MicrosoftがOpenAI撤退後のノルウェーStargateデータセンターを引き継ぎ、Vera Rubin GPU 3万基を展開

概要 Microsoftは2026年4月、ノルウェー北極圏の都市Narvikにあるクラウドプロバイダー・Nscaleのデータセンターキャンパスで、Nvidia Vera Rubin GPUを3万基以上追加展開する契約を締結した。このサイトはもともとOpenAIの「Stargate Norway」プロジェクトとして発表されていたもので、OpenAIが契約締結に至らなかった後、Microsoftが引き継いだ形となる。今回の合意は、同サイトに対してMicrosoftがすでに行っていた62億ドル規模のコミットメントをさらに拡大するものだ。 OpenAIの撤退経緯 OpenAIは昨年、NarvikのNscaleキャンパスをStargate構想の欧州拠点として「Stargate Norway」と銘打ち公表していた。しかし、エネルギーコストや規制コストの高さを理由に英国のStargateプロジェクトを一時停止するなど、欧州でのインフラ展開に慎重姿勢を強めていた。結果としてNscaleとの直接契約は成立せず、OpenAIは独自に容量を確保する代わりにMicrosoftのAzureを通じて同サイトへのアクセスを確保する形に変更した。IPOに向けた支出精査の強化も、OpenAIがサーバーファームコストに対して慎重な姿勢をとる背景にある。 技術・インフラの詳細 Narvikキャンパスにはすでに230MWの電力容量が確保されており、電力は再生可能エネルギーから供給される。今回追加展開されるNvidia Vera Rubin GPUは次世代のAI推論・学習向けアクセラレーターであり、MicrosoftはこのGPUを英国やノルウェーをはじめとする複数拠点に順次展開している。Nscaleはデータセンターを設計・運営するネオクラウドプロバイダーであり、ノルウェーの投資会社Aker ASAも出資に参画している。 Stargateサイトの相次ぐ吸収とAI戦略 Microsoftが元Stargateサイトを引き継ぐのは、直近3週間で2件目となる。最初のケースはテキサス州のサイトであり、今回のノルウェーがそれに続く。OpenAIは2026年の支出削減方針のもと欧州でのインフラ展開を縮小している一方、MicrosoftはAI・クラウドサービスへの爆発的な需要増に対応すべくデータセンター整備を積極的に進めている。Microsoftは今後もNarvikキャンパスを含む大規模AI推論インフラへの投資を継続するとみられており、欧州における同社のAI基盤強化が加速している。

April 17, 2026

NISTがNVD運用を刷新:CVE申請263%急増で高リスク脆弱性のみ詳細分析へ

概要 米国立標準技術研究所(NIST)は2026年4月15日、国家脆弱性データベース(NVD)の運用方針を抜本的に見直すと発表した。2020年から2025年にかけてCVE申請数が263%急増し、2026年第1四半期の申請数も前年同期比で約33%上回るなど、成長が加速するなかで、NISTは2025年に過去最高の約42,000件のCVEをエンリッチメント(詳細情報付与)したものの、それでも申請ペースに追いつけない状況を認めた。2025年分だけでも約10,000件の脆弱性がCVSSスコアなしのまま残っており、同年のCVE全体のうちNISTが詳細分析できたのは約32%(14,000件)にとどまっている。 優先化の新基準 新方針では、NISTが詳細分析(エンリッチメント)を自動的に行う対象を以下の3カテゴリに絞り込む。 CISAの既知悪用脆弱性(KEV)カタログ掲載済みのCVE:1営業日以内のエンリッチメントを目標とする 連邦政府が利用するソフトウェアに影響するCVE 大統領令14028が定める「重要ソフトウェア」(OS、ブラウザ、ネットワーク機器、バックアップシステム、ID管理プラットフォームなど)に関わるCVE この3条件を満たさないCVEは「Not Scheduled(未予定)」ステータスに設定される。ただし、データベースからは削除されず、組織はnvd@nist.gov宛てにメールでエンリッチメントをリクエストできる。なお、2026年3月1日以前に未エンリッチのまま残っていたバックログは、優先基準を満たさない限りそのまま「Not Scheduled」に移行される。 プロセスの変更点 今回の方針変更ではスコアリング体制も変わる。NISTはこれまで独自の深刻度スコアを提供してきたが、CVE採番機関(CNA)がすでにスコアを付けているCVEについては、NISTが別途スコアを算出・公開しなくなる。また、修正された既存CVEの再分析は、変更内容がエンリッチメントデータに実質的な影響を与える場合に限定される。 業界への影響と背景 セキュリティ専門家の間では、この変更を「政府の単一データベースに頼れた時代の終わり」と表現する声も上がっている。背景には、AIを活用した脆弱性発見ツールの普及が研究者コミュニティに広まり、CVE申請数を押し上げているという構造的要因がある。 CVEプログラム自体も2025年には資金不足で崩壊寸前に陥るなど、MITREとDHSへの依存が脆弱性管理インフラの持続可能性に疑問を投げかけている。一方、欧州ではENISAがルートCNA(CVE採番の上位機関)の地位取得を目指しており、脆弱性情報の分散管理と欧州側の自立化に向けた動きが加速している。今回のNISTの方針転換は、組織がNVDの網羅性に依存した脆弱性管理から脱却し、リスクベースの優先付けを自ら行う必要があることを改めて示すものとなった。

