Anthropic、Claudeが自社R&Dの26%を主導と発表 AI開発ペースを測る新指標も公開

概要 Anthropicは9月17日、自社のAI研究開発(R&D)業務のうちClaudeが「主導」している割合が2026年8月時点で26%に達したと発表した。2月時点では1%未満にとどまっていたが、半年余りで急増した格好だ。同社は、Claudeが自社の後継モデルの開発を手伝っている状況を明らかにする一方、完全に自律的な後継モデル開発、いわゆる「再帰的自己改善」にはまだ至っていないと強調している。同時に、AI開発の進度を業界横断で追跡できるようにするための3つの指標――R&D自動化率、エージェントの監視可能性、計算資源配分――を新設し、定期的に公表していく方針を示した。 R&D自動化率の算出方法と26%の中身 Anthropicは、Epoch AIが開発した「オートメーションレベル(AL)」というスケールを採用している。これはAI関与なしの「AL0」から完全自律の「AL5」までの6段階評価で、AL3は「人間の綿密な指導のもとでAIが大規模な作業を実行する」協働段階、AL4は「高レベルの指示だけでAIがエンドツーエンドで作業の大部分を完了し、人間はそれを監督する」主導段階にあたる。同社は2026年7月時点のすべてのAI R&D業務を542ノード・378の末端タスクからなる階層構造に分類し、従業員の20%を対象としたサンプリングから約15,000件の粒度の細かいタスクを抽出、人員の投入時間を重みとして集計した。その結果、8月時点でAL4(主導)に達した作業は全体の26%、AL3(協働)以上は90%を超える一方、完全自律のAL5は0%だったという。ABCニュースによれば、この26%という数値は2月の実質ゼロから8月までに急拡大したものであり、Anthropicは「モデルが自らの開発を加速させることで、人間がシステムを理解・制御することがより難しくなりかねない」という点を、こうした指標を測定・公開する理由の一つとして挙げている。 エージェント監視と計算資源配分という2つの補助指標 R&D自動化率に加えてAnthropicが公開したのが、AIエージェントに対する人間の監視体制を測る指標だ。ここでは「カバレッジ(監視対象となる行動の割合)」「レビューレイテンシ(行動が検査されるまでの時間)」「エスカレーション率(ブロックやフラグが立てられる割合)」の3つを測定している。2026年8月時点では、約30,000のエージェントが同時に稼働する中、オンライン監視では実行前のリアルタイムチェックによるブロック率が0.002%(約47,000件に1件)にとどまる一方、オフライン監視では週あたり約100,000件のトランスクリプトを事後的にフラグし、うち約50件が人間によるレビューに回されているという。もう一つの指標である計算資源配分では、7月13日から20日までの1週間分のワークロードを安全研究とそれ以外のR&Dに分類したところ、AI R&D全体に占める安全研究の割合は約6%、AI主導のR&Dに限ると約12%が安全研究に充てられていたことが判明した。Anthropicはこれを保守的な推定値だとし、能力向上と安全性の両方に資する作業はR&D側にカウントしていると説明している。 今後の展望 Anthropicは、これらの指標について今後は第三者による検証を導入する計画も明らかにしている。複数の組織から独立した評価者を招き、内部プロセスへのアクセスを提供することで測定の客観性を担保する狙いだ。背景には、Anthropicの最高経営責任者(CEO)を含むAI業界のリーダーたちが開発ペースの減速を求める声を上げていることや、同社の研究者がAIのリスクについて警鐘を鳴らしながら退社したことなど、開発速度そのものへの懸念が業界内で高まっている事情がある。Anthropicは今回の指標公開について、社会がAI開発のペースを理解し、その調整について議論するための土台を提供する狙いがあるとしており、今後も定期的に数値を更新することで、ペース調整の効果を継続的に追跡できるようにするとしている。

