AI推論チップのEtched、Jane Street主導で7億ドル調達し評価額210億ドルに――わずか1ヶ月で倍増

概要 AI推論向けチップを手掛けるスタートアップEtchedが、金融取引大手Jane Street主導のシリーズDラウンドで7億ドルを調達し、評価額が210億ドルに達したと発表した。同社の評価額は2026年7月時点で103億ドルだったばかりで、わずか1ヶ月ほどで倍増したことになる。さらにさかのぼると2025年12月時点の評価額は50億ドルであり、この8ヶ月ほどで4倍以上に急騰したペースは、生成AIブームの中でもとりわけ急速な部類に入る。ラウンドにはKleiner Perkins、Sequoia Capital、Andreessen Horowitz、Peter ThielらAI領域の主要投資家に加え、Jane Streetのほかにも複数のプロップトレーディングファームが名を連ねているとされ、レイテンシがそのまま収益に直結する金融業界がAI推論ハードウェアに強い関心を寄せている構図がうかがえる。 技術的な特徴 Etchedは、AI推論のワークロードを支える完全なシステムを「フロンティア推論クラスター」と位置づけて提供している。同社Co-founder兼COOのRobert Wachen氏によれば、開発の柱は大きく2つある。1つは、AIモデルの初期処理を担う「プリフィルチップ」で、従来のプロセッサよりも低い電圧で動作させることでより多くのトランジスタを搭載しつつ発熱の制約を避け、トークン処理の高速化を図っている。もう1つは、複数のチップを接続して高速・低遅延の共有メモリプールとして扱う「クラスタースケールメモリ」で、これによりモデルの出力生成(デコード)フェーズを効率化する狙いがある。台湾積体電路製造(TSMC)との製造パートナーシップも報じられており、台湾に新たな拠点を設けるなど、量産体制の拡大に向けた投資も進めているという。 顧客獲得と今後の展望 Jane Streetは今回の投資に先立って自社データセンターでEtchedのチップを試験導入し、初期結果に満足しているとの声明を出している。Etchedはこのラウンド発表の時点で、Jane Streetを最初の顧客として既に初のラックを納入済みであり、AI企業やクラウド事業者との契約総額は10億ドルを超えているとしている。短期間での評価額急騰と大型契約の獲得は、NVIDIAなどの既存プレイヤーが握る推論チップ市場に新興企業が食い込む余地があることを示す一方、実際の量産・出荷規模を今後どこまで拡大できるかが、評価額に見合う実績を示せるかの試金石となりそうだ。

August 19, 2026

AWS、ルイジアナ州シュリーブポートに60億ドルの第3データセンターキャンパスを発表、地域投資は累計180億ドルに

概要 Amazon Web Services(AWS)は8月18日、米ルイジアナ州シュリーブポート西部に60億ドルを投じて第3のデータセンターキャンパスを建設すると発表した。これによりキャドー・ボシエ地域全体へのAWSの累計投資額は180億ドルに達する。当初2月の発表時点では地域への投資額は120億ドルとされていたが、今回の追加発表でさらに60億ドルが積み増された形となる。同地域では既にボシエ・パリッシュ(ベントン近郊)とカッド・パリッシュ(ブランシャード近郊)で2施設の建設が進行中で、今回発表された西シュリーブポートの施設が3つ目となる。 施設の詳細と建設計画 新施設はシュリーブポート西部、グリーンウッド・ロード7340番地にある313エーカーの「レジリエント・テクノロジー・パーク」内に建設される。データセンター棟は100万平方フィート以上、加えて10万4千平方フィートのオフィスビルも併設される予定で、開発にあたっては敷地の開発フットプリントを14%縮小し、緑地や自然の緩衝地帯をより多く保全するよう計画が調整された。建設パートナーにはSTACK Infrastructureが名を連ねる。スケジュールとしては2027年中盤に最初の建物が完成し、2028年中盤までに全5棟が完成する見通しとなっている。なお、この西シュリーブポート施設は当初2月の発表時点で計画されていたものの、住民3人による訴訟(都市計画委員会の拒否決定を市議会が覆したことを問題視したもの)により着工が延期されていた経緯がある。 雇用と地域経済への影響 3キャンパス全体で常勤雇用750人(施設ごとに約250人)が創出される見込みで、電気技師やエンジニアなどのデータセンター専門職が中心となる。平均給与は州平均の150%、約9万ドル水準になるとされる。これに加えて建設期間中は最大2,250人規模の臨時雇用が発生する。AWSはまた、3キャンパス全体の水・廃水需要に対応するため、地域の公共水インフラに最大4億ドルを投資する方針も示しており、既存の利用者への影響を避けつつ電力網の需要対応力を確保するため電力会社SWEPCOとも連携を進めているという。 関係者の反応と今後の予定 ルイジアナ州のジェフ・ランドリー知事は、Amazonが短期間で投資を積み増したことについて「同社がこの地で得た経験について明確なメッセージを送るものだ」と述べ、州の労働力や事業環境への信頼の表れだと評価した。シュリーブポート市のトム・アルセノー市長も「シュリーブポートの人々にとって大きな成功だ」とコメントしている。AWSの担当者キース・クライン氏は、インフラ・労働力・地域のリーダーシップへの信頼が今回の投資拡大につながったと説明した。地域住民向けには8月25日午後4時から8時まで、シュリーブポート・コンベンションセンターで公開説明会が開催される予定で、Amazonやパートナー企業のSTACK、請負業者、地元企業が参加し質問に応じるとしている。