April 17, 2026

Operation PowerOFFがDDoS-for-hire53ドメインを閉鎖、75,000人に警告メール送付

概要 Europolが主導する国際法執行作戦「Operation PowerOFF」の最新フェーズが2026年4月13日に実施された。オーストラリア、ブラジル、日本、米国、英国、ドイツ、オランダをはじめとする21か国が参加し、DDoS-for-hire(DDoS請負)サービスの53ドメインを閉鎖、4名を逮捕、25件の捜索令状を執行した。また、過去フェーズで入手したデータベースには300万件以上の犯罪者アカウントが含まれており、今回の一連の取り締まりはDDoS攻撃インフラに対する大規模な国際的対応となった。 告知戦略——75,000人への直接警告 今回の作戦で注目されるのは、刑事訴追に加えて大規模な「告知・抑止」戦略が採用された点だ。Europolは、DDoS-for-hireプラットフォームの利用者として特定された約75,000人に対し、電子メールや書面で警告通知を送付した。これは従来の逮捕・起訴中心のアプローチからの転換を示しており、当局が監視を行っているという事実を広く知らしめることで、将来的な犯行を抑止することを目的としている。あわせて、若年層をターゲットとした検索エンジン広告の出稿、違法サービスを宣伝する100件以上のURLの削除、不正な支払いに紐付けたオンチェイン警告メッセージの送付といった啓発活動も実施された。 DDoS-for-hireサービスの手口と脅威 閉鎖されたのは「ブーターサービス」と呼ばれる仕組みで、利用者は料金を支払うだけで標的のWebサイト、サーバー、ネットワークに大規模なDDoS攻撃を仕掛けられる。攻撃トラフィックは主に侵害済みのルーターやIoTデバイスから生成されるため、利用者側に高度な技術知識は不要だ。サービス運営者は「負荷テスト」を名目に掲げることがあるが、対象サーバーの所有権を確認するしくみは存在しない。EuropolはDDoS-for-hireを「サイバー犯罪の中で最も蔓延しやすく、参入障壁が低いトレンドの一つ」と位置付けており、企業活動への実害も大きい。 作戦の背景と過去の実績 Operation PowerOFFは複数年にわたる継続的な作戦である。DDoS-for-hireインフラへの国際的な取り締まりも進んでおり、2025年8月には米国政府が80か国以上の被害者を出したDDoSボットネット「RapperBot」のインフラを解体している。今回のフェーズでは、各国当局の専門家が集結して「高価値ターゲット」に対する一斉摘発を実施するという「オペレーションスプリント」方式が採用された。国際協調の枠組みを活かした継続的な取り締まりと予防啓発の組み合わせが、DDoS-for-hireエコシステムの弱体化に向けた有効なアプローチとして確立されつつある。

