TigerFS: PostgreSQLデータベースをUnixファイルシステムとしてマウントできる実験的OSSツール

概要 TigerFSは、PostgreSQLデータベースをディレクトリとしてマウントし、ls、cat、find、grepなどの標準Unixコマンドでデータを操作できる実験的なオープンソースファイルシステムだ。TigerData(旧Timescale)がMITライセンスのもとGitHub(timescale/tigerfs)で公開したこのツールは、APIやSDKを介さずにデータベースとやり取りできる新しいアプローチとして開発者の注目を集めている。AIエージェントがデータベースの状態を共有・管理する用途でも活用できる設計になっており、AI開発との親和性も意識されている。 2つの動作モード TigerFSは「ファイルファースト」と「データファースト」の2つのワークフローをサポートしている。ファイルファーストモードでは、開発者がファイルをディレクトリ構造(todo / doing / done など)で整理し、アトミックな書き込みと自動バージョニングによって並行アクセスや状態管理を実現する。AIエージェントが複数の状態を共有する際に特に有用なアプローチだ。 データファーストモードでは、既存のPostgreSQLデータベースをマウントして、Unixツールでデータを探索できる。ファイルシステムのパスにフィルタやソート条件を含めることでデータベースクエリに変換されるため、SQLを書かずにデータを取得・確認できるのが特徴だ。 技術的な詳細 LinuxではFUSE、macOSではNFS経由でマウントに対応しており、外部依存なしで動作する。各ファイルはデータベースの1行に対応し、ACID保証が維持される。あらゆるPostgreSQLインスタンスやマネージドサービスと連携可能で、既存のデータベース環境にそのまま組み込める点も評価されている。開発者コミュニティからはパフォーマンス特性や制限事項への関心が寄せられており、小規模データセットの管理や設定ファイル的な用途において有用との声も上がっている。 展望 TigerFSはまだ実験的なプロジェクトとして位置づけられているが、データベースへのアクセスを「ファイル操作」という直感的なインターフェースで統一するというコンセプトは、特にAIエージェントがファイルシステムを通じてデータを読み書きするユースケースで新たな可能性を示している。SQL不要のデータ探索を実現するこのアプローチが、今後どのような形で発展するか注目される。

April 5, 2026

CloudflareのDynamic Workers Open Beta、V8アイソレートでAIエージェントのコード実行を安全かつ高速に

概要 Cloudflareは2026年4月1日、Dynamic Worker Loaderのオープンベータ公開を発表した。これはWorkersがランタイム時に動的に指定されたコードで新しい隔離されたサンドボックスを生成できる機能であり、AIエージェントが生成したコードを安全に実行するための基盤として設計されている。コンテナと比べて起動速度は約100倍、メモリ効率は10〜100倍優れるとされており、高頻度・低レイテンシが求められるAIコーディングエージェントのコード実行環境として注目されている。 Cloudflareはこの取り組みを「Code Mode」というコンセプトとともに提唱している。従来のAIエージェントは目的達成のためにツール呼び出しを逐次繰り返すアーキテクチャが主流だったが、Code Modeでは「エージェントが型付きAPIに対してコードを書いて実行することでタスクを遂行すべき」という考え方をとる。実際にMCPサーバーをTypeScript APIに変換して検証したところ、従来のツール呼び出しパターンと比較してトークン使用量を81%削減できたと報告されている。 技術的な詳細 Dynamic WorkersはV8アイソレートを基盤としており、1件あたりの起動時間は数ミリ秒、メモリ使用量は数メガバイトに抑えられている。ローディングモードは2種類あり、load() はエージェント生成コードを1回限り実行するワンショット向け、get() はIDでWorkerをキャッシュして複数リクエストをウォームな状態で処理するケースに対応している。 API定義にはOpenAPI仕様ではなくTypeScriptインターフェースを採用している点も特徴的だ。チャットルームAPIの例では、TypeScriptで約15行で記述できる仕様がOpenAPI(YAML)では60行以上になる。LLMにとってのトークン効率と開発者の可読性を優先した設計判断とされている。 セキュリティは多層防御で構成される。Cap’n Web RPCブリッジによるセキュリティ境界の透過的な越境、送信HTTPリクエストをインターセプトして秘密情報へのエージェントの直接アクセスを防ぐクレデンシャルインジェクション、リクエストごとにアイソレートを破棄するエフェメラルなアイソレーション、そしてV8セキュリティパッチの数時間以内の自動適用、カスタムセカンドレイヤーサンドボックス、ハードウェアレベルのMemory Protection Keys(MPK)、学術研究者と共同開発したSpectre対策が組み合わされている。 エコシステムと事例 Cloudflareはあわせて関連ライブラリ3点を公開している。@cloudflare/codemode はDynamic Workersを通じてモデル生成コードをAIツールに対して実行するためのパッケージ、@cloudflare/worker-bundler はランタイムでのnpm依存関係の解決とバンドリングを担い、@cloudflare/shell はトランザクショナルなバッチ書き込みやSQLiteバッキング、R2永続ストレージを持つ仮想ファイルシステムを提供する。 本番採用事例としては、チャットベースのCRUDアプリ構築プラットフォームであるZiteが既にDynamic Workersをデプロイし、1日あたり数百万回の実行リクエストを処理していると報告されている。料金はベータ期間中は無料で、正式リリース後はユニークWorker1件あたり1日$0.002に標準のCPU・呼び出し料金が加算される見込みだ。言語サポートはJavaScriptが実質的な主軸で、PythonとWebAssemblyも技術的には動作するものの起動時間の観点から実用上は限定的とされている。 今後の展望 Cloudflareはこのソリューションを、エージェント実行環境をめぐるアーキテクチャ論争の文脈で明確に位置づけている。永続的なメモリを持つ長寿命エージェント環境を好む陣営に対し、Cloudflareはリクエストライフサイクルに合ったエフェメラルな実行レイヤーを推進する立場を取り、高ボリューム・ウェブ向けシステムへの適合を強調している。AIエージェントのインフラ競争が激化する中、V8アイソレートという既存技術資産を活用したCloudflareのアプローチが他プラットフォームにどのような影響を与えるか注目される。