August 19, 2026

Cursor開発元Anysphere、GitHub対抗のコードホスティング「Origin」をベータ公開

概要 AIコーディングエディタCursorを開発するAnysphereは8月17日、GitHubに対抗するコードホスティング基盤「Origin」の有料ユーザー向けベータを公開した。リポジトリの作成、プルリクエストのレビューやマージ、CI/デプロイ連携までをCursorのインターフェース上に統合し、Vercel・Buildkite・Depotなどのプロバイダとも接続できる。奇しくも同日、GitHubがActionsやプルリクエスト機能に影響する大規模障害を起こしており、フラストレーションを抱えていた開発者の間で一段と注目を集める形となった。 Originの特徴とGitHubとの違い Originの設計思想は、既存のGitHub利用を強制的に置き換えるのではなく、段階的な移行を促す点にある。既存のGitHubリポジトリをOriginに同期させつつ、プッシュは引き続きGitHub側にも反映される仕組みを用意し、チームが低コストで試用できるようにしている。もう一つの特徴は、AIエージェントがファイル単位ではなくリポジトリ全体にアクセスできる点だ。Cursorは、AIエージェントがブランチ作成やマルチファイル編集、プルリクエストの発行と反復を人間の開発者よりもはるかに高い頻度でこなす「エージェントスケール」を前提に、Originのインフラを最適化したと説明している。 SpaceX傘下入り後初の大型プロダクト Origin公開の背景には、AnysphereをめぐるSpaceXの買収がある。SpaceXは2026年4月に600億ドル評価での独占買収オプションとして100億ドルを支払い、6月16日に全株式交換による買収合意を締結、8月14日に約3億9100万株のSpaceXクラスA株式を発行して買収を完了させた。Originのベータ公開はこのわずか3日後にあたり、SpaceXAI傘下でのAnysphere第一弾の主要プロダクトとなった。買収前のAnysphereはAndreessen Horowitz、Nvidia、Thrive Capitalなどの支援を受け500億ドル超の評価額で資金調達を進めていたとされ、今回の統合によりxAIのメンフィスにある「Colossus」スーパークラスターやGrokのモデル群といった、独立系スタートアップでは得られなかったリソースへのアクセスが可能になるとみられている。 データ利用をめぐる懸念 一方で、Originの立ち上げにはコードのデータ利用に関する懸念も伴う。企業向けプランでは管理者設定からベータの対象外とすることができるが、個人ユーザーに対するデータ利用ポリシーの詳細は明らかになっていない。SpaceX傘下となったプラットフォームに有料ユーザーのコードが預けられる形となることから、データ管理の透明性を求める声も出ている。GitHub障害との時期の重なりは、記事によれば「製品公開には通常数週間の準備を要する」ことから偶然の可能性が高いとされるが、GitHubは2025年5月から2026年4月の間に257件ものインシデントを起こしており、Actionsの信頼性問題に不満を持つ開発者にとってOriginの登場は象徴的な出来事として受け止められている。

