Anthropic、英Nscaleと6年450億ドルの計算資源契約 IPO見据え調達を加速

概要 Anthropicは、英国のAIインフラ新興企業Nscaleと6年間で総額450億ドル規模のコンピュート調達契約を締結した。年間平均約75億ドルに相当するこの契約は、ウェストバージニア州に建設中のNscaleの主力データセンターの計算能力、約460メガワット分を対象とする。稼働開始は2027年後半を予定しており、Nvidiaの次世代チップシステム「Vera Rubin」を用いて計算資源を供給する。Vera Rubinは6種類の異なるチップが協調動作する構成で、現時点のチップ設計の最先端に位置づけられる。 Nscaleという企業とディールの位置づけ Nscaleはロンドンに拠点を置く設立からわずか2年ほどの新興企業でありながら、Microsoftとも契約を結ぶなど急成長を遂げてきた。今回のウェストバージニア州の施設は、もともとMicrosoftが計画していたものの撤退した経緯があり、そこにAnthropicが入る形となった。今回の契約はNscaleが抱える総額510億ドルの契約残高の中でも最大規模となる。Nscaleは米国での新規株式公開(IPO)を準備しており、Anthropic自身も将来的なIPOを見据えているとされ、両社にとって今回の大型契約は資本市場での評価を高める材料となる可能性がある。 計算資源獲得競争の加速 Anthropicはこの8カ月間で、ノルウェーのVoltaとの100億ドル規模の契約、AMDとの50億ドル規模の関連契約、SpaceXとの月額12.5億ドル相当の契約、さらにAmazon・Google・Broadcomとの契約拡張など、立て続けに大型のコンピュート調達契約を結んできた。背景には、OpenAIをはじめとする競合他社との開発競争があり、モデルの学習・推論を支える計算基盤の確保が各社にとって最優先課題となっている。Google、OpenAI、Metaも同様に計算資源の争奪戦に加わっており、AI業界全体で数百億ドル規模のインフラ投資が連鎖的に発表される状況が続いている。 今後の見通し Nscaleの施設が稼働を開始する2027年後半までには、Vera Rubin世代のチップが実際にどの程度の性能を発揮するかが注目される。Anthropicにとっては、複数のクラウド・チップベンダーと分散して契約を結ぶことで供給リスクを分散しつつ、モデル開発のスケールを維持する狙いがあるとみられる。一方で、こうした巨額契約の積み重ねはAnthropicの資金調達負担を増大させており、IPOを含む資本戦略の行方が今後の焦点となりそうだ。

August 27, 2026

Intel、データセンターからエッジまでを貫くエージェントAI向け新アーキテクチャ3製品を発表

概要 Intelは8月24日、半導体アーキテクチャの祭典Hot Chips 2026において、エージェント型AI向けの新アーキテクチャ3種を発表した。データセンター向けXeonプロセッサ「Diamond Rapids」、推論処理に特化したGPU「Crescent Island」、クライアント・エッジ向けSoC「Wildcat Lake」の3製品で構成され、AIエージェントが自律的にタスクを遂行するワークロードをデータセンターからエッジデバイスまで一気通貫で支える製品ラインアップの刷新を打ち出した。Intel CTOのPushkar Ranade氏は「エージェント型AIは、トランジスタレベルからシステム全体まで、コンピュータ設計を根本的に変えている」と述べ、AIエージェントの普及がチップ設計思想そのものに影響を与えているとの認識を示した。 Diamond Rapids ― 次世代エンタープライズXeon 次世代Xeonプロセッサ「Diamond Rapids」は、自社の最先端プロセスノードIntel 18A-Pを採用し、最大256コア、1.28GBのラストレベルキャッシュ(LLC)を搭載する。メモリは16チャネル構成で最大12800 MT/sの転送速度に対応し、I/O面ではPCIe Gen6を128レーン、CXL 3.0をサポートする。大規模なコア数と広帯域なメモリ・I/Oにより、エンタープライズ規模でのAI処理を見据えた設計となっている。 Crescent Island ― 推論特化GPUとWildcat Lake ― エッジ向けSoC 推論処理に特化したGPU「Crescent Island」は、Xe3Pアーキテクチャを基盤に32基のXeコアと256基のXMXエンジンを搭載し、最大480GBのLPDDR5Xメモリを備える。消費電力は350ワットの空冷設計に収められており、リアルタイムでのAI推論処理の最適化を目指す製品と位置付けられている。一方、クライアント・エッジ向けSoC「Wildcat Lake」(Intel Core Series 3)は、パフォーマンスコア2基と効率コア4基の構成に、LPDDR5X-7467メモリ、Wi-Fi 7、Bluetooth 6.0を組み合わせ、エッジ環境でのAIエージェント実行を想定した設計となっている。 技術基盤と展望 これら3製品は、3Dパッケージング技術「Foveros Direct 3D」と、オープンなチップレット標準規格「UCIe」を共通の技術基盤としており、将来的な拡張性とチップレット間の相互運用性を重視した設計思想がうかがえる。データセンターの大規模推論から手元のエッジデバイスまで、AIエージェントが自律的に判断・実行するワークロードを支えるハードウェア基盤を段階的に整備する狙いがあり、AIエージェントの実用化が進む中でIntelが半導体設計の主導権を取り戻そうとする動きとして注目される。

