人類の未来をAIに“vibe-code”させるな」と警鐘

概要 国連が主催する初の「AIガバナンスに関するグローバル対話」が7月6日、スイス・ジュネーブで開幕した。「グローバル・デジタル・コンパクト」に基づいて設立されたこの枠組みには、各国政府、テック企業、研究者、市民社会が参加し、7日までの2日間にわたってAIの安全性、説明責任、アクセス格差、能力構築、国際協調といったテーマを議論する。開幕演説に立ったグテーレス国連事務総長は、AI技術そのものに人類の未来を「vibe-code」させてはならないと述べ、各国に国際的なガバナンス体制の構築を急ぐよう呼びかけた。 グテーレス事務総長の警告と提言 グテーレス氏は、AIが「暴走的な速度」で進化する中、「私たちの社会そのものを対象に、計画も同意もないまま実験が行われている」と警告した。AIシステムがコードを書き、オンラインで行動し、人間の監視がますます及ばない形で意思決定を下すようになっている一方、既存の国際機関は「命令に従う機械」を統治するために作られたものであり、「自ら判断する機械」に対応できていないと指摘した。その上で同氏は、子どもがアクセスできるAIシステムの安全性を企業に証明させる「AI子ども安全プレッジ」の導入、途上国のAI能力構築を支援する「グローバルAIファンド」の創設、2030年までにデータセンターを再生可能エネルギーで稼働させることによるAIの気候影響の低減、という3つの優先課題を提示した。 科学者パネルの評価とAI格差への懸念 対話には、チューリング賞受賞者でUN独立国際科学パネルの共同議長を務めるヨシュア・ベンジオ氏や、共同議長のマリア・レッサ氏も出席した。ベンジオ氏は「AIの能力が今後も向上し続けた場合、それが破滅的な被害をもたらさないという科学的な保証は現時点では存在しない」と述べ、安全策の整備が技術の進歩に追いついていない現状に警鐘を鳴らした。レッサ氏は偽情報の拡散を「情報のアルマゲドン」と表現し、恐怖や怒り、憎悪を含んだコンテンツをAIが拡散すると、それが爆発的に広がってしまうと指摘した。同パネルが7月1日に公表した初の報告書も、「AIの能力は科学的理解や各国政府の対応能力を上回るスピードで進歩しており、深刻または破滅的な被害のリスクは今なお排除できない」と結論づけている。加えて、AI開発が米国と中国に集中している現状についても懸念が示され、先進国と巨大テック企業がインフラ・データ・投資・専門知識の大部分を握る一方、途上国は海外のモデルやプラットフォームへの依存を強いられるリスクがあるとされた。 今後の展望 グローバル対話は、並行して開催されている「AI for Good グローバルサミット」やWSISフォーラム2026とも連携しながら進められる。今回の対話では拘束力のある合意には至らないものの、国連は各国・企業・市民社会が共通の指針を持てる「普遍的なガードレール」の策定を目指す方針を示しており、今後の国際交渉の土台になるとみられる。193の加盟国が参加する枠組みとして、AI規制を巡る多国間協調がどこまで実効性を持つかが今後の焦点となる。

July 7, 2026