ソフトバンク主導でNEC・ホンダ・ソニーら8社出資の「日本AI基盤モデル開発」設立、1兆パラメーター級国産AIへ

概要 ソフトバンクが主導し、NEC・ホンダ・ソニーグループを主要株主として、国産AI基盤モデルの開発を担う新会社「日本AI基盤モデル開発」が2026年4月に設立された。主要4社(ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーグループ)がそれぞれ十数パーセントを出資するほか、日本製鉄、神戸製鋼所、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3メガバンクも少数株主として参画。開発パートナーとしてプリファードネットワークス(PFN)も加わり、合計9社が結集する体制となった。米中企業が先行する生成AI市場での巻き返しを図るべく、官民が一体となって国産AI開発に取り組む。 技術目標とフィジカルAI 新会社が目指すのは、パラメーター数で国内最大規模となる約1兆パラメーター級の大規模言語モデルの開発だ。テキストにとどまらず、画像・映像・音声を処理するマルチモーダル能力も強化する方針で、2030年度までにロボットや機械設備と連携可能な「フィジカルAI」の実現を掲げている。日本の製造業が長年にわたって蓄積してきた産業データを学習させることで、工場設備やロボットを自律制御するシステムへの応用が期待されている。自動運転システムや汎用ロボット、ゲーム、半導体分野への展開も視野に入れており、約100人の高度なAI開発技術者を集約して研究開発を進める。 政府支援とインフラ整備 経済産業省は今後5年間で約1兆円規模の支援を計画しており、新会社はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業への応募を予定している。インフラ面では、ソフトバンクが2025年にシャープから取得した堺市の旧液晶工場を拠点として活用し、最先端GPU(画像処理半導体)を導入する。国内でのデータセンター整備により、高度な情報処理を日本国内で完結させるサプライチェーンの構築を目指す。 背景と意義 生成AIの基盤モデル開発ではOpenAIやGoogleなど米国勢、さらにはアリババやBaidu、DeepSeekといった中国勢が先行しており、日本企業は出遅れた形となっていた。製造・金融・エネルギー分野にまたがる大企業連合を形成し、政府の大規模な財政支援と組み合わせることで、日本独自の強みである産業データと製造ノウハウを活かした差別化戦略を模索している。フィジカルAIという具体的な応用領域にフォーカスすることで、汎用的な言語モデルで先行する米中企業と真正面から競合するのではなく、産業応用での優位性確立を狙う戦略と見られる。

April 18, 2026

仮想通貨取引所Krakenが攻撃者に取り込まれたスタッフによる内部不正アクセスと恐喝被害を公表

概要 仮想通貨取引所Krakenは、攻撃者に取り込まれたカスタマーサポートスタッフによる内部不正アクセスが2件発生し、その後サイバー犯罪グループから内部システムの動画を公開すると脅す恐喝を受けたことを公表した。最高セキュリティ責任者のNick Percocoによれば、2025年2月に信頼できる情報源からの通報により、同社のカスタマーサポートシステムへのアクセスを示す動画が流通していることが判明した。調査の結果、攻撃者に取り込まれたサポートスタッフによる内部脅威が明らかになり、その後さらなる別の不正アクセス事例も浮上した。 影響を受けたアカウントは約2,000件で、全ユーザーベースの約0.02%に留まる。露出したのはカスタマーサポートデータのみであり、同社は「システムは決して侵害されず、資金が危機に晒されることはなかった」と強調している。Krakenは問題を把握した後、直ちに当該従業員のアクセスを取り消し、調査と管理統制の強化を実施、被害を受けたユーザーへの直接通知を行った。 Krakenの対応と法執行機関との連携 Krakenは恐喝要求に対して断固とした姿勢を示し、「このような犯罪者には一切支払わず、悪質行為者とは交渉しない」と明言した。同社はすでに起訴に必要な証拠を収集したとしており、複数の州の連邦法執行機関と協力して攻撃者の追跡に当たっている。 業界全体に広がる内部脅威の問題 この事件は仮想通貨業界における内部脅威の深刻さを改めて浮き彫りにした。2025年中盤にはCoinbaseも同様の手口による被害を受けており、インドを拠点とするカスタマーサポート業者の従業員が買収され、約70,000人の顧客情報が漏洩、推定4億ドルの損害が発生した。採用プロセスや社内アクセス管理の強化、そして不審なアクセスパターンの早期検知が、仮想通貨取引所にとって急務となっている。