August 27, 2026

NvidiaがHugging Faceを約129億ドルで買収へ、オープンソースAIエコシステムの取り込みが加速

概要 米The Informationの報道により、AI半導体大手のNvidiaがオープンソースの機械学習モデル共有プラットフォームHugging Faceを約129億ドル(約2兆円)で買収する契約に合意したことが明らかになった。ただし契約はまだ正式には署名されておらず、株式と現金の比率や規制当局の審査といった詳細も明らかになっていない。両社ともコメントを控えており、交渉が決裂する可能性も残されているという。今回報じられた129億ドルという評価額は、Hugging Faceが2023年のシリーズ資金調達時に付けられた45億ドルの評価から大きく上昇したものであり、Nvidia自身が昨年、70億ドル評価で5億ドルの投資を提案し断られていた経緯もある。 買収の狙いと背景 Nvidiaにとって今回の買収は、単なる投資先の追加にとどまらない戦略的な意味を持つ。OpenAIやGoogle、Amazon、Anthropicといった主要AI企業が相次いで自社製AIチップの開発を進める中、Nvidiaは自社のGPU支配力を将来にわたって守る必要に迫られている。オープンソースAIエコシステムの中核を担うHugging Faceを取り込むことで、開発者やモデル提供者との接点を強化し、GPU需要を生み出すエコシステムそのものを掌握する狙いがあるとみられる。加えて、Nvidiaは約1年前に縮小したクラウド事業「DGX Cloud」の再強化にもつながる可能性が指摘されている。 Hugging Faceは「GLM」シリーズや「Qwen」シリーズといった最先端のオープンソースモデルを含む膨大なモデル群をホスティングするプラットフォームで、スマートフォン向けの小型モデルから画像・動画生成モデルまで幅広く対応する。さらに無料で高性能なGPU推論を提供する「ZeroGPU」というサービスも展開しており、AI研究コミュニティにとって欠かせないインフラとなっている。事業面では年間売上が約1億5000万ドルに達し、2ヶ月前の約1億ドルから急成長を遂げ、ほぼ黒字化の状態にあるという。 業界への影響 今回の買収報道は、AIインフラ企業を巡るM&Aが加速している最中に飛び込んできた。ほぼ同時期に、決済大手StripeによるAIモデルルーティングサービスOpenRouterの買収(評価額13億ドルから上昇し70億ドル超)も報じられており、AI基盤を支えるインフラ企業の統合が業界全体で急速に進んでいる様子がうかがえる。 一方で、既にAI向けGPU市場で圧倒的なシェアを握るNvidiaが、オープンソースAIコミュニティの重要な拠点であるHugging Faceまで傘下に収めることには懸念の声も上がっている。研究者や開発者が日常的に依存するモデル配布・共有基盤の所有構造が変わることで、AIエコシステムにおける中立性やアクセスの公平性がどう維持されるかが今後の焦点となりそうだ。契約はまだ署名前の段階であり、今後正式な発表があるか、あるいは交渉が破談となるかを含め、続報が注目される。