April 5, 2026

Hims & HersがZendesk経由のデータ侵害を公表、ShinyHuntersによるOkta SSO悪用攻撃の一環

概要 米国のテレヘルス大手Hims & Hers Healthは2026年4月、カスタマーサポートプラットフォームのZendeskへの不正アクセスによりデータが漏洩した可能性があると顧客に通知した。侵害は2026年2月4日から7日にかけて発生し、同社は2月5日に検知、3月3日に侵害を確認した後、4月2日に顧客への通知を行った。漏洩した可能性のあるデータはサポートチケットに含まれる氏名・連絡先情報などの個人情報に限定されており、医療記録や医師との通信は侵害されていないと強調している。 攻撃手法と攻撃者の帰属 BleepingComputerの報道により、今回の攻撃は悪名高いサイバー恐喝グループShinyHuntersによるものと判明した。攻撃者はOkta SSOアカウントの侵害を足がかりとして、Zendeskのインスタンスへの不正アクセスを実現し、複数の組織から数百万件に及ぶサポートチケットを窃取したとされる。Hims & Hersの被害はこのキャンペーンの一部に過ぎず、同一手法によりManoMano(2026年2月)やCrunchyroll(2026年3月)なども被害を受けており、Zendeskを利用する多数の企業が連続して標的とされていたことが明らかになっている。 影響範囲と同社の対応 Hims & Hersは影響を受けた顧客数や漏洩データの全容を公式には開示していないが、被害顧客に対して12か月間の無料クレジットモニタリングを提供するとともに、フィッシング攻撃への警戒強化と信用情報における不審な動きの監視を呼びかけている。今回の事例は、テレヘルス企業が保有する機微な情報を狙った攻撃の深刻さを改めて示しており、サードパーティのSaaSプラットフォームを経由したサプライチェーン型の侵害リスクへの対策が業界全体で急務となっている。