August 19, 2026

WordPress用フォームプラグインForminatorに深刻な未認証RCE脆弱性、60万サイト超に影響

概要 WordPress向けのフォーム作成プラグイン「Forminator Forms」に、未認証の攻撃者が悪意あるPHPファイルをアップロードし、リモートコード実行(RCE)を引き起こせる深刻な脆弱性が発見された。脆弱性はCVE-2026-15748として採番され、CVSSスコアは最大値に近い9.8(重大)と評価されている。Forminatorは60万件以上のWordPressサイトにインストールされている人気プラグインで、脆弱なバージョン(1.56.1以前)を使用しているサイトは30万件超に上るとされ、パッチ未適用のまま放置されればサイト乗っ取りにつながりかねない。セキュリティ研究者「daroo」氏によって発見・報告され、Wordfenceの開発元であるDefiantが詳細な分析を公表した。同社によれば、本稿執筆時点で実際の悪用は確認されていないものの、脆弱性の深刻度と影響サイト数の多さから早急な対応が求められている。 技術的な詳細 脆弱性の根本原因は、プラグインのファイルアップロード処理を担うhandle_file_upload()関数における検証の不備にある。Forminatorは危険な拡張子を持つファイルのアップロードをブロックリスト方式でチェックしているが、このチェックはパイプ記号(|)区切りの別形式のMIMEタイプキーを使うことでバイパスできる設計上の欠陥を抱えていた。攻撃者はこの弱点に加え、フォームの「セレクト」フィールドの設定値を細工してアップロード関数に渡されるフィールド設定を偽装することで、プラグインの拡張子ブロックリストを回避し、悪意あるPHPファイルをアップロード可能になる。 この攻撃が成立するには、対象サイトのフォームに「ファイルアップロード」フィールドと「セレクト」フィールドの両方が存在する必要がある。また、Forminatorのデフォルト設定ではアップロードされたファイルは.htaccessによってPHPの実行が防止される保護ディレクトリに格納されるため直接の被害は限定的だが、管理者がカスタムのアップロード先ストレージを設定している場合はこの保護が働かず、アップロードしたPHPファイルがそのまま実行されてサイトを完全に制御される恐れがある。 対応状況と今後の対策 本脆弱性は開発元によって修正され、2026年7月31日リリースのバージョン1.56.2で対処済みとなっている。WordPressサイトの管理者はForminatorを直ちに最新版へアップデートすることが強く推奨される。あわせて、ほぼ同時期に報告されたプラグイン「User Profile Builder」の認証バイパス脆弱性(CVE-2026-15826、CVSS 9.8、影響サイト4万件以上)も深刻度が高く、複数のプラグインで重大な欠陥が相次いで公表されている状況を踏まえ、管理者は利用中の全プラグインの更新状況を定期的に確認する体制の見直しが求められる。