April 17, 2026

Slack CLI v4.0.0リリース、AIエージェント開発向けスキャフォールディングとMCPサーバー統合を搭載

概要 Slack CLIのメジャーバージョン4.0.0が2026年4月10日にリリースされ、直後にパッチバージョンの4.0.1も公開された。今回のリリースの目玉は、AIエージェント開発に特化した新機能の追加だ。slack create agentコマンドを使うことで、Slack MCPサーバーのサポートが組み込まれたプロジェクトを素早くスキャフォールディングできるようになった。対応フレームワークはClaude Agent SDK・OpenAI Agents SDK・Pydantic AIの3種類で、それぞれスターターテンプレートが提供される。v4.0.1ではさらにslack create agentコマンドが修正され、アプリテンプレート・BoltフレームワークおよびAIエージェントフレームワークの選択プロンプトが正しく表示されるようになり、JavaScriptとPythonの双方でテンプレート選択肢が拡張されている。 主な新機能と改善点 環境変数管理の面でも大きな改善が加えられた。.envファイルがフックスクリプトの実行より前に読み込まれるようになったほか、slack env listコマンドで利用可能な変数を一覧表示できるようになった。さらにslack env setとslack env unsetコマンドが追加され、Slackインフラストラクチャ上で構築・実行されないアプリ向けに、コマンドラインから環境変数を設定・削除できるようになった。 開発体験の向上という面では、slack runコマンドにファイルウォッチングとライブリロード機能が追加され、コードの変更が即座に反映されるようになった。また、slack run ./src/app_oauth.pyのようにオプション引数でカスタムのアプリエントリポイントを指定できるようになり、より柔軟なプロジェクト構成に対応している。 Pythonプロジェクト向けの改善も注目に値する。プロジェクトのセットアップ時にPython仮想環境(.venv)が自動的に作成され、pyproject.tomlおよびrequirements.txtから依存関係がインストールされる。以降のコマンド実行時も、仮想環境が存在する場合は自動的にアクティベートされるため、開発者が手動で環境を管理する手間が省かれる。 バグ修正と安定性向上 バグ修正としては、pyproject.tomlのエラーハンドリングの修正、環境変数から不要な二重引用符が除去されるよう修正、Windowsインストーラーの改善、そしてCIやスクリプト環境でのエラー早期検出などが含まれる。AIエージェント開発という新しいユースケースへの本格対応とともに、既存機能の安定性・使いやすさも着実に磨かれたリリースとなっている。

April 17, 2026

Snapが全従業員の16%にあたる約1,000人を削減、AI活用で5億ドル超のコスト圧縮へ

概要 Snapは2026年4月15日、全従業員の約16%にあたる約1,000人の人員削減を実施すると発表した。CEOエヴァン・スピーゲル氏は社員向けメモの中で、AIの急速な進歩によってチームが反復的な作業を減らし、業務速度を向上させ、コミュニティ・パートナー・広告主へのサポートを強化できるようになったと説明している。人員削減に加え、採用中だった300以上のポジションもすべて閉鎖される。2025年12月時点の従業員数は約5,261人であり、今回の削減は近年最大規模の一つとなる。 財務目標とコスト削減 この再編により、Snapは2026年下半期までに年間ベースで5億ドル以上のコスト削減を見込んでいる。スピーゲル氏は「純利益の黒字化に向けた、より明確な道筋を確立する」ことを目標に掲げており、これまで赤字が続いていた同社の収益構造を大きく転換する狙いがある。発表直後、Snap株は時間外取引で11%超の上昇を記録し、市場はコスト削減と収益化への取り組みを好感した。 AI活用による「新しい働き方」 スピーゲル氏は今回の削減を単なるコスト削減策としてではなく、AIを活用した「新しい働き方(New Way of Working)」への移行と位置付けている。Snapchat+の機能拡充、広告プラットフォームのパフォーマンス向上、Snap Liteインフラの効率化など、複数の重要プロジェクトで少人数チームとAIツールの組み合わせが既に成果を上げているとしており、この方針をより広く展開する考えだ。 削減の背景と従業員への対応 今回の削減は、Snapにとって2022年(全体の20%削減)、2023年、2024年(10%削減)に続く一連のリストラの流れを継承するものだ。同社はAmazonやMicrosoft、Pinterestといった他のテック企業と同様、AI効率化を人員縮小の主要な根拠として挙げている。削減対象となった米国従業員には、4か月分の退職金・医療保険・株式付与・転職支援が提供される予定で、北米の従業員には発表当日の在宅勤務が指示された。なお、Snapは今後、消費者向けARグラス「Specs」の発売を予定しており、この部門を独立した事業単位として分離している。