April 5, 2026

Neovim v0.12.0リリース — 内蔵プラグインマネージャー、LSP強化、Lua HTTP APIなど多数の新機能

概要 Neovimは2026年3月29日、メジャーリリースとなるv0.12.0を公開した。今回の最大のハイライトは、外部ツールへの依存を不要にする組み込みパッケージマネージャー vim.pack の導入だ。これまでlazy.nvimやpacker.nvimといったサードパーティのプラグインマネージャーに頼っていた管理フローを、Neovim本体で完結できるようになった。コミュニティからの反応はGitHub上で525件以上のリアクションを集めるなど、非常に好評を博している。 LSP・補完の大幅強化 LSPまわりの改善も今回の目玉だ。補完候補にカラーシンボルのプレビューやインライン補完が追加されたほか、新しい対話型コマンド :lsp によってLSPクライアントを一元管理できるようになった。コードレンズが仮想行として表示されるよう変更されたことで視認性も向上した。さらに textDocument/diagnostic・ textDocument/documentColor・ワークスペース診断・動的登録など多数のLSP仕様への対応も追加されている。デフォルトキーバインドには grt(型定義へジャンプ)と grx(コードレンズ実行)が新たに加わった。 Lua APIの拡充とHTTP対応 Lua APIにも注目すべき追加がある。vim.net.request() の追加により、外部ライブラリを使わずにNeovim内から直接HTTPリクエストを発行できるようになった。そのほか vim.list.unique()・vim.list.bisect() などのリスト操作関数、vim.text.diff()(旧 vim.diff)、フローティングウィンドウへのステータスライン表示・タブページ間移動のサポートなども追加された。新オプションとして 'autocomplete'・'pummaxwidth'・'pumborder'・'busy' などが導入されている。 パフォーマンス改善と実験的Zigビルド パフォーマンス面では、i_CTRL-R によるレジスタ挿入が従来のユーザー入力シミュレーション方式から貼り付け方式に変わり約10倍高速化。LPeg実装によりglobパターンマッチングが約50%高速化された。LSPはトークンリクエストを表示中のビューポートに限定するよう最適化され、帯域幅の節約にも貢献している。また実験的機能としてZigベースのビルドシステムが導入された。 破壊的変更と注意点 既存の設定に影響する破壊的変更もいくつか含まれる。vim.diagnostic.disable() などの旧来のDiagnostics APIが削除され、JSONのnull値が nil から vim.NIL に変更された。セマンティックトークン関数が start()/stop() から enable() にリネームされるなど、プラグイン開発者は対応が必要になる場合がある。Windowsでは外部コマンド実行時にカレントディレクトリを検索しなくなるセキュリティ強化も施された。アップグレード前に公式チェンジログでの確認が推奨される。

April 5, 2026

Rust 1.96でWebAssemblyの未定義シンボルがデフォルトエラーに、--allow-undefinedフラグを廃止

概要 Rustは全WebAssemblyターゲットにおいて、リンカオプション --allow-undefined フラグを廃止すると発表した。Rust 1.96(2026年5月28日リリース予定)から、未定義シンボルはデフォルトでエラーとして報告されるようになる。この変更はネイティブプラットフォームとの動作の一貫性を高め、WebAssemblyモジュールのビルド時における誤設定やミスの早期発見を可能にするものだ。 変更の背景と理由 従来、WebAssemblyバイナリの生成には wasm-ld リンカが使われており、--allow-undefined フラグによって未解決シンボルをエラーとせず、WebAssemblyモジュールのインポートとして変換する動作が許容されていた。たとえば、Rustコード中で外部C関数 mylibrary_init を宣言した場合、リンク時にエラーを出さず (import "env" "mylibrary_init" ...) としてWasmモジュールへ埋め込まれる仕組みだった。 この動作にはいくつかの問題点があった。関数名のタイポがあってもコンパイルエラーにならず、実行時に壊れたシンボルがインポートされるリスクがあった。また、必要なライブラリが欠落していても警告が出ずに動作しないモジュールが生成される可能性があった。Rustの公式ブログでは「misconfiguration or mistakes in building can result in broken WebAssembly modules being produced(ビルドの誤設定やミスが壊れたWebAssemblyモジュールの生成につながる)」と指摘している。ネイティブプラットフォームでは未定義シンボルはデフォルトでエラーとなるため、WebAssemblyだけが異なる挙動を取っていた点も問題視されていた。 移行方法と影響範囲 Rust公式は、大多数のユーザーはこの変更による影響を受けないとしている。ただし、--allow-undefined の動作に明示的に依存していた場合は対応が必要だ。対処法として2つの方法が案内されている。 1つ目は #[link] 属性を使った明示的なモジュール指定で、インポートするシンボルが属するWasmモジュール名を wasm_import_module で明記する方法だ。2つ目は -Clink-arg=--allow-undefined をコンパイラフラグとして渡すことで、旧来の動作を維持する方法だ。問題が生じた場合は rust-lang/rust リポジトリへのissue報告が推奨されている。変更はすでにPR #149868としてまとめられており、ナイトリービルドへの統合を経てRust 1.96での正式リリースが計画されている。