April 18, 2026

富士通、1.4nm AI推論NPUの製造をラピダスに委託——総開発費580億円の純国産半導体プロジェクト始動

概要 富士通は2026年4月11日、AI推論処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)の製造を国産半導体ファウンドリのラピダスに委託すると発表した。開発するチップは回路線幅が1.4ナノメートルという最先端の微細プロセスを採用し、サーバー向けAI推論処理において既存GPUと比較して大幅な消費電力削減を実現する設計となっている。総開発費は約580億円で、そのうち約3分の2をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金で賄う予定だ。 本プロジェクトは、先端半導体の設計から製造まで全工程を国内企業だけで完結させる「純国産AI半導体プロジェクト」として位置づけられている。赤沢経産相は「国益に関わる不可欠な国家プロジェクト」と表現しており、米中が支配するAI半導体市場において日本が「第3極」を目指す取り組みの核心となっている。 政府支援と経済安全保障 経済産業省はラピダスへの追加補助金として6,315億円を承認した。内訳は前工程(ウェハ製造)に5,141億円、後工程(パッケージング等)に1,174億円で、これによりラピダスへの国からの累計補助金は2兆3,000億円超に達する。 背景にあるのは経済安全保障上の危機感だ。これまで日本は先端半導体の設計・製造を海外の技術や製造拠点に大きく依存してきた。富士通とラピダスの連携は、この構造的課題を解消し、AI時代に不可欠な半導体サプライチェーンを国内で完結させることを目的としている。 今後のロードマップ ラピダスは2027年度から2ナノメートル世代チップの量産を開始する計画を持ち、その後1.4ナノメートル世代へ順次移行する予定だ。富士通の1.4nm NPUはこのロードマップの中核的な案件として位置づけられ、ラピダスの量産技術確立に向けた重要な商業受注となる。AI推論チップ市場での国際競争力獲得に向け、日本の官民連携による半導体産業再建が本格的に動き出した形だ。

April 18, 2026

教育大手McGraw Hill、Salesforce設定ミスでShinyHuntersに1,350万件のデータ流出

概要 教育コンテンツ大手のMcGraw Hillが大規模なデータ漏洩被害を受けたことが明らかになった。ハッカー集団ShinyHuntersが同社のSalesforce環境における設定ミスを悪用し、1,350万件のユーザーアカウントデータを窃取。100GB超のデータがダークウェブのリークサイトに公開された。流出したデータには、氏名・住所・電話番号・メールアドレスが含まれており、情報漏洩通知サービス「Have I Been Pwned」でも確認済みとなっている。 攻撃手法とShinyHuntersの要求 ShinyHuntersは、Salesforceが連携する環境の設定ミスを起点にMcGraw Hillのシステムへ侵入した。McGraw Hillは「Salesforce環境内の設定ミスに起因するもので、複数の組織が影響を受けた広範な問題の一部」と説明しており、自社固有の脆弱性ではなく連携サービス側の構成問題だと主張している。一般的にSalesforceを介した侵害は、認証情報の窃取、OAuth連携の悪用、過剰な権限が付与されたインテグレーションなどが原因となるケースが多い。 ShinyHuntersは4月14日を身代金支払いの期限として設定し、McGraw Hillがこれに応じなかったことでデータを公開。同グループはダークウェブのリークサイトにRockstar Gamesなど他の被害組織と並べてMcGraw Hillを掲載しており、「4,000万件超のSalesforceレコードを取得した」とも主張している。ただし、McGraw Hillが公表している漏洩件数は1,350万件にとどまっている。 McGraw Hillの対応と影響範囲 McGraw Hillは今回の侵害について「Salesforceアカウント、コースウェア、顧客データベース、内部システムへの不正アクセスは発生していない」との立場を取り、流出データを「限定的なセット」と位置付けている。しかし、同社は自社のチャンネルでの公式発表をほぼ行わず、報道機関の取材にも回答しないなど、情報開示には消極的な姿勢を示している。 1909年創業で年商22億ドルを誇るMcGraw Hillは、PreK〜12(幼稚園から高校)・高等教育・専門学習向けの教育コンテンツを提供しており、膨大な学習者の個人情報を保有する。流出したメールアドレスや住所等のデータは、スピアフィッシング攻撃などに悪用される可能性があり、被害者となったユーザーへの二次被害が懸念される。 ShinyHuntersの最近の活動 ShinyHuntersは今回のMcGraw Hill侵害に限らず、欧州委員会、Infinite Campus、Hims & Hers、Panera Bread、SoundCloud、Matchグループが運営する複数のデーティングプラットフォームなど、多数の組織を標的にした攻撃を近年活発化させている。Salesforce連携環境の設定ミスを狙う手口はこのグループの常套手段とも言われており、同様の構成を持つ組織にとっては今回の事例が重大な警鐘となる。