April 17, 2026

英国のBig Tech依存が国家安全保障リスクに ── Open Rights Groupが「Tech Giants and Giant Slayers」を発表

概要 Open Rights Group(ORG)は2026年4月、「Tech Giants and Giant Slayers」と題した報告書を公開し、英国が米国のハイパースケーラーをはじめとするBig Techに対してクラウド・ソフトウェア・データセンターを過度に依存していることが、国家安全保障上の重大なリスクになっていると警告した。報告書は、少数の米国企業が英国の重要インフラ全体に深く組み込まれており、システムだけでなく政策決定にまで影響を及ぼしていると指摘している。 緑の党のSian Berry議員は「インフラのレジリエンス確保が急務」と強調し、労働党のClive Lewis議員は英国が「危険なほど脆弱な状態に置かれている」と警告するなど、超党派の政治家が報告書の指摘に同調した。 具体的なリスクと財政的損失 報告書が挙げる主要リスクの一つは、米国の**CLOUD Act(クラウド法)**である。同法は米国当局が米国企業の管理下にある海外データへのアクセスを要求できる法的根拠となっており、英国政府や企業のデータが米国法の射程に入る可能性がある。また、中国の国家情報法も企業への協力義務を定めており、中国系クラウドサービスを利用する場合も同様の主権リスクが生じると指摘されている。 さらに、ベンダーの「制裁権限」も問題視されている。報告書は、MicrosoftがICC(国際刑事裁判所)関連の米国制裁の影響を受けた個人に対してサービスを制限したとされる事例を引用し、民間企業が国際的な文脈で一方的にサービスを停止できることへの懸念を示した。 財政面では、競争・市場庁(CMA)が年間5億ポンド超のクラウドコスト超過を確認している。ベンダーロックインによるプロジェクトの遅延・超過費用も加わり、公的資金の非効率な支出が常態化しているとされる。 提言:デジタル主権とオープンソースへの転換 ORGのエグゼクティブディレクターであるJim Killockは、「公的資金は、Big Techの株主を潤すためではなく、社会全体が恩恵を受けるパブリックコードに使われるべきだ」と述べた。報告書が示す解決策は次の3点に集約される。 オープンソースソフトウェアの積極的採用 ── 特定ベンダーへの依存を排除し、コードを公共財として共有する 国内技術能力の育成 ── 英国独自の技術基盤を整備し、外部ベンダーへの交渉力を高める デジタル主権の確立 ── インフラ・データ・技術を自国でコントロールできる体制を構築する Big Techへの依存は短期的なコスト効率を生む一方、長期的には財政・安全保障・主権の三方向からリスクを積み重ねる構造的問題であることが本報告書で改めて浮き彫りになった。英国政府が今後どのような政策対応をとるかが注目される。