August 27, 2026

ノルウェー政府の共通デジタル基盤に大規模DDoS攻撃、電子認証やAltinnなど約10サービスが一時停止

概要 ノルウェーの行政デジタル化庁(Digdir)が運用する共通デジタル基盤が8月25日午前3時38分(現地時間)、大規模な分散型サービス拒否(DDoS)攻撃を受け、電子認証・電子署名を含む約10の政府サービスに障害が発生した。影響を受けたのは、公共サービスへのログイン、電子ID・電子署名の発行、セキュアな電子メール、行政フォーム、省庁間のデータ連携基盤など。ID-portenやeSigneringといった中核サービスは断続的にアクセス困難な状態が続き、これらの基盤に依存する行政ポータルAltinnや税務当局Skatteetatenのサービスにも波及した。一部のサービスでは短時間の完全停止も発生し、利用者は接続エラーや応答の遅延、ログイン処理の長時間化に見舞われた。 攻撃の帰属と当局の対応 犯行声明を出した組織や個人は今のところ確認されておらず、公式な攻撃主体の特定には至っていない。ノルウェー国内メディアはロシアの関与の可能性を推測して報じているが、これは憶測の域を出ておらず、裏付けとなる証拠は示されていない。基盤の運用を担うDigdirの長官Frode Danielsen氏は、調査の結果、組織のシステムに対するセキュリティ侵害や個人データの漏えいを示す兆候は確認されていないと説明した。同庁はノルウェー国家安全保障局(NSM)およびデータ保護当局(Datatilsynet)に事案を通報しており、外部委託先のVivicta社とも連携して対応にあたっている。 繰り返される攻撃という文脈 今回の攻撃は、Digdirが標的となった直近数か月で3回目のDDoS攻撃だという。政府機関の共通認証基盤や行政ポータルのような、多数の公共サービスが依存する中核インフラが繰り返し狙われている実態は、単発的な妨害というより、国家機関のデジタル基盤に対する持続的な圧力の一環である可能性を示唆する。個人データの流出には至らなかったとはいえ、電子認証や電子署名といった機能は税務申告や行政手続きなど市民生活に直結するサービスの入り口であり、その一時停止は実害を伴う。欧州各国の政府機関を狙ったサイバー攻撃が続く中、可用性の確保とインシデント対応の迅速な公表体制が、今後も重要な論点となりそうだ。