September 20, 2026

ConnectWise ScreenConnectにワーム的拡散の実悪用、CISAが連邦機関に緊急パッチを指示

概要 ConnectWise製のリモート管理ツールScreenConnectに存在する脆弱性CVE-2026-84869(CVSS 9.9)が、実際の攻撃でワーム的に悪用されていることが判明した。セキュリティ企業Huntressが8月20日以降の侵害事例を確認しており、CISAは同脆弱性を既知の悪用脆弱性(KEV)カタログに追加、連邦機関に対して9月14日までの対応を義務付けた。ConnectWiseは100,000社超のITプロバイダーに利用されており、影響範囲は広い。 脆弱性の技術的詳細 CVE-2026-84869は権限管理の不備および認可の欠落に起因する脆弱性で、ScreenConnectクライアント側で発生する。低い権限しか持たない攻撃者が、稼働中のリモートセッションを通じてホスト側の承認やユーザー操作を伴わずにファイルを転送・実行できてしまう。ConnectWiseは本件について「特定の状況下で、ホストの承認なしにアクティブなリモートセッションを通じてファイルが転送・実行される可能性がある状態」と説明している。攻撃の複雑さは低く、ユーザーの操作も不要であるため悪用のハードルは低い。 ワーム的な攻撃手口 Huntressの調査によれば、攻撃者は改ざんされたScreenConnectクライアントを実行するよう被害者をソーシャルエンジニアリングで誘導し、そこから永続化と拡散を狙う4種類のVBScriptペイロードを展開する。侵害済みの端末を踏み台に、新たに接続してきた別のScreenConnectインスタンスへ次々と感染を広げる挙動が確認されており、単発の攻撃ではなくワームのように自己増殖する点が特徴的だ。ConnectWiseは9月7日の時点でTransferFiles権限を無効化する暫定的な緩和策を公開していたが、根本的な対策には至っていなかった。 対応状況とリスク ConnectWiseは修正版ScreenConnect 26.6.5をリリース済みで、クライアントおよびセッション処理におけるファイル転送・実行の扱いを強化したとしている。CISAは本脆弱性をKEVカタログに追加し、「この種の脆弱性は悪意あるサイバー攻撃者にとって頻繁な攻撃経路であり、連邦のシステムに重大なリスクをもたらす」として、連邦機関に9月14日までのパッチ適用を義務付けた。Shadowserverの観測では、依然として1,000台超の未パッチ端末がインターネット上に露出しており、北米で758台、欧州で180台が確認されている。2024年以降、ScreenConnectでは4件の脆弱性が実悪用の対象となり、うち2件はランサムウェア攻撃にも使われた経緯があり、早急なアップデートが強く推奨される。 なお同時期にCISAはJFrog ArtifactoryやMikroTik RouterOSの脆弱性もKEVカタログに追加しており、Artifactoryの2件は8月中旬から永続的な管理者アカウントの作成やバックドア設置を伴う攻撃チェーンで悪用され、RouterOSの2件は「MikroTrick」と呼ばれる不正なデバイス乗っ取りに関連しているとされ、今回のScreenConnect問題と合わせてリモート管理・運用基盤を狙う攻撃の増加傾向がうかがえる。