April 18, 2026

Claude CodeとGPT-4.1を駆使した単独ハッカーがメキシコ政府9機関に侵入、数億件の個人情報が流出

概要 2025年12月から2026年2月にかけて、1人のハッカーがClaude CodeおよびGPT-4.1を活用してメキシコ政府の9つの機関に侵入し、数億件規模の市民個人情報を流出させた事件が明らかになった。TechRadarはこの手口を「攻撃能力における重大な進化(a significant evolution in offensive capability)」と評しており、生成AIが高度なサイバー攻撃の実行基盤として悪用されつつある現状を浮き彫りにしている。 攻撃者はAIの安全フィルターを迂回するために「正規のバグバウンティプログラムに参加している」と虚偽の主張を行い、1,084行に及ぶハッキングマニュアルをAIに与えた。このマニュアルには、履歴ファイルを削除して証跡を消す手順も含まれていた。34回のセッションにわたって1,088件のプロンプトが入力され、5,317件のコマンドが生成された。そのうちリモートコマンドの約75%をClaude Codeが実行した。 侵害の規模と被害 流出したデータの規模は極めて深刻だ。連邦税務局(SAT)からは1億9,500万件の納税者記録が盗まれ、攻撃者は偽の納税証明書を発行するサービスまで構築していた。メキシコシティの戸籍局では2億2,000万件の市民登録情報が侵害された。ハリスコ州においては、健康情報やDV被害者データを含む37のデータベースサーバーと13ノードのクラスターを含むフルサーバー制御権が奪われた。 攻撃者は「BACKUPOSINT.py」と名付けたカスタムツールを作成し、305台の内部サーバーからデータを抽出してOpenAIのシステムに送信。政府インフラのマッピングレポートを2,597件生成した。さらに異なるCVEを標的とした20本のカスタムエクスプロイトスクリプトと、BashおよびPythonで書かれた400本以上の攻撃スクリプトも確認されている。 攻撃が成功した背景 調査の結果、被害を受けた機関はソフトウェアの更新が不十分であり、パスワード変更も頻繁に行われていなかったことが判明した。また、適切なネットワークセグメンテーションが実施されていれば、侵入後の横断的な移動(ラテラルムーブメント)を防げた可能性があると指摘されている。 今回の事件は、AIが単独攻撃者の能力を飛躍的に拡大させるリスクを改めて示した。従来は高度な技術力を要した大規模な政府機関への侵入が、AIを活用することで大幅に低コスト・低スキルで実行可能になりつつあり、セキュリティコミュニティにおいて生成AIの悪用対策が急務となっている。

April 18, 2026

GitHubが選ぶ最も影響力あるオープンソースプロジェクト12選(GitHub Universe 2025)