April 5, 2026

ドイツ左翼党、Qilinランサムウェアによる党内データ窃取を正式確認

概要 ドイツの民主社会主義政党「左翼党(Die Linke)」は、2026年3月26日にサイバー攻撃を受け、翌27日に公表した。党組織内部の機密データおよび党本部職員の個人情報が窃取されたことを正式に認めている。同党は攻撃発生直後にITシステムをオフラインに切り替えて対応し、4月1日にロシア語話者のランサムウェアグループ「Qilin」がダークウェブのリークサイトで犯行を主張した。Die Linkeはドイツ当局に通報し刑事告訴を行うとともに、独立したITの専門家と連携してシステムの復旧作業を進めている。 被害の範囲と党の対応 Die Linkeによると、攻撃者が党組織内部のデータや職員の個人情報を公開すると脅迫しているものの、党員データベースは影響を受けておらず、攻撃者は党員情報の窃取には失敗したとしている。同党は2007年に設立された比較的新しい政党で、連邦議会(Bundestag)に64議席を持ち、登録党員数は約123,000人に上る。 Qilinについて Qilinは2022年から活動するRansomware-as-a-Service(RaaS)グループで、毎月40件以上の被害を主張し、2025年6月には月間100件のピークを記録した。データを暗号化しつつTorポータルを通じた公開を脅迫する「二重恐喝」戦術を採用しており、2025年10月にはDragonForceおよびLockBitとの戦略的連携を結んで攻撃能力を強化したとされる。 ハイブリッド戦争の一環との見方 Die Linkeは今回の攻撃について「偶然ではない」と強調し、こうしたデジタル攻撃をハイブリッド戦争の構成要素と位置づけた。背景には、2024年にロシア系APTグループ「APT29」がドイツのCDU(キリスト教民主同盟)をWineLoaderマルウェアで標的にした事例があり、ドイツの政党を狙ったサイバー攻撃が続いていることが浮き彫りになっている。今回はQilinがリークサイトへの掲載時点でデータサンプルを公開しておらず、身代金支払いを促す圧力戦術として活用されている状況だ。

April 5, 2026

米国ハイパースケーラーのAIデータセンター投資が急拡大、2026年は総額7000億ドル規模へ

概要 2026年4月、米国各地で大規模なAIデータセンター開発の発表が相次いでいる。Metaはテキサス州El Pasoへのデータセンター投資額を100億ドルに拡大し、容量1GW(1,000MW)の施設を2028年までに稼働させる計画を明らかにした。またAIクラウドプロバイダーのCrusoeは、Microsoftの大規模AIワークロードに対応するため、テキサス州Abileneに900MWのキャンパスを建設することが明らかになった。ムーディーズの調査によれば、米国の6大ハイパースケーラーが2026年に見込むデータセンター関連の設備投資合計は約7000億ドルに上り、2022年比でおよそ6倍に達する見通しだ。 主要プロジェクトの詳細 テキサス州を中心に複数の大型案件が集中している。GoogleはWilbarger郡でAES提供のクリーンエネルギーを活用した新データセンターを建設中であり、イーロン・マスク氏はオースティンに「Terafab」と呼ばれる半導体・コンピュート施設の建設を提案している。同施設は年間1テラワット規模のコンピュート容量を目指すとされる。テキサス以外では、Penzance ManagementがウェストバージニアBerkeley郡で総投資額40億ドル・600MW IT負荷の「High Impact Intelligence Center」を計画しており、NTT Dataはバージニア州ゲインズビル・シカゴ・サクラメントで合計約115MWの容量を確保している。さらにAligned Data Centersはダラス・フェニックス・北バージニアなどでのキャパシティ拡張に向け25億8000万ドルの資金調達を完了した。 エネルギーと立地戦略の変化 今回の投資ラッシュで顕著なのは、立地選定の優先順位が大きく変化しつつある点だ。従来はファイバーインフラや不動産コストが重視されていたが、現在はいかに大規模な電力を確保できるかが最重要条件になっている。その証左として、オースティンでは太陽光エネルギーのモジュラーシステムを手がけるExowattが11エーカーの新キャンパスを開設した。AIワークロードが要求する膨大な電力消費に対応するため、クリーンエネルギーとの一体的な整備も業界全体のトレンドとなっている。 今後の展望 AIモデルの大規模化と推論需要の急拡大により、データセンター建設ペースは当面加速する見込みだ。テキサス州は電力インフラと土地の豊富さから最有力の開発拠点となっており、複数のギガワット規模プロジェクトが同時並行で進む状況が続いている。一方で、これほどの投資規模の持続可能性や電力グリッドへの影響については業界内外での議論が始まっており、今後は電源確保とグリッド安定化が開発速度を左右する重要な課題となりそうだ。