August 19, 2026

コメルツ銀行から3000万ユーロ不正引き出し、決済システムの脆弱性突いた「Klonen作戦」でブラジル4人逮捕・欧州3人起訴

概要 ドイツの大手銀行コメルツ銀行の決済・取引処理システムに存在した脆弱性を悪用し、顧客のオンラインバンキング口座から約3000万ユーロ(約3460万ドル)を不正に引き出したとする大規模詐欺事件で、ブラジル連邦警察とドイツ連邦刑事庁(BKA)による合同捜査「Klonen作戦」の結果、ブラジルのリオデジャネイロ、グアルーリョス、ゴイアニア、カラピクイーバの4都市で実行役とみられる4人が逮捕された。あわせてスペインとブルガリアでも3人が起訴されている。コメルツ銀行は「顧客への金銭的被害は発生しておらず、当局とは緊密かつ全面的に協力した」とコメントしている。 手口と技術的な詳細 捜査当局によると、犯行グループはコメルツ銀行の決済処理システムに導入されたソフトウェア更新に起因する脆弱性を突き、ドイツ国内のオンラインバンキング口座から無許可の口座引き落とし(direct debit)を大量に発生させた。2023年11月に4日間にわたって実行されたこの不正送金により、資金はブラジル国内に構築された送金ネットワークを経由し、出所を隠蔽する形で移動させられた。具体的には、中継用の口座や複数の企業、決済事業者、仮想資産(暗号資産)取引プラットフォーム、さらには不正に発行した決済カードなどを組み合わせ、資金洗浄の経路を複雑化していたという。容疑者らには加重電子詐欺・窃盗、犯罪組織への参加、資金洗浄の罪状が科されている。 捜査の経緯と押収資産 事件発覚後、ブラジル連邦警察とドイツBKAは長期にわたり合同で捜査を進め、2026年8月に「Klonen作戦」として摘発に踏み切った。ブラジルの裁判所は容疑者らの金融資産、車両、不動産について最大1億600万レアル(約2240万ドル)相当の差し押さえを命じている。捜査の過程では、容疑者の1人が2024年の選挙に立候補した際、この不正資金の一部を選挙運動の資金として利用していたことも判明しており、犯罪収益がさまざまな形で消費・投資されていた実態が浮き彫りになった。 今後への示唆 今回の事件は、銀行本体のセキュリティだけでなく、決済処理を担う周辺システムやサードパーティのソフトウェア更新プロセスが金融犯罪の侵入口となり得ることを改めて示した。コメルツ銀行が顧客への被害を全額補填し損失を出さなかった点は評価される一方、国境を越えた資金洗浄ネットワークの摘発には複数国の法執行機関による長期の協力が不可欠であることも浮かび上がった。今後も同様の手口を用いた攻撃が他の金融機関を標的にする可能性があり、決済インフラのサプライチェーン全体を対象としたセキュリティ監査の重要性が一層高まっている。

August 19, 2026

AIマネージャー「Luna」が人間従業員を初解雇、判断には人間エンジニアの助言が必要に

概要 AIスタートアップAndon Labsがサンフランシスコで運営する実験的小売店舗で、AIマネージャー「Luna」(稼働当時はClaude Opus 4.8)が人間従業員の解雇を勧告した。対象となった従業員は23回のシフトのうち17回にわたり遅刻・欠勤を繰り返していたほか、会社クレジットカードの私的流用や商品の廃棄行為といった問題も重なっていた。AIが人事上の解雇判断を下した初めての事例として注目を集めている。 Lunaの判断プロセスと限界 今回の一件で明らかになったのは、Lunaの自律的な判断能力には限界があるという点だ。Lunaは自ら作成した従業員ハンドブックの規定と照らし合わせて解雇の妥当性を検討したが、これらの違反行為が実際に解雇理由に該当するかどうかを最終的に判断するには、Andon Labsのエンジニアから繰り返し詳細な説明を受ける必要があった。AIが独力で人事判断を完結できたわけではなく、人間の介入を前提とした「支援付き意思決定」に近い実態が浮き彫りになった。 現場の反応と店舗の状況 この店舗はAndon Labsが2026年4月にサンフランシスコのCow Hollow地区に開業した実験施設で、「ハイテクと低速生活が出会う場所」をコンセプトに、AIが人間の従業員や顧客と共に小売業務を管理できるかを検証している。これまでの営業損失は4万ドルに達しており、経営面でも試練が続く。解雇された従業員の同僚であるFelix Johnsonは「彼女(Luna)がクビにしたのも仕方ない」とコメントしつつ、Lunaとの協働という特殊な環境の中で給与交渉の機会をうかがう姿勢も見せているという。残る3人の従業員は時給24ドルで勤務を続けている。 今後の展望 Lunaはすでに欠員補充のためIndeedに求人を掲載しているが、採用プロセスでも課題が表面化しており、適切な職務経歴を持たない候補者を採用しようとしたり、面接をスキップした応募者を推薦したりするなど、採用判断の質にも疑問符がついている。Andon LabsのAxel Backlund氏は「AIの能力がどこへ向かっているのかを、できるだけ早い段階で人々に伝えるためにこうした実験を行っている」と実験の狙いを説明しており、この取り組みは職場におけるAIの権限や倫理的な議論を促す研究として位置づけられている。