August 27, 2026

医療機器大手Boston Scientific、サイバー攻撃で受注・出荷業務が世界規模で停止

概要 医療機器大手のBoston Scientificは8月25日、サイバー攻撃を検知したことを明らかにした。翌26日にはSECへの開示文書で、この攻撃が「同社の情報システムおよび業務アプリケーションへのアクセスに障害と制限を引き起こし、今後も引き起こす見込みである」と説明し、注文処理や顧客への出荷ができない状態にあると報告した。同社はサードパーティのサイバーセキュリティ専門家を起用してインシデント対応にあたっているが、攻撃の全容や手口、財務・業務への影響、システム復旧の見通しは依然として不明としている。ペースメーカーや植込み型除細動器などを手がけるBoston Scientificは、59,000人の従業員を擁し127カ国13拠点で製造を行う企業で、年間およそ4,800万人の患者に関わる製品を提供しており、2025年の売上高は200億ドルを超える。患者データが流出したかどうかについて、広報担当者はコメントを避けている。 業務への影響と株価反応 Boston Scientificは企業インフラの多くをMicrosoftおよびAmazon Web Servicesに依存しているが、今回の攻撃がこれらのサービスに起因するかは明らかになっていない。業務アプリケーションへのアクセス制限は世界規模で発生し、これにより受注処理と顧客向けの出荷が停止している。開示を受けてBoston Scientificの株価は当日朝に4%超下落しており、投資家が業務継続性と財務への影響を懸念していることがうかがえる。ランサムウェアによる攻撃かどうか、また実際にデータが窃取されたかについて同社は明言しておらず、記事執筆時点でいずれの脅威アクターも犯行声明を出していない。 医療機器業界を狙う攻撃の連鎖 Boston Scientificへの攻撃は、医療機器メーカーを標的にした一連の事案の最新例だ。2026年3月にはStrykerがグローバルなネットワーク障害に見舞われ、イラン情報機関とつながりを持つとされるハッカー集団がMicrosoftのツールを悪用して数万台のデバイスをリモートで削除した事案が確認されている。また4月にはMedtronicがサイバー攻撃を公表し、その後ShinyHuntersが犯行を主張、氏名や社会保障番号、健康情報を含む患者データを窃取したとしている。Abbott Laboratoriesも本年標的となった企業の一つに数えられており、医療機器業界全体でサイバー攻撃のリスクが高まっていることを示している。Boston Scientificの復旧時期は現時点で明らかになっておらず、被害の全容が判明するまで業務への影響が続く可能性がある。

August 27, 2026

「Ox Alpha」の正体は中国Z.ai、GLM-5.3後継として水曜日に重み公開へ

概要 先週末、OpenRouter上に匿名で突如ローンチされたオープンウェイトモデル「Ox Alpha」が、AIコミュニティで大きな話題となった。開発元を明かさないまま登場したにもかかわらず、各種ベンチマークやリーダーボードで競合他社のトップクラスのモデルを上回る成績を叩き出し、その正体をめぐって憶測が飛び交っていた。Bloombergの報道により、この謎のモデルの開発元が中国のAI企業Z.aiであることが確認された。 GLM-5.3後継としての位置づけ Z.aiはOx Alphaについて、同社のGLMシリーズの最新イテレーションであることを認めた。Ox Alphaは「コーディング、継続的なエージェント作業、本番環境のワークロード」向けに設計された推論モデルであり、長時間にわたるソフトウェアエンジニアリング作業や複雑な推論、テキストと視覚情報を組み合わせたワークフローに対応するという。同社は今月、GLMシリーズの前バージョンであるGLM-5.3をリリースしたばかりで、これは特定のベンチマークにおいてAnthropicのFable 5と競合する性能を示していた。Ox Alphaはこの流れを継ぐ形で投入されたモデルとみられ、Z.aiは重みを近く公開する方針を示している。 業界への影響と今後の見通し 匿名ローンチという異例の手法にもかかわらずトップクラスの性能を示したOx Alphaの事例は、中国発の低コストかつ高性能なオープンウェイトモデルが、OpenAIやAnthropicといった高額なフロンティアモデルを提供する企業の市場シェアを脅かしつつある現状を改めて浮き彫りにした。Z.aiが重みを公開すれば、第三者による検証や独自ベンチマークでの比較が進み、Ox Alphaの実力や既存モデルとの位置づけがより明確になるとみられる。