April 17, 2026

AmazonがGlobalstarを115.7億ドルで買収、衛星スペクトラムを武器にStarlinkへ挑戦

概要 Amazonは2026年4月14日、衛星通信企業Globalstar, Inc.を約115.7億ドル(約1兆7,000億円)で買収することを正式発表した。Globalstar株主は1株あたり90ドルの現金またはAmazon株を選択でき、これはGlobalstarの直前終値に対して約23.5%のプレミアムに相当する。ただし現金選択は全株式の40%を上限とし、超過分はAmazon株に転換される。取引は2027年中のクロージングを見込んでおり、規制当局の承認を待つ状態だ。Globalstarは買収完了後、Amazonの完全子会社として事業を継続する予定。 戦略的価値の核心:Band 53スペクトラムが「本命」 今回の買収でAmazonが実質的に手に入れる最大の資産は、Globalstarが保有する24機のLEO(低軌道)衛星や24か所の地上局ネットワークよりも、**Band 53/n53スペクトラム(2483.5〜2495 MHzのLバンド・Sバンド)**だと広く評価されている。このスペクトラムの地上波利用(Band 53/n53)は現在12か国でライセンスを取得しており、高性能・低遅延・干渉なしの接続を実現するとGlobalstarは説明する。こうした特性は他社が衛星を打ち上げるだけでは複製できないため、業界関係者からは「ディールの王冠」とも呼ばれている。 Amazon Leoは2028年以降、このスペクトラムを活用したDirect-to-Device(D2D)サービス、すなわちスマートフォンへの直接接続による音声・データ・メッセージング通信の提供を計画している。 Amazon Leoの現状とFCCデッドライン Amazonの衛星インターネット事業はかつて「Project Kuiper」として知られていたが、現在は「Amazon Leo」としてブランドを刷新している。現時点で運用中の衛星は180〜241機程度とされており、約1万機以上を誇るSpaceX Starlinkとは大きな開きがある。さらに、FCCからのライセンス維持要件として2026年7月30日までに計画衛星数(約3,236機)の50%以上にあたる約1,618機を軌道投入する義務があり、事業の拡大を急いでいる状況だ。今回のGlobalstar買収は、数年かかる周波数ライセンス取得や地上インフラ整備を一度の取引で解決する手段として機能する。 Appleとの関係:複雑な交渉を解決した「サイド契約」 今回の買収における最大の難題の一つが、AppleとGlobalstarの既存関係だった。Appleは2024年に15億ドルを投資してGlobalstarの約20%の株式を取得し、ネットワーク容量の85%を利用する権利を持っていた。iPhone 14以降やApple Watch Ultra 3に搭載された「衛星経由の緊急SOS」など安全性に直結するサービスはGlobalstarのインフラ上で動いており、買収にはAppleとの合意が不可欠だった。 Amazonとアップルはこの問題を解決するサイド契約を締結した。契約によれば、Amazon Leoは今後もiPhoneおよびApple Watchの衛星機能(緊急SOS、メッセージ、「探す」、ロードサイドアシスタンス)を継続的に支える予定だ。両社は将来の衛星サービスにおいても協力関係を築くとしている。 Starlinkへの対抗と業界インパクト Globalstar自身は1991年創業の老舗衛星通信企業であり、2025年に初めて営業黒字を達成、年間売上高は2億7,300万ドルを記録していた。発表翌日にはGlobalstar株が10%上昇、Amazon株も約5%上昇した。 今回の買収はAmazonがSpaceX/Starlinkとの競争を本格化させる意志を鮮明にしたものだ。衛星数では依然として大きな差があるものの、独占的なスペクトラムとAppleとの提携、そして170億ドルを超えるLeo向け設備投資という組み合わせは、商業衛星通信市場の勢力図に変化をもたらす可能性がある。