September 20, 2026

マルチクラスタKubernetes基盤Karmadaが CNCF Graduatedに、Bloombergやアリババなど本番採用進む

概要 マルチクラスタ・マルチクラウド対応のKubernetesオーケストレーションプロジェクト「Karmada(Kubernetes Armadaの略)」が、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)における最高成熟度レベルの「Graduated」ステータスに到達したと発表された。発表は中国・上海で開催された「KubeCon + CloudNativeCon + OpenInfra Summit + PyTorch Conference China」の場で行われ、最新版v1.19のリリースと時を同じくしている。CNCFのGraduatedは「広く採用され、本番運用に耐える安定したプロジェクト」に与えられる位置づけで、Karmadaは2021年9月にSandboxへ参加、2023年12月にIncubatingへ昇格し、第三者によるセキュリティ監査、正式なステアリング委員会の設置、CNCF行動規範の採用、CII Best Practices Badgeの取得といった卒業要件を満たして今回の到達に至った。現時点でコントリビューターは292組織から1,214人以上、GitHubスターは5,600を超えており、エコシステムとしての広がりを示している。 技術的な特徴とアーキテクチャ KarmadaはKubernetesの標準APIを置き換えるのではなく、そのまま複数クラスタに拡張する設計を採る点が最大の特徴で、既存のマニフェストやコントローラ、ツール群を変更せずに利用できる。コントロールプレーンはKarmada API Server、Karmada Controller Manager、Karmada Schedulerの3コンポーネントから構成され、内部的にはCluster Controller(メンバークラスタのライフサイクル管理)、Policy Controller(PropagationPolicyオブジェクトの処理)、Binding Controller(クラスタごとのWorkオブジェクト生成)、Execution Controller(メンバークラスタへのマニフェスト適用)という4つのコントローラが伝播処理を担う。主要APIとしては、クラスタアフィニティやリージョン・ゾーン・プロバイダをまたいだ多次元の高可用性、マルチクラスタ分割などのスケジューリング制約を定義する「PropagationPolicy」と、リソーステンプレート自体は変更せずにイメージのプレフィックスやStorageClassなどクラスタ固有の設定を上書きできる「OverridePolicy」がある。今回卒業と同時にリリースされたv1.19では、AIトレーニングジョブ向けのマルチコンポーネントスケジューリングが強化されたほか、優先度ベースのスケジューリング機能がBetaに昇格しデフォルトで有効化されており、リージョンやプロバイダをまたいだ分散GPU/CPUオーケストレーションの課題に対応する。観測性の面ではコントロールプレーンの各コンポーネントからPrometheusメトリクスを出力し、Helmチャートも提供されるなど、既存のCNCFエコシステムのツール群にそのまま組み込める点も特徴である。 本番採用の広がりと競合との違い Bloomberg、Wellhub、Alibaba Cloud、Huawei、Trip.com、Bilibili、iFLYTEK、JDCloud、Kuaishou、RedNote、SenseTime、Vivo、WPS、ZTOなど、多岐にわたる企業がハイブリッドクラウドの容量確保、リージョンをまたいだ耐障害性の確保、AIワークロード向けのGPU/CPUスケジューリング、複数クラスタにまたがる設定の一括配布といった目的でKarmadaを本番導入している。Trip.comの担当者は「既存のKubernetesリソース定義を変更することなく」複数クラスタにまたがる統一的なリソースプール運用を実現し、クラスタ横断の弾力的なスケーリングとフェイルオーバーを可能にしたと述べている。Karmadaは、廃止されたKubeFed(Federation v2)の後継として位置づけられる2つのCNCFプロジェクトの一つで、もう一方のOpen Cluster Management(OCM)がハブ・アンド・スポーク型のエージェントベースでクラスタインベントリやガバナンスに重点を置くのに対し、Karmadaはワークロードの配置と動的スケジューリングに重きを置き、クラスタ横断クエリ向けのキャッシュ層やマルチクラスタサービスディスカバリを備える点で差別化されている。クラスタのライフサイクル管理を担うCluster APIや、Argo CDのApplicationSets、Rancher FleetといったGitOpsツール、Microsoft Azure Kubernetes Fleet Managerの基盤であるKubeFleetなども関連技術として挙げられており、マルチクラスタ運用領域では複数のアプローチが並立している状況がうかがえる。 今後の展望 CNCFにおけるGraduatedステータスへの到達は、マルチクラスタ・マルチクラウド運用がKubernetesエコシステムの周辺的なユースケースから、企業の本番基盤における標準的な選択肢の一つへと成熟しつつあることを示している。特にAIワークロードの急増に伴い、複数クラスタにまたがるGPU/CPUリソースの効率的なスケジューリングへの需要は今後も高まると見られ、v1.19で強化された優先度ベースのスケジューリングやマルチコンポーネントスケジューリングは、そうした需要を先取りする形での機能強化と言える。今回の卒業により、KubeFedの後継技術を巡る評価も一段落し、既存の大規模採用企業に加えて、より幅広い業種・規模の組織がマルチクラスタ運用基盤の選定においてKarmadaを有力な候補として検討する動きが進むことが予想される。