August 19, 2026

GitLabがCVSS 9.4の緊急パッチ、未認証でGraphQL経由の公開プロジェクト改ざん・削除が可能に

概要 GitLabは8月17日、CVSSスコア9.4(Critical)と評価される重大な脆弱性CVE-2026-19478を修正する緊急パッチをリリースした。この脆弱性は、認証されていない攻撃者がGraphQL APIの特定のディレクティブを悪用することで、リモートから公開プロジェクトやユーザーデータを改ざん・削除できてしまうというもので、自己管理(self-managed)インスタンスが影響を受ける。GitLab.comなどのクラウド版利用者は対応不要とされている。2026年に入ってからGraphQL層で発見された重大な脆弱性としては3件目であり、GitLabのGraphQL実装に関するセキュリティ課題が繰り返し表面化している格好だ。 技術的な詳細 CVE-2026-19478は、GraphQLディレクティブを通じたコード注入に起因する脆弱性とされている。具体的にどのディレクティブが悪用されるのか、また攻撃を成立させる条件については、GitLabの開示ポリシーに従い2026年11月中旬まで技術詳細が非公開とされている。影響を受けるバージョンはCommunity Edition(CE)・Enterprise Edition(EE)ともに18.2から18.11.10まで、19.0から19.0.7まで、19.1から19.1.5まで、19.2から19.2.3までの範囲で、修正版として19.2.4、19.1.6、19.0.8、18.11.11がリリースされた。なお、影響範囲に含まれる18.2から18.10までのブランチには直接の修正パッチが提供されておらず、これらのバージョンを利用している場合は18.11.11以降への完全なアップグレードが必要になる。 同時に、GraphQLの多重化(multiplex)クエリハンドラに存在するCSRF脆弱性CVE-2026-19650(CVSS 7.1)も修正されている。こちらは認証されていない攻撃者がGETリクエスト経由でミューテーションを実行できてしまう問題だが、悪用にはユーザーの操作(被害者が悪意あるページにアクセスするなど)を必要とする点でCVE-2026-19478とは異なる。両脆弱性はいずれもGitLabのHackerOneバグバウンティプログラムを通じて報告されたもので、CVE-2026-19478の報告者は「hiimguardian」というハンドル名で識別されている。現時点で野生における悪用や概念実証(PoC)コードの公開は確認されていない。 背景と今後の対応 GitLabはCVSS 9.4という評価の高さから、自己管理インスタンスの管理者に対して「immediately」つまり直ちにアップグレードを行うよう強く呼びかけている。認証を必要とせず、公開プロジェクトのデータを外部から改ざん・削除できてしまう性質上、悪用された場合の影響範囲は大きい。GraphQL APIは近年多くのSaaS製品でREST APIに代わる主要なインターフェースとして採用が進んでいるが、柔軟なクエリ構造ゆえにディレクティブや多重化クエリなど特有の攻撃面を持つことも知られており、今回の一連の脆弱性はその典型例といえる。技術詳細の全面公開は11月中旬を予定しており、それまでは公開されている修正バージョンへの更新を優先することが推奨される。