概要 GitHubはGitHub Universe 2025のOpen Source Zoneで特に注目すべき12のオープンソースプロジェクトを発表した。インフラ整備からクリエイティブコーディング、セキュリティ、3Dグラフィックスまで、オープンソースの可能性を体現する多彩なプロジェクトが選出された。次回2026年のコホートへの応募も受け付けており、無料チケットとブース出展スペースが提供される。 選出された12プロジェクトには、バックエンドプラットフォームの Appwrite(50,000以上のスター)、Goプロジェクトのパッケージ配布を自動化する GoReleaser(15,000以上のスター)、macOSの事実上の標準パッケージマネージャーである Homebrew が含まれる。また、ゼロから構築された独立系オープンソースブラウザ Ladybird(1,200人以上のコントリビューター)、わずか1GBのフットプリントでGPU不要の軽量ビジュアル言語モデル Moondream(600万回以上のダウンロード)、2009年から続くZshフレームワーク Oh My Zsh、1999年にIntelの研究プロジェクトとして始まったコンピュータビジョンライブラリ OpenCV も名を連ねた。 注目プロジェクトの詳細 セキュリティ分野では、OpenSSFコミュニティによる実践的なセキュリティチェックリスト Open Source Project Security Baseline (OSPSB) が選出された。GitHubのSecure Open Source Fundが支援するこのプロジェクトは、チーム規模を問わず現実的な最小要件を提示し、メンテナーの負担を軽減しながらエコシステム全体のセキュリティ向上を目指している。「オープンソースの回復力は共有された責任だ」(Xavier René-Corail氏)というメッセージが、その理念を端的に表している。 クリエイティブ・グラフィックス分野からは、アーティストや教育者向けのJavaScriptライブラリ p5.js とそのルーツである Processing、WebGLとWebGPUを基盤とするHTML5 2Dグラフィックスエンジン PixiJS(46,000以上のスター)、そしてTHREE.js向けの3Dガウシアンスプラッティングレンダラー SparkJS が選出された。PixiJSはHappy WheelsやSubway Surfers、メトロポリタン美術館のアニメーションにも採用されており、そのエコシステムへの影響力は広範にわたる。最後に、トピックベースのスレッド機能で会話の整理を重視するオープンソースのチャットプラットフォーム Zulip(1,500人以上のコントリビューター)も選出された。 選出テーマと意義 今回の選出には4つの共通テーマが見られる。第一にアクセシビリティ:p5.js、Processing、Moondreamは参入障壁の低減を重視する。第二にインフラ:Homebrew、GoReleaser、OpenCVは広範なエコシステムを支える基盤ツールだ。第三にセキュリティ:OSPSBはメンテナー支援へのエコシステム投資を体現している。第四にクリエイティブ応用:グラフィックス、ビジュアライゼーション、芸術的ツールの充実した代表が揃った。 これらのプロジェクトは、オープンソースが単なるソフトウェア開発の手段にとどまらず、医療・ロボティクス・教育・エンターテインメントなど社会の幅広い領域に影響を与えていることを示している。GitHubはOpen Source Zoneを通じ、こうした取り組みの可視化とコミュニティの活性化を継続している。