September 20, 2026

メモリ価格が最大7倍高騰、Intel CEOが2027年の供給難悪化を警告 SK HynixはIntel工場での米国生産を協議

Intel CEOが価格急騰と2027年の供給難を警告 Intelの最高経営責任者Lip-Bu Tan氏は、Santa Claraで開催されたAI Infrastructure Summitでの発言で、メモリチップの価格がこの一年で5〜7倍(500%以上)に急騰したと明らかにした。AIアクセラレータ、とりわけNvidia製品の急速な普及により高帯域幅メモリ(HBM)の需要が爆発的に増え、供給がまったく追いついていないことが背景にある。Tan氏はさらに、この不足は2027年にかけて悪化しかねないとも警告した。この発言を受けてMicron株は5%以上、SK hynix株も約5%上昇し、この日はFRBの決定を受けた市場全体の回復も重なりNasdaqも1%超上昇した。市場調査会社TrendForceは、サーバー向けDRAMの契約価格が2025年下半期に64%上昇したのに続き、2026年にはさらに270%上昇すると予測しており、Micronの最高経営責任者も供給の改善は2028年ごろまで緩やかにしか進まないとの見方を示している。SK hynixの最高経営責任者に至っては、2027年を「業界史上最悪の供給年」になりかねないと表現した。なお、Micronは直近の第3四半期決算で売上高414.6億ドル(前年同期の93億ドルから急増)、非GAAP粗利益率84.9%という好業績を報告しており、続く第4四半期には売上高約500億ドル、粗利益率86%になるとの見通しを示している。価格高騰が一部メーカーの収益を大きく押し上げている構図も見える。 SK Hynix、Intelのオハイオ工場での米国内生産を協議 こうした需給逼迫を背景に、韓国のメモリ大手SK Hynixが、自社にとって初となる米国内でのRAMチップ生産に向けてIntelと協議を進めていると報じられた。検討されている案は主に二つで、一つはSK HynixがIntelがオハイオ州に計画する工場のスペースをリースする形、もう一つはクラウドサービスプロバイダーを交えた合弁事業として立ち上げる形だ。SK Hynixは公式には「具体的な計画や取り決めはまだ最終決定されていない」とコメントしており、交渉はなお初期段階にとどまる。この協議はAI需要によるメモリ供給逼迫を背景とした業界再編の動きとして注目を集めている。 SK Hynixにとって米国内生産には複数の狙いが重なる。AIデータセンター向けHBM需要の急増に応えて供給網を拡充する狙いに加え、半導体の国内生産拡大を掲げるTrump政権が投資企業への関税優遇を検討していることも後押し材料となっている。同社はすでにインディアナ州で38億ドル規模のAIチップ関連施設の建設を進めており、2029年の生産開始を予定している。今回のIntelとの協議が実現すれば、これに続く追加の米国拠点となる可能性がある。一方で、戦略的に重要なチップ技術の海外移転を防ぐ韓国国内の法制度により、この計画が韓国政府の審査対象となる可能性も指摘されている。 Intelにとっても、稼働率に余力のある製造拠点を他社に提供できれば収益源の多様化につながる。半導体不足が長期化するとの観測が強まる中、両社の協議の行方は今後のメモリ供給網の再編を占ううえで注目される。