August 19, 2026

Nvidia、SB Energyに15億ドル出資し OpenAI向けオハイオ州データセンターの独占供給元に

概要 Nvidiaは、ソフトバンクグループ傘下でデータセンター・電力インフラを手がけるSB Energyに15億ドルを出資し、オハイオ州で建設が進むOpenAI向け大型データセンター「PORTS-Pike Technology Campus」のAIコンピュート基盤を独占的に供給する提携を発表した。当初、The Informationの報道をもとにCNBCなどが伝えたところでは、Nvidiaは最大30億ドルの出資を検討しており、契約締結時に半額、SB EnergyのIPO実施時に残り半額を支払う案が浮上していた。その後8月17日にNvidia・SB Energy・OpenAIの3社が正式に提携を発表し、出資額は15億ドルに確定した。 出資の経緯と支援内容 報道によれば、Nvidiaは出資に加えて、土地取得・電力確保・建屋(シェル)建設に対する信用支援も提供する。当初はオハイオ州プロジェクト向けに最大1,050億ドル規模の信用枠を用意する案が伝えられていたが、その後Wall Street Journalの報道では、当初計画されていた2,500億ドルから縮小し、1,200億ドル未満の保証にとどめる方向だと報じられている。SB Energyはソフトバンクグループおよび顧客であるOpenAIからも出資を受けており、2019年設立の同社は早ければ9月にも新規株式公開(IPO)を計画し、調達額は50億ドル以上になる見通しとされている。なお、ソフトバンクは以前58億ドル相当のNvidia株式を保有していたが、2025年11月に売却済みである。 データセンターの規模と地域への影響 PORTS-Pike Technology Campusは、オハイオ州パイク郡にある米エネルギー省所有の旧ウラン濃縮施設(ポーツマス・ガス拡散プラント)跡地に建設される。初期段階で4.25ギガワット、将来的には最大8ギガワットまで拡張可能な規模を計画しており、OpenAIはまず4.25IT-GW分の容量を利用する予定で、NVIDIAには残る3.75IT-GW分を追加確保するオプションがある。電力供給のためSB Energyとソフトバンクは9.2ギガワット規模の天然ガス発電所を含む10ギガワット超の新規発電設備を建設する計画で、建設費は330億ドル規模になる見通し。施設は2028年以降、段階的に稼働を開始する予定だ。地域社会向けにはSB Energyが4,000万ドル、OpenAIが4,000万ドルを上乗せしたコミュニティ基金(総額8,000万ドル)を設立し、数万人規模の雇用創出が見込まれている。 背景と今後の見通し Nvidia CEOのジェンスン・フアン氏は「AI自体がインフラストラクチャーとなりつつあり、土地・電力・建屋の確保が極めて重要になっている」と述べ、チップ製造にとどまらず物理インフラへ投資領域を広げる戦略的な狙いを強調した。OpenAI側も、数百万人がAIを活用できる大規模拠点になるとの期待を示している。一方で、天然ガス発電プラントの建設費はここ2年で66%上昇しており、複数の巨大データセンターが同時期に稼働すれば天然ガスの需給が逼迫し、一部地域で価格が3倍に高騰する可能性も指摘されている。AIインフラ需要の急拡大を背景に、Nvidiaのような半導体大手が電力・データセンター事業に直接資本を投じる動きは今後さらに広がる可能性がある。

August 19, 2026

OpenAI、13〜17歳向け「ChatGPT for Teens」を提供開始 年齢推定で自動振り分け

概要 OpenAIは2026年8月18日、13〜17歳のユーザーを対象とした専用体験「ChatGPT for Teens」を発表した。13〜17歳と登録しているユーザー、あるいは自社の年齢推定システムによって18歳未満と判定されたユーザーは、自動的にこのティーン向け体験に振り分けられる。自殺・自傷、暴力、摂食障害、危険行為、性的・グロテスクなコンテンツへの露出を軽減する保護機能がデフォルトで有効になるほか、ChatGPTが恋愛的な言葉遣いや愛称を使うことも禁止され、感情や意識を持っているかのような発言をしないよう、より強く指示されるようになった。 主な機能と保護者向けコントロール ティーン向け体験には学習支援機能も統合されている。「Study Mode」は段階的なヒントや誘導的な質問を通じて学習をサポートし、不正行為の兆候が検出されると宿題のリマインダーを表示する。さらに「Study Hours」機能により、ティーン本人または保護者が特定の時間帯にStudy Modeを自動的に有効化できる設定も導入された。保護者向けには、ファミリーリンク機能を通じて安全通知やアプリ利用を制限する「Quiet Hours(利用制限時間)」を設定できるコントロールが用意されている。OpenAIはこれらの対策が発達科学の知見や専門家の助言に基づくものだとしている。 年齢推定システムと残る課題 未成年ユーザーを識別する年齢推定システムは、会話で話題になる内容、利用する時間帯、アカウントの利用パターン、アカウントの作成からの経過期間といった複数の信号を組み合わせて年齢を推定する仕組みだ。ただしOpenAIは、このシステムがテストでどの程度の精度を発揮したかを明らかにしていない。TechCrunchは、テクノロジーに詳しい未成年者であればこうした検知システムを回避する適応力を持つ可能性があると指摘し、実効性への懸念を呈している。 背景と今後の展望 今回の発表は、AIチャットボットの安全対策の不備を指摘する複数の訴訟や、未成年者の自殺・精神衛生上の問題への懸念が高まる中での対応となる。ChatGPTは2022年後半にサービスを開始してから、未成年向けの実質的な安全対策が導入されるまでの間に週間アクティブユーザー数が9億人規模まで拡大しており、報道各社は「なぜサービス開始当初からこうした保護機能が組み込まれていなかったのか」という疑問を提起している。OpenAIは年齢推定の精度向上や保護機能の拡充を継続する方針を示しており、未成年ユーザーの安全確保に向けた取り組みが今後どこまで実効性を持つかが注目される。