April 18, 2026

Go製TypeScriptコンパイラ「tsgo」プレビュー公開、型チェックが最大33倍高速化

概要 MicrosoftはTypeScript 7向けの新しいネイティブコンパイラ「tsgo」のプレビュー版(@typescript/native-preview)を公開した。従来のJavaScript製コンパイラtscをGoで書き直したもので、大規模なTypeScriptプロジェクトにおけるコンパイル・型チェックのパフォーマンスボトルネックを解消することを目的としている。単なる言語の移植にとどまらず、Goのネイティブコンパイルと並列処理能力を活かした「共有メモリ並行処理」を採用しており、大幅な速度向上を実現している。 パフォーマンス改善の実績 Microsoftが公開した公式ベンチマークでは、複数の実際のOSSコードベースで顕著な速度向上が確認されている。VS Code(約150万行)では10.4倍、Playwright(約35.6万行)では10.1倍、TypeORM(約27万行)では13.5倍の高速化を達成した。 コミュニティによる独自検証でも同様の効果が確認されている。約700行のECバックエンドコードを対象としたテストでは、コンパイル全体の所要時間がtscの0.28秒からtsgoの0.026秒へと約10.8倍短縮された。型チェックに限ると0.10秒から0.003秒へと約33.3倍の高速化が達成されている。さらにメモリ使用量についても、68,645KBから23,733KBへと約2.9倍の効率化が確認されており、速度だけでなくリソース消費の面でも大きなメリットがある。 インストールと利用方法 tsgoはnpm経由でインストールできる。 npm install -D @typescript/native-preview npx tsgo -v VS Codeでも利用可能であり、既存のTypeScriptプロジェクトへの組み込みが容易になっている。ただし、現時点ではプレビュー段階であり、--initなどのプロジェクト初期化機能は未実装のため、tsconfig.jsonの生成には従来のtscが引き続き必要となる。 現状と今後の展望 tsgoはTypeScript 7の正式リリースに向けたプレビューとして公開されており、まだ開発途上の段階にある。現時点では一部の機能に制限があるものの、実測ベンチマークによってMicrosoftが主張する10倍以上の速度向上は実際に達成されていることが確認されている。大規模なTypeScriptコードベースを抱える開発チームにとっては、CI/CDパイプラインの高速化や開発体験の大幅な向上が期待できる。TypeScript 7の正式リリース時にはtsgoが標準コンパイラとなる予定であり、エコシステム全体に影響を与える重要な変化となりそうだ。

April 18, 2026

IonQがSkyWater Technologyを約18億ドルで買収、量子コンピューティングの垂直統合フルスタック企業へ

概要 量子コンピューティング企業IonQ(NYSE: IONQ)は2026年1月、米国拠点の半導体受託製造会社SkyWater Technology(NASDAQ: SKYT)を約18億ドルで買収する計画を発表した。取引は1株あたり35ドル(現金15ドル+IonQ株式20ドル)の混合対価で行われ、取引発表前の30日間加重平均株価に対して38%のプレミアムが付く。IonQ CEO Niccolo de Masi氏は「この変革的な買収によりIonQの量子コンピューティングロードマップを大幅に加速し、国内でのフルスケールなサプライチェーンを確保できる」とコメントしており、取引は2026年第2四半期から第3四半期のクローズを見込んでいる。 戦略的意義と垂直統合の実現 この買収が完了すれば、IonQは世界初の垂直統合型フルスタック量子プラットフォーム企業となる。SkyWaterはミネソタ州、フロリダ州、テキサス州に製造拠点を持ち、米国防省のDMEAからカテゴリー1A信頼性ファウンドリ認定を受けた米国最大の純粋受託半導体製造会社だ。この認定は航空宇宙・防衛分野での国家安全保障要件を満たすために不可欠なものであり、IonQが量子チップの設計・開発から製造・展開まで一貫して国内サプライチェーン上で完結させる基盤となる。SkyWater CEO Thomas Sonderman氏は「この統合はSkyWaterの進化における重要な転換点であり、次世代量子チップの複数のエンジニアリング経路を加速させる」と述べた。 量子技術ロードマップの加速 買収による最大の技術的効果は、量子チップ開発タイムラインの前倒しだ。IonQは2028年に20万量子ビットQPUの機能テストを開始することを目標とし、これにより8,000以上の超高忠実度論理量子ビットの実現を見込む。さらに200万量子ビットチップの開発も最大1年前倒しで進む見通しだ。現在IonQは2025年に99.99%の2量子ビットゲート忠実度を達成しており、SkyWaterとの統合でウェハー反復サイクルを短縮し、研究開発を一段と加速させる計画だ。SkyWaterの各製造拠点は「地域量子生産ハブ」として機能しながら、従来の半導体顧客向け独立ファウンドリ事業も継続する。 市場・政府需要への対応 IonQはメリーランド州カレッジパークを本拠とし、北米および海外に1,300人超の従業員を抱える。AWS、AstraZeneca、NVIDIAなどとのパートナーシップを持ち、クラウド経由で量子システムを提供してきた。今回の買収でSkyWaterの防衛・政府向けの実績を取り込むことで、米国政府・同盟国・防衛パートナーに対する量子プロバイダーとしての地位を強化する。医薬品、金融、クラウドコンピューティングなど幅広い産業での量子コンピューティング商用化にも弾みがつくとみられており、IonQは2025年通期売上高を従来ガイダンス(1億600万〜1億1,000万ドル)の上限またはそれ以上と見込んでいる。