April 17, 2026

Anthropic、Claude Opus 4.7を正式リリース——コーディング性能13%向上と高解像度ビジョン対応

概要 Anthropicは2026年4月16日、最新の大規模言語モデル「Claude Opus 4.7」を正式に一般公開した。前世代のOpus 4.6から複数の領域で大幅な性能向上を実現しており、特に高度なソフトウェアエンジニアリングタスクでの能力が際立っている。価格はOpus 4.6と同じ体系(入力トークン100万件あたり5ドル、出力トークン100万件あたり25ドル)を維持し、Claude製品全体およびAPI(モデルID: claude-opus-4-7)での利用が可能だ。Amazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI、Microsoft Foundryを通じたクラウド利用にも対応している。 コーディング能力と指示遵守の強化 Opus 4.7の最も顕著な改善点はコーディング性能だ。GitHubの社内ベンチマーク(93タスクのコーディングテスト)ではOpus 4.6比で13%の向上が確認されており、ユーザーからは、以前は厳密な監督が必要だった最も難しいコーディング作業をOpus 4.7に自信を持って任せられるようになったとの声が報告されている。複雑な長期実行タスクへの対処や、指示への正確な準拠も強化されており、従来モデルが曖昧に解釈していた細部の指示もOpus 4.7では忠実に実行される。 また、新たな努力(effort)レベルとして「xhigh」が追加された。これにより推論精度とレイテンシのバランスをより細かく制御できるようになった。なお、Claude Codeではデフォルトの努力レベルが「xhigh」に設定されている。 高解像度ビジョンと技術仕様の更新 ビジョン機能も大幅に強化された。対応画像の解像度が最大で長辺2,576ピクセル(約375万画素、3.75メガピクセル)まで拡張され、これは従来モデルの3倍以上に相当する。細部が重要な技術図面、化学構造式、スクリーンショット分析などのユースケースで恩恵が期待される。 トークナイザーも更新されており、テキスト処理の精度が向上した。ただし、同じ入力でも従来モデルより1.0〜1.35倍多くのトークンが必要になる場合があるため、既存のAPIユーザーは使用量の変動に注意が必要だ。セキュリティ面では、サイバーセキュリティ分野の禁止・高リスク利用を自動検出してブロックするセーフガードが導入され、正当なセキュリティ研究者向けにはサイバー検証プログラムも用意されている。 今後の展望 CNBCの報道によると、Anthropicは「Mythos」と呼ばれるさらに高性能なモデルも開発しているが、サイバーセキュリティ上の懸念から現時点ではその一般公開を見合わせ、限定的なアクセスに留めている。今回はリスクの低いClaude Opus 4.7を一般向けに公開し、ここで得られたセーフガードの知見をもとに将来的にMythos級モデルの広範な公開を目指すとしている。Anthropicが慎重かつ段階的なリリース戦略を続けていることがうかがえ、業界全体のAI安全性への意識の高まりとも軌を一にしている。

April 17, 2026

ASML、AI需要を追い風にQ1決算で通期見通し上方修正も中国輸出規制懸念で株価約6%下落

概要 半導体製造装置最大手のASMLは2026年4月15日、2026年第1四半期(Q1)の決算を発表した。売上高は88億ユーロ、純利益は28億ユーロを記録し、いずれもアナリスト予想を上回る好決算となった。これを受けて同社は2026年通期の売上高見通しを360〜400億ユーロに上方修正した。AI(人工知能)向けデータセンターの拡大に伴う半導体需要の高まりが、先端露光装置への旺盛な需要を支えた格好だ。 ただし、決算発表後の株価は約6%の下落を記録した。好業績にもかかわらず株価が下落した主な要因は、中国向け輸出規制の強化に対する市場の懸念である。米国政府が対中半導体輸出規制を一段と厳格化する方針を示しており、ASML製品の中国向け販売が制限される可能性が投資家心理を冷やした。 業績と市場背景 ASMLはEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の唯一の製造会社として、世界の先端半導体製造において不可欠な立場を占めている。AIチップや高性能プロセッサの製造に欠かせない同社の装置は、台湾のTSMCや韓国のサムスン電子、米国のインテルなど世界の主要チップメーカーが導入している。AI関連の設備投資が世界的に増加する中、ASMLへの需要も拡大が続いており、Q1決算はこうした追い風を反映したものとなった。 中国輸出規制リスク ASMLにとって中国は重要な市場の一つであり、中国向け売上が全体の相当部分を占める。しかし近年、米国主導の対中半導体輸出規制の強化により、ASMLは最先端のEUV装置に加え、旧世代のDUV(深紫外線)装置についても中国への輸出制限が拡大しつつある。2025年以降、規制の範囲はさらに広がっており、今後の中国向け受注や売上に影響が生じる可能性が懸念されている。通期見通しの上方修正はポジティブな材料である一方、中国事業への規制リスクが株価の重荷となっている構図だ。 今後の見通し AI・データセンター投資の拡大を背景に、半導体製造装置への需要は中長期的に堅調が見込まれる。ASMLは依然として業界において独占的な技術優位を持っており、先進国での半導体生産能力増強(米国のCHIPS法や欧州のEU Chips Actに基づく補助金計画など)も追い風となる。一方で、地政学的リスクや規制強化の動向は引き続き不確実性の主要因として意識される見通しだ。