August 27, 2026

GiteaのRCE脆弱性CVE-2026-60004が実際に悪用、自己ホスト型インスタンスが暗号資産マイナーに侵害される

概要 OSSのGitホスティングサービスGiteaにおける重大な脆弱性CVE-2026-60004(CVSS 9.8)が実際に悪用されていることが確認され、CISA(米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)は2026年8月25日、これを既知悪用脆弱性(KEV)カタログに追加した。脆弱性はGiteaのdiffpatch APIエンドポイントに存在し、リポジトリへの書き込み権限を持つ攻撃者が不正なパッチを送信することで、リポジトリ制御下のコンテンツから実行可能なGitフックをインストール・実行させ、Giteaサービスアカウント(OSユーザー)の権限で任意のシェルコマンドを実行できる。脆弱性を発見・報告したのはSalesforceのセキュリティ研究者Shai Rod(NightRang3r)氏で、GHSA-rcr6-4jqh-j84mとしても追跡されている。 悪用の手口と実際の被害 本来は認証済みでリポジトリへの書き込み権限を持つユーザーが前提となる脆弱性だが、Giteaはデフォルトで自己登録(セルフサインアップ)が有効になっているため、未認証の攻撃者でもアカウントを作成し、リポジトリを作って攻撃を仕掛けることが可能だ。DISABLE_REGISTRATION=false、REGISTER_EMAIL_CONFIRM=false、ENABLE_OPENID_SIGNUP=true、REQUIRE_SIGNIN_VIEW=falseといった設定が有効な場合に特に悪用が容易になるという。 実際に、セキュリティ研究者Andrey(@Causelof)氏が運用する自己ホスト型Giteaインスタンスが自動スキャナーによって侵害された事例が報告されている。攻撃はアカウント登録からリポジトリ作成、Gitフックを介したエクスプロイトの発火までわずか11秒で完了し、Dockerコンテナ内でgitユーザーとして実行された。侵入後のドロッパースクリプトはLD_PRELOADやLD_LIBRARY_PATHといった環境変数を消去し、高CPU使用率のプロセスを探索したうえでアーキテクチャに応じたペイロードをダウンロード、競合するプロセスを停止させてから暗号資産マイニングソフトウェアを実行した。この結果、CPU使用率が70%を超えて急上昇し、ホスティング事業者の利用規約に抵触する事態となった。 影響範囲と対応 脆弱性の影響を受けるのはGitea 1.17から1.27.0までのバージョンで、2026年7月27日にリリースされたv1.27.1で修正された。最新版はv1.27.2。侵害が成立した場合、分離レベルによっては設定ファイルやアプリケーションのシークレット、データベース認証情報、OAuth認証情報などが露出する可能性がある。現在も約5,000台のGiteaインスタンスがインターネットに公開されたままとなっており、このうち本脆弱性の影響を受ける台数は明らかになっていない。 CISAは拘束的運用指令(BOD)26-04に基づき、米連邦文民行政機関に対し2026年8月28日までのパッチ適用を義務付けた。なお、Giteaでは2026年7月にもリバースプロキシ設定を狙った別の重大な認証バイパス脆弱性CVE-2026-20896が実際に悪用されており、今回で立て続けの被害となる。管理者はv1.27.2以降へのアップグレードに加え、自己登録機能の無効化やサーバーの侵害有無の確認を急ぐ必要がある。