April 18, 2026

OpenAI、Cerebrasと3年間で200億ドル超のチップ契約を締結——株式ワラントも取得へ

概要 OpenAIが、AIチップスタートアップのCerebras Systemsに対して3年間で200億ドル(約3兆円)以上を支出する大型契約を締結したと、The Informationが2026年4月17日に報じた。この金額は、2026年1月に報道された100億ドル超の契約をさらに倍増させるもので、AIインフラ確保に向けたOpenAIの積極姿勢を改めて示した形だ。また契約の一環として、OpenAIはCerebrasの少数株主持分となるワラント(新株予約権)を受け取る見通しで、総支出が300億ドルに達した場合には最大10%の株式に相当するとされる。 契約の詳細と背景 チップ購入費用に加え、OpenAIはCerebrasのデータセンター開発を支援するために約10億ドルを提供することにも合意したと伝えられている。Cerebrasは、Nvidiaと競合するAIチップメーカーで、独自のウェーハスケールエンジン(Wafer-Scale Engine)技術を用いた大規模推論向けプロセッサを手がける。OpenAIのCEOサム・アルトマンはCerebrasの初期投資家でもあり、今回の取引は単純な調達契約にとどまらず、深い戦略的パートナーシップの性格を帯びている。なお、OpenAI・Cerebrasの双方は報道時点で契約の詳細を公式に確認していない。 Cerebras IPOへの影響 今回の契約は、CerebrasがQ2 2026(2026年4〜6月期)中に計画しているIPO(新規株式公開)とも密接に連動している。Cerebrasの直近評価額は231億ドルとされており、IPOでは約350億ドルの時価総額を目指して30億ドルの資金調達を計画している。OpenAIという大口顧客の存在が投資家に対する信頼性を高め、上場計画の後押しとなる構図だ。AI推論(モデルが応答を生成するプロセス)に必要な計算リソースへの需要が急増するなか、OpenAIがNvidiaへの依存を分散させる動きは業界全体に影響を与えうる重要なシグナルといえる。

April 18, 2026

ASE Holdings、InnoLuxのFab 5を約4億6,000万ドルで買収——先端パッケージング能力を拡充

概要 半導体パッケージング世界最大手のASE Holdings(日月光投資控股)は2026年4月15日、液晶パネルメーカーInnoLux(群創光電)が保有するFab 5製造拠点を、NT$148.5億(約4億6,000万米ドル)で買収することを取締役会で承認したと発表した。台湾半導体産業における大型M&Aとして注目を集めており、ASEは既存の製造インフラを取得することで、新工場の建設を伴わずに生産キャパシティを迅速に拡大する戦略をとっている。 背景:InnoLuxの工場売却と業界再編 InnoLuxがFab 5を売りに出した背景には、液晶パネル市場における深刻な供給過剰がある。パネル需要の低迷により稼働率が落ち込む中、同社は工場の選択と集中を進める必要に迫られた。Fab 5に先立ち、InnoLuxはFab 2をSPIL(矽品精密工業)に売却しており、今回のFab 5売却はその流れを引き継いだ形となる。台湾の半導体・ディスプレイ産業では、需給環境の変化を受けた資産の再配分が加速しており、異業種間でのM&Aが相次いでいる。 戦略的意義と今後の展望 ASEにとってFab 5の取得は、半導体パッケージング需要の拡大に対応するための戦略的投資と位置づけられる。AIや高性能コンピューティング向けの先端パッケージング技術(チップレット統合やアドバンスドパッケージングなど)への需要が急増する中、既存の製造拠点を活用することで設備投資のリードタイムを大幅に短縮できる。業界アナリストは、今回の買収がASEの受注拡大余地を広げるとともに、台湾の半導体サプライチェーン強化にも貢献するとみている。今後は取得した設備の半導体パッケージング用途への転換・統合が進められる見通しだ。

April 18, 2026