April 5, 2026

Cursor 3リリース——AIエージェントの並列管理とクラウド/ローカル融合でIDEを刷新

概要 Anysphereは2026年4月2日、AIコードエディタの大幅刷新版「Cursor 3」を正式リリースした。従来のVSCodeフォークをベースとした設計から脱却し、「AIエージェントと協働するための統合ワークスペース」として抜本的に再設計された。最大の特徴は、複数リポジトリにまたがる複数のAIエージェントを同時並行で管理・実行できる点で、開発者がコードを一行ずつ書く「コーダー」から、エージェント群を指揮する「エージェントマネージャー」へと役割をシフトさせることを明示的に狙った製品だ。 新しいサイドバーUIでは、モバイル・Web・デスクトップ・Slack・GitHub・Linearなど複数の起点から起動されたローカル・クラウド双方のエージェントを一元的に管理できる。エンジニアが個別エージェントの細かい管理や複数会話の追跡、多数ツール間のコンテキスト切り替えに費やす時間を削減することが主眼で、「30,000フィート視点」でプロジェクト全体を監督しながら必要に応じて詳細に掘り下げられる設計が採用されている。 主な新機能と技術的詳細 Cursor 3の中核機能として、クラウドエージェントとローカルエージェント間のリアルタイム移行が挙げられる。長時間のバックグラウンドタスクはクラウドへ移行し、ローカルでの細かい編集・テスト実行はデスクトップ環境で継続するという使い分けがシームレスに行える。クラウドエージェントはデモやスクリーンショットを自動生成して検証を可能にする機能も持つ。 そのほかの主な機能強化は以下の通りだ。新しいdiffs表示によりステージング・コミット・プルリクエスト管理が一体化され、コードレビューの工程を効率化する。UIの自動編集を行う「Design Mode」も新たに搭載された。また、複数の大規模言語モデルを並行利用して最良の応答を選択するメカニズムも実装されており、MCP・スキル・サブエージェントなど数百のプラグインを扱える「Marketplace」も整備されている。さらにLSP統合によるファイル表示やGo to Definition、ローカルWebサイトのナビゲーションに対応した統合ブラウザも含まれる。 競争環境と課題 AIコーディング市場においてCursorはClaude Code(Anthropic)やOpenAI Codexなどの強力な競合と激しい争いを繰り広げている。Menlo Venturesの調査によれば、Claude Codeが同市場で54%のシェアを占めており、OpenAIも無制限の無料アクセスを提供することで市場への圧力を強めている。こうした状況の中、Anysphereは「vibe coding(直感的・エージェント駆動型開発)」をプラットフォームの核に据える戦略転換でポジションの確立を図っている。 一方、課題も抱える。直前にリリースした自社開発LLM「Composer 2」について、実際には中国のMoonshot AIが開発した「Kimi 2.5」モデルのライセンス版であったことが判明し、Cursorが当初その事実を十分に開示しなかったとして批判を受けた。技術力よりも透明性への問いかけとして、同社の評判に影を落としている。財務面ではNvidiaやGoogleを含む大手投資家から累計30億ドル超の資金調達を達成しており、同社は「コードベースが自動運転化するまでIDE投資を継続する」方針を明示している。