August 27, 2026

Kaltura配布の動画プレーヤーmwEmbedに未修正の重大脆弱性、認証不要でRCEとファイル読み取りが可能

概要 CERT/CCは8月25日、Kalturaが配布するHTML5動画プレーヤーライブラリ「mwEmbed」(html5lib)に存在する未修正の重大脆弱性CVE-2026-19912(CVSS 10.0)およびCVE-2026-19913(CVSS 9.1)を公表した。いずれも認証なしでネットワーク経由での悪用が可能で、前者はリモートコード実行、後者はサーバー上の任意ファイル読み取りにつながる。研究者は2026年3月23日に脆弱性を報告し、CERT/CCも7月8日にKaltura社への通知を試みたが、同社からの応答は一切得られておらず、パッチが提供されないまま技術的詳細が公開される事態となった。影響を受けるのはhtml5lib v2.45、v2.103をはじめとするv2.x系のリリースで、個別導入環境だけでなくKalturaの共有CDNインフラを利用する複数テナントにも影響が及ぶ可能性がある。 技術的な詳細 両脆弱性の根本原因は、mwEmbedLoader.phpエンドポイントがユーザー制御のServiceUrlパラメータをPHPのunserialize()関数で検証なしに処理している点にある。CVE-2026-19913では、ServiceUrlにfile://形式のパスを指定することで、サーバーが本来意図するAPIレスポンスの代わりにローカルファイルを読み込んでしまう。逆シリアル化に失敗した際のエラーメッセージにファイルの生の内容がそのまま反映されるため、攻撃者はこれを利用してファイル内容を窃取できる。研究者はこの手法により/opt/kaltura/app/configurations/local.iniを取得し、データベース接続文字列や管理者/コンソールのパスワード、内部ホスト情報を入手できたことを実証している。 より深刻なCVE-2026-19912では、ServiceUrl経由で悪意あるシリアル化済みPHPオブジェクトを送り込むことに加え、uiconf_idパラメータのサニタイズ不備を突いたディレクトリトラバーサル(../など)によって、Web公開されているキャッシュディレクトリ配下に任意のペイロードを書き込める。書き込まれたファイルはWebサーバーの実行権限でそのまま実行されるため、リモートコード実行が成立する。この攻撃はファイルベースのキャッシュバックエンド(Kalturaのデフォルト構成)を前提とする。研究者のGerjan Wemekamp氏は、2019年のKaltura Serverの Dockerイメージを対象にエンドツーエンドのWebシェル設置を実証したとしつつ、両方の攻撃チェーンが現行リリースにも残存していることを確認したと述べている。 対応状況と推奨される緩和策 CERT/CCは脆弱性情報のステータスを「Unknown」とし、Kalturaからの公式声明は現時点で受領していないと明記している。パッチが提供されるまでの間、CERT/CCおよび報告者はいくつかの緩和策を提示している。具体的には、WAFやCDN側でmwEmbedLoader.phpエンドポイントへの外部アクセスを遮断または無効化すること、ServiceUrlパラメータを正規のAPIホストのみに限定するホワイトリスト運用とすること、uiconf_idにディレクトリトラバーサルを示す値が含まれる場合は拒否すること、キャッシュディレクトリ内でのPHP実行を禁止すること、そして万一侵害の可能性がある場合は設定ファイルに含まれる認証情報をすべてローテーションすることが挙げられている。mwEmbedを組み込んだサイトは多数に上るとみられ、パッチ未提供のまま詳細が公開されたことで、悪用リスクは当面続くとみられる。

August 27, 2026

VS Code 1.135リリース、外部アプリのエージェントセッション引き継ぎと第二意見機能「Rubber Duck」を追加

概要 Microsoftは8月26日、Visual Studio Codeの月例アップデート「バージョン1.135」を公開した。今回のリリースはAIエージェント機能の強化が中心で、他のアプリケーションで開始したCopilotやClaudeのエージェントセッションをVS Code側から引き継いで作業を継続できる機能や、あるモデルの作業内容を別のモデルにレビューさせる実験的機能「Rubber Duck」が新たに追加された。 外部エージェントセッションの引き継ぎ 新設定chat.agentSessions.showExternalを有効にすると、VS Codeは最近更新された外部セッションを最大2件まで表示し、セッションリストの「External」サブメニューから表示対象を選べるようになる。ターミナルやブラウザなど別環境で始めたエージェントとの対話をそのままVS Code上に呼び出して継続作業できるのが狙いで、エージェントは新しい「エージェントホストプロトコル(AHP)」に基づく専用プロセスとして実行される仕組みに刷新された。これにより複数のVS Codeウィンドウから同一セッションへ同時に接続することも可能になっている。なお、Copilotエージェントの挙動はCopilot SDKによってCopilot CLIなど他のCopilot製品と統一されている。 検証機能「Rubber Duck」 実験的機能として追加された「Rubber Duck」は、Copilotのエージェントホストセッション内で/rubber-duckコマンドを実行することで利用できる。あるモデルが行った作業を、性質の異なる補完的なモデルに検証させ、見落としがちな詳細やエッジケースを洗い出す「第二意見」を得るための仕組みだ。単一モデルの出力をそのまま信頼するのではなく、モデル間のクロスチェックによって品質を担保するアプローチで、AIエージェントの活用が進む中での検証手段の一つとして位置づけられる。 そのほかの変更点 エージェント関連ではセッション表示のレイアウトも整理され、設定sessions.layout.singlePaneDetailPanelによりシングルペインレイアウトがデフォルトとなったほか、セッション情報の表示も簡潔化・再配置された。チャット機能では、エディタのようにスクロール時に見出しを固定表示する「スティッキースクロール」が実験的機能として加わり、chat.stickyScroll.enabledなどの設定で有効化できる。またチャットの使用量表示がモデルごとの入力・キャッシュ入力・出力トークン数の内訳を確認できる形に詳細化された。このほか、ローカルのエージェント実行環境をサンドボックス化する機能がオプトイン方式に変更されている。 一連の変更は、外部ツールとの連携やマルチモデルによる相互検証など、開発者がエージェントをより実務的に使いこなすための土台整備という色合いが強い。今後のリリースでも、エージェントホストプロトコルを軸にした機能拡張が続くとみられる。