September 20, 2026

単一の悪意ある拡張機能で5つのブラウザ内蔵AIエージェントを乗っ取る「BragJack」攻撃、2万ドル超の報奨金とCVE2件に

概要 セキュリティ研究者のGal Weizman氏(Forever Security)が、単一の悪意ある拡張機能によって複数のブラウザに組み込まれたAIアシスタントをまとめて乗っ取れる新たな攻撃手法「BragJack」を実証した。標的となったのはGoogle ChromeのGemini Live、Microsoft Edge、Perplexity Comet、Opera Neon、そしてChrome上で動くAnthropicのClaudeという、5つのChromiumベースブラウザに搭載されたAIアシスタントで、悪用に成功するとローカルファイルの読み取り、閲覧履歴の取得、スクリーンショットの撮影、ブラウザのカメラやマイクへの潜在的なアクセスなどが可能になるという。この研究は結果として2万ドルを超えるバグ報奨金と2件のCVE採番につながった。 攻撃の仕組み BragJackの核心は「Prompt Forcing」と呼ばれる技術にある。従来のプロンプトインジェクションが個別の指示を紛れ込ませるのに対し、Prompt Forcingでは攻撃者がエージェント全体に対してプロンプトとそれに続く一連の指示を与えられる点が異なる。具体的にはChromiumの宣言的ネットワークリクエスト(DNR)機能を悪用し、ネットワークリクエストの処理方法を書き換えることでセキュリティヘッダーを弱体化させたり、JavaScriptリソースをリダイレクトしたりする。 ブラウザごとに攻撃の切り口は異なっていた。Chromeでは、chrome://glicコンポーネントやGeminiのサイトへ直接コードを注入することはできなかったものの、埋め込まれたGeminiアプリが発するリクエストをインターセプトすることでセキュリティヘッダーを弱められた。Microsoft Edgeは「Think」モードと「Do」モードを分離することでこの種の攻撃への耐性を持たせていたが、Weizman氏はその分離処理にレース条件を発見し、制限を一時的に無効化することに成功した。特にPerplexity Cometのようなエージェント型ブラウザでは影響がより深刻で、エージェントに任意のウェブサイトへの訪問を強制し、受信メールを要約させたうえで結果を別のメールアドレスへ送信させる、といった一連の操作を自動的に実行させることも可能だったという。Opera Neonでも同様の脆弱性が確認されている。 報奨金とベンダーの対応 今回の研究では合計2万ドル超のバグ報奨金が支払われ、ベンダーごとの支払額は600ドルから最大7,000ドルの幅があった。発行されたCVEはChrome向けのCVE-2026-0628(報奨金7,000ドル)とMicrosoft Edge向けのCVE-2026-55945の2件で、ChromeとEdgeについては記事執筆時点で既にパッチが適用されている。一方、Perplexity、Opera、Anthropicについては対応状況が明記されておらず、引き続き注視が必要な状態にある。 過去の類似事例と今後の展望 記事は、ブラウザ組み込みAIエージェントを巡る同種の問題が過去にも指摘されてきた点を挙げている。2026年4月にはLayerXが「ClaudeBleed」と呼ばれる脆弱性を開示しており、これはClaude for Chromeが実際に動作を駆動しているスクリプトを検証せず、claude.aiというオリジンそのものを信頼してしまっていたことに起因していた。また2026年半ばにはManifold Securityが、拡張機能が実際のユーザー入力を確認しないまま合成クリックの上で組み込みAIワークフローを実行してしまう問題を報告しており、この不備は8回のリリースを経てもなお再現可能だったという。 ブラウザやエンドポイントアプリケーションへのAIエージェント搭載が急速に進む中、BragJackはこうした流れが抱える構造的なリスクを浮き彫りにする。これまで悪意ある拡張機能がアクセスできる範囲はウェブコンテンツ程度に限られていたが、AIエージェントが仲介役として組み込まれることで、ローカルファイルの読み取りや閲覧データへのアクセス、さらにはユーザーに代わってウェブサイト上で行動を起こすところまで攻撃の射程が広がりうる。専門家はブラウザを常に最新の状態に保ち、身に覚えのない、あるいは不要な拡張機能を削除し、「すべてのウェブサイトのすべてのデータを読み取りおよび変更」といった広範な権限を要求するプロンプトには特に注意を払うよう呼びかけている。