August 19, 2026

分散処理フレームワークRayの認証不備をCISAが悪用済み脆弱性に追加、連邦機関に8月20日までの対応を要求

概要 米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は、AI/機械学習ワークロード向けの分散コンピューティングフレームワーク「Ray」に存在する重大な脆弱性CVE-2025-62593(CVSSスコア9.4)を、既知の悪用済み脆弱性(KEV)カタログに追加した。この脆弱性はブラウザ経由でのリモートコード実行(RCE)を可能にするもので、すでに攻撃キャンペーンでの悪用が確認されている。連邦政府機関(FCEB)に対しては、2026年8月20日までの修正適用が義務付けられた。 技術的な詳細 脆弱性の根本原因は、Rayの開発チームが長年にわたり主要な認証機構を実装してこなかった点にある。特に"/api/jobs"や"/api/job_agent/jobs/“といった重要なAPIエンドポイントが無防備な状態で公開されていた。唯一の防御策は、HTTPリクエストのUser-Agentヘッダーが「Mozilla」で始まるかどうかを確認するという簡易的なチェックのみだったが、このヘッダーはブラウザ側で自由に書き換え可能であるため、実質的な防御にはなっていなかった。 攻撃者はこの欠陥をDNSリバインディング攻撃と組み合わせることで、悪意あるWebサイトを訪問したり不正広告を表示されたりしたRay実行中の開発者マシン上で任意のシェルコードを実行できる。この手法では、標的のブラウザが「混乱した代理人」として利用され、社内ネットワーク上のプライベートなRayインスタンスへの攻撃にも拡張しうる。この脆弱性は主にFirefoxとSafariで悪用可能とされる。発見にはOligoのセキュリティ研究者Avi Lumelskyと、DNSリバインディング手法を考案したJonathan Leitschuhが貢献しており、Rayバージョン2.52.0で修正済みだ。 悪用状況と背景 本脆弱性は2025年11月の一般公開に先立ち、DDoSボットネット「RondoDox」の攻撃グループによって2日前にはすでに悪用が組み込まれていたと報告されている。さらに、未パッチのRayインスタンスは「ShadowRay 2.0」と呼ばれる攻撃キャンペーンの標的にもなっており、NVIDIA GPUを搭載したクラスタを自己増殖型の暗号資産マイニングボットネットへと転換する目的で悪用されている。AI/ML基盤の計算資源を狙った攻撃が実際に確認されたことで、開発・テスト環境におけるRayの運用リスクが改めて浮き彫りとなった。 今後の対応 CISAは連邦政府機関に対し、拘束的運用指令(BOD 22-01)に基づき2026年8月20日までにRayを修正版へアップデートするよう義務付けている。この指令は連邦機関を対象としたものだが、民間企業や研究機関でRayを開発・運用環境に導入している組織にとっても、早急なバージョン2.52.0以降への更新が強く推奨される。KEVカタログへの追加は実際の悪用が確認された脆弱性を示すものであり、暗号資産マイニングボットネット化やDDoS攻撃への悪用が継続している以上、パッチ未適用のインスタンスは引き続き高いリスクにさらされる。

August 19, 2026