August 27, 2026

悪意あるWebサイトを開くだけでローカルAIエージェントが汚染される NVIDIA NemoClawの脆弱性CVE-2026-65105

概要 Oasis Securityは、NVIDIAが開発するローカルAIエージェント基盤「NemoClaw」に、悪意あるWebページを閲覧するだけでローカルのAIモデルが汚染されてしまう脆弱性(CVE-2026-65105)を発見したと発表した。NemoClawはバックエンドとしてOllamaサーバーを起動するが、その際に環境変数OLLAMA_HOST=0.0.0.0:11434を設定し、認証なしで全ネットワークインターフェースに待ち受けさせてしまう。これにより攻撃者は、ユーザーが悪意あるサイトを開いただけでローカルのOllamaサーバーに到達し、AIエージェントの応答内容を裏側から書き換えられる状態になっていた。発見したOasis Securityの研究責任者Elad Luz氏は、この問題を「誰もが見ることができるガードレールの下の層に位置し、検出が非常に困難な完全性問題を引き起こす」と説明している。 攻撃の仕組み 攻撃の核心はDNSリバインディングによるブラウザの同一オリジンポリシー回避にある。Ollamaはループバックアドレス以外にバインドされている場合、Host/Originヘッダーの検証をスキップし、CORSも攻撃者のドメインを同一オリジンとして扱ってしまう。この隙を突いて悪意あるWebサイトがブラウザ経由でlocalhostのOllama APIにアクセスし、モデル作成用の/api/createエンドポイントを呼び出してGoテンプレートを改ざんする。このテンプレートは、構造化されたメッセージを生の推論用テキストへと変換する処理を担っており、汚染されたテンプレートはすべてのシステムメッセージに攻撃者が仕込んだ指示文を追記するようになる。結果として、脆弱性をコードにこっそり挿入する、既存のセキュリティ問題を隠蔽する、あるいは会話内容を外部に送信するといった指示をAIエージェントに強制できてしまう。さらに厄介なのは、この汚染が会話をリセットしても、あるいは新しいチャットを開いても消えない点で、同一ネットワーク内の他のデバイスからもアクセスされ得ることだ。 対応状況と今後の見通し Oasis SecurityはNVIDIA PSIRTに事前に報告し、協調的な脆弱性開示のプロセスを経て、NVIDIAは既に更新版を公開している。ただし修正状況にはプラットフォーム差があり、macOSおよびLinux向けはバージョン0.0.35で修正済みだが、WindowsおよびWSL環境では根本修正がまだ行われておらず、バージョン0.0.34では警告表示が追加されたのみとされる。また8月10日リリースのバージョン0.0.106ではデフォルトの挙動としてループバック以外へのバインドを拒否するチェックが追加されたが、Windows環境の脆弱性自体は依然として残っている。現時点でCVE-2026-65105の実際の悪用は報告されていない。専門家は、Ollamaを認証付きプロキシの背後に配置してループバック経由でのみアクセスさせ、Hostヘッダーをホワイトリスト方式で検証するといった対策を推奨している。同様のチャットテンプレート汚染はPaperclipやOpenClawといった他のAIエージェント基盤でも過去に確認されており、モデル自体ではなく、その周辺のネットワーク配線やAPI設計にこそリスクが潜んでいるという指摘が広がっている。

August 27, 2026