April 17, 2026

CERT-UA、ウクライナ医療・政府機関を狙うUAC-0247のマルウェアキャンペーンを公開

概要 ウクライナのコンピュータ緊急対応チーム(CERT-UA)は2026年4月、脅威クラスター「UAC-0247」による標的型サイバー攻撃キャンペーンの詳細を公開した。このキャンペーンは2026年3月から4月にかけて活発に展開され、政府機関・自治体の医療施設(クリニック、救急病院など)を主な標的としている。攻撃者は人道支援提案を装ったフィッシングメールを送りつけ、被害者を悪意のあるサイトへ誘導する手口を用いた。誘導先はXSS脆弱性を突いて侵害された正規サイト、またはAIツールで生成された偽サイトのいずれかだという。 攻撃チェーンと使用マルウェア 攻撃は多段階の感染フローを持つ。フィッシングメールのリンクをクリックした被害者は、Windowsショートカット(LNK)ファイルをダウンロード・実行する。このLNKファイルがmshta.exeを通じてリモートのHTA(HTMLアプリケーション)を呼び出し、囮フォームを表示しながら裏でシェルコードを正規プロセス(runtimeBroker.exeなど)に注入する。最終ペイロードは独自の実行ファイル形式を持つ2段階ローダーで配布され、追加の圧縮と暗号化が施されている。 使用されたカスタムマルウェアは3種類確認されている。 RAVENSHELL — TCPリバースシェルで、XOR暗号化(キー: 01 01 02 03 74 15 04 FF EE)を用いてC2サーバーと通信し、cmd.exe経由でコマンドを実行する。 AGINGFLY — C#製のリモートアクセスツール(RAT)。AES-CBC暗号化されたWebSocketで通信し、コマンド機能をサーバーから動的に取得する。キーロガー、ファイルダウンロード、スクリーンショット取得などの機能を持つ。 SILENTLOOP — PowerShellスクリプト。コマンド実行・自動更新に加え、Telegramチャンネルを利用したC2サーバーIPアドレスの取得とフォールバックC2メカニズムを備える。 オープンソースツールの悪用とデータ窃取 カスタムマルウェアに加え、攻撃者は複数のオープンソースツールを組み合わせた。ChromeのApp-Bound暗号化を回避してCookieやパスワードを収集するCHROMELEVATOR、WhatsApp Webのデータベースを復号するZAPIXDESK、ネットワーク偵察用のRustScan、リバースTCP/TLSトンネルを確立するLigolo-NgとTCP/UDPトンネリングツールのChisel、そして改変されたWireGuard実行ファイルに埋め込まれた暗号通貨マイナーXMRigがその一例だ。これらを組み合わせることで、ChromiumベースのブラウザとWhatsAppからの機密情報窃取、横展開、持続的な侵害が行われていた。 また、医療・政府機関への攻撃と並行して、2026年3月にはウクライナ国防軍の関係者がSignalプラットフォームを通じた攻撃の被害を受けた可能性も判明した。FPVドローン操作用ソフトウェアのアップデートを装ったZIPアーカイブが配布され、DLLサイドローディングによってAGINGFLYが展開された。 CERT-UAの推奨する緩和策 CERT-UAは「LNK・HTA・JSファイルの実行を制限し、正規ユーティリティであるmshta.exe、powershell.exe、wscript.exeの起動を制限するだけで、サイバー脅威の可能性を大幅に低減できる」と述べている。戦時下のウクライナで医療インフラや政府機関が高度な攻撃に継続的にさらされている実態が改めて浮き彫りになった事例であり、重要インフラへの攻撃に対する多層防御の重要性が示されている。

April 17, 2026