April 4, 2026

Git 2.52リリース——初のRustコード統合とGit 3.0への準備が本格化

概要 分散バージョン管理システムGitの最新メジャーフィーチャーリリースであるGit 2.52が公開された。今回のリリースの最大の特徴は、WITH_RUSTビルドフラグを介してRustで書かれたコードがGitリポジトリに初めて統合されたことだ。現時点では任意の選択肢だが、Git 3.0ではRustが必須依存関係となる予定であり、今回はその布石となる重要なマイルストーンと位置付けられる。Git 3.0は2026年末のリリースを目標としており、2.52はそれに向けた大規模な準備作業を含む。 Rustコードの初統合 Git 2.52ではWITH_RUSTビルドフラグを指定してビルドすることで、Rustで実装された内部機能を利用できる。現時点でRustが担うのは主にパックファイル処理で使われる可変長整数エンコード・デコードだが、CコードからRustヘルパーを呼び出すためのインフラが整備された。Rustがなくてもビルド・動作は可能で、Cのフォールバック実装が提供される。また、SHA-256相互運用性に関連する一部のコードもRustで実装が進められている。将来的にGit 3.0ではRustがビルド時の必須要件になる計画だ。 新コマンドと機能強化 Git 2.52では複数の新コマンドが追加された。git last-modifiedは指定パスに最後にコミットした祖先コミットを表示するコマンドで、GitHubの内部ツール「blame-tree」に由来する。リポジトリ履歴を一度だけ走査して追跡済みパスを除去していく設計により、従来のgit ls-tree + git log --max-count=1の組み合わせと比較して約5.5倍の速度向上を実現する。大規模リポジトリやモノレポで特に恩恵を受けやすい。 実験的なgit repoコマンドも追加された。git repo infoはオブジェクトフォーマット(SHA-1またはSHA-256)や参照タイプなどリポジトリレベルの設定を表示し、git repo structureはコミット・ツリー・ブロブ・タグ・参照のカウントなどリポジトリの構造統計を示す。参照管理関連ではgit refs list・git refs exists・git refs optimizeの各サブコマンドも追加されている。 パフォーマンス面ではgit describeが約30%高速化され、スパースチェックアウト環境のクリーンアップを行うsparse-checkout cleanサブコマンドや、ワイルドカードパス指定をBloomフィルタで扱えるようにする改善も含まれる。リポジトリのメンテナンス戦略としてgeometric戦略が追加され、パックファイルを等比数列的な大きさで管理することでCPUとI/Oのオーバーヘッドを削減できる。 SHA-256相互運用性とGit 3.0への道 Git 3.0の主要目標の一つはデフォルトハッシュをSHA-1からSHA-256へ切り替えることだ。Git 2.52ではSHA-1とSHA-256のリポジトリが相互にプッシュ・プルできるようにするための基盤整備が始まった。完全な相互運用性はGit 3.0を目指しているが、今回の作業はその大きな一歩となる。また、git initがデフォルトブランチとしてmainを使うようにする変更や、既存ユーザーへの移行ヒント表示といった準備も進んでいる。ビルドシステム面でも全オブジェクトを単一のlibgit.aアーカイブに統合する整理が行われ、Mesonビルドシステムへのドキュメントサポートも追加された。

April 4, 2026

GitHub Issuesの改良型意味ベース検索がGA、REST/GraphQL APIにも対応

概要 GitHubは2026年4月2日、GitHub Issues向けに改良した意味ベース検索(Improved Search for GitHub Issues)を正式に一般提供(GA)へ移行したと発表した。本機能は2026年1月のプレビュー提供を経て2月に拡張され、今回の正式リリースに至った。従来のキーワードマッチングに依存した検索とは異なり、自然言語による概念的な理解を基に関連イシューを発見できる点が特徴で、検索に成功したケースでは上位3件以内に目的のIssueが含まれる割合が66%から75%へ改善されたと報告されている。 主な機能 本機能には主に以下の要素が含まれる。 自然言語検索: キーワードの完全一致がなくても、意味的に関連するIssueを返す。 検索スコープ: 個別リポジトリ内、および Issues ダッシュボードを通じた複数リポジトリ横断の両方に対応。 ハイブリッド検索: 意味ベースとキーワードマッチングを組み合わせた検索モードを提供し、概念的に類似した結果と完全一致の結果を同時に返す。フィルターのみや引用符付きの検索語を使用した場合は従来の字句検索が適用される。 関連度順ソート: 結果はデフォルトで関連度順に表示される。 REST/GraphQL APIからの利用 既存のAPIエンドポイントに新しいパラメータを追加することで、この機能を利用できる。 REST API: /search/issues エンドポイントに search_type=semantic(意味ベース)または search_type=hybrid(ハイブリッド)を指定する。 GraphQL API: searchType 引数に SEMANTIC または HYBRID を指定する。 なお、意味ベース検索およびハイブリッド検索のクエリにはレートリミットが適用され、1分あたり10リクエストまでに制限される。 その他の改善 今回のリリースでは検索機能のGA化に加え、テンプレート編集の改善、「@」メンションを用いたアサイニーフィルタリング、複数リポジトリ修飾子の処理改善、折りたたみセクション内でのMermaidダイアグラム描画サポートなども同時に提供されている。

April 4, 2026