September 20, 2026

AIコーディングエージェント4製品を襲うゼロクリックRCE「Plugin4Shell」、コミットハッシュ検証の欠陥が原因に

概要 セキュリティ企業Air Securityは9月18日、Claude Code、OpenAI Codex、GitHub Copilot、Google Gemini CLIという主要な4つのAIコーディングエージェントに共通する脆弱性「Plugin4Shell」を公表した。これらのエージェントはプラグインをGitのコミットハッシュ(SHA)でピン留めし、特定バージョンのコードのみを信頼する仕組みを採用しているが、実際にはGitが要求通りのコミットをチェックアウトしたかどうかを検証していないという実装上の欠陥がある。Air Securityはこれを「AIエージェントエコシステムにおける初めてのサプライチェーン脆弱性」と位置づけており、セキュリティのベストプラクティスに従ってプラグインをハッシュ固定していたユーザーであっても被害を免れないと警告している。同社によれば脆弱性は2026年5月に発見され、6月に各ベンダーへ通知されたが、9月18日時点でCVE番号の割り当てやセキュリティ勧告の公開はなく、実際の悪用が確認された事例も報告されていない。 技術的な仕組み 攻撃の核心は、ハッシュに似せたブランチ名を使ってGitの解決先をすり替える点にある。多くのGitプラットフォームではコミットSHAのような16進数文字列をブランチ名として作成でき、エージェントが特定のハッシュを指定してチェックアウトを要求した際、Gitがそれをコミットハッシュではなくブランチ名として解釈し、攻撃者が用意した別のコミットを取得してしまうことがある。Claude Code、Codex、GitHub Copilotの3製品はこのブランチ名の解釈を突いた手法で影響を受ける一方、Gemini CLIは「FETCH_HEAD」という名前でチェックアウトを指示する独自の実装に起因する別経路の脆弱性を抱えていた。プラグインはユーザー権限で実行されるため、悪意あるコードに差し替えられればソースコード、認証情報、CI/CDツールやクラウド環境へのアクセスが可能になり、API キーの窃取やリポジトリの改ざん、企業インフラへの侵入につながりうる。 影響範囲とプラットフォームによる差異 この脆弱性が特に厄介なのは、ユーザー操作なしにコードが実行される「ゼロクリック」型である点だ。GitHubはハッシュのような文字列をブランチ名として作成できない仕様になっているため、GitHub上でホストされたプラグインは直接的な影響を免れる。一方、Bitbucketや自前運用のGitサーバーでは同様の制限がなく、攻撃が成立しうる。さらに、Claude CodeやCodexではプラグインのバックグラウンド自動更新が既定で有効になっている場合があり、これが攻撃の自動化・拡大を助長する要因となっている。Air Securityは過去の調査で、悪意あるプラグイン1件が2万6000超のエージェントに到達した事例や、925件の乗っ取られたスキルが13万4000のエージェントに影響を及ぼした「SkillJacking」を報告しており、Plugin4Shellはこうした供給網リスクをバージョン固定済みのプラグインにまで広げるものだと位置づけられている。 対応状況と今後の見通し 各ベンダーの対応には差が出ている。AnthropicはClaude Codeをバージョン2.1.179で、OpenAIはCodexをバージョン0.146.0で、それぞれ修正済みだ。GoogleはGemini CLI自体の修正を行わず、後継製品「Antigravity」への移行を推奨するという事実上の廃止対応を選んだ。一方、MicrosoftのGitHub Copilotは記事執筆時点で修正版が公開されておらず、GitHub自体が以前から実施しているブランチ・タグ名の制限(コミットハッシュに似た名前を作成できない仕様)がGitHub本体やそのマーケットプレイス上のプラグインには一定の効果を持つものの、Copilotが利用できる他のホスト(Bitbucket等)には及ばないため、リスクは残存している。Air Securityは「アップデートだけが唯一の完全な対策だ」と強調しており、既にセキュリティ対策としてハッシュ固定を実践していたユーザーほど、この問題に気づきにくい点を懸念材料として挙げている。アナリストのPareekh Jain氏は、今回の問題の根本原因は「エージェントが実行を指示されたコードをどう検証するか」という設計そのものにあると指摘しており、AIエージェントのプラグイン・エコシステム全体でサプライチェーン検証の見直しが求められそうだ。

September 19, 2026

Node.js 26.9.0リリース、FFIを標準有効化しDTLSやWeb Workersなど実験的機能を多数追加

概要 Node.js開発チームは9月16日、最新のCurrentリリースとなる「Node.js 26.9.0」を公開した。今回のリリースの目玉は、これまで--experimental-ffiフラグを指定しないと使えなかった外部関数インターフェース(FFI)モジュールがデフォルトで有効化されたことだ。JavaScriptからネイティブライブラリの関数を直接呼び出せるFFIが標準機能となったことで、C言語などで書かれた既存資産をNode.jsから利用するハードルが下がる。あわせてFFI周りでは、メモリヘルパー引数が欠けている場合に例外を投げる修正や、SharedArrayBufferをエラーメッセージに含める改善など、堅牢性を高める細かな修正も複数取り込まれている。 暗号・パフォーマンス計測まわりの強化 node:cryptoモジュールには、メッセージ認証コード(MAC)を統一的な方式で扱う「Generic MAC API」が新設されたほか、これまでハードコードされていた利用可能な暗号アルゴリズムやハッシュアルゴリズムの一覧を、OpenSSLプロバイダーから動的に検出する仕組みが導入された。あわせてFIPS関連では、--force-fipsに厳密モードを追加し、FIPS準拠状況を診断チャネル経由で通知する機能も加わっている。パフォーマンス計測領域では、ベンチマークを標準化して実行するための新モジュールnode:benchが実装された。ただし同モジュールは開発途中で挙動が調整され、最終的に--experimental-benchフラグの背後に置かれており、現時点では明示的な有効化が必要な実験的機能という位置づけになっている。またperf_hooksのヒストグラムには、平均値の信頼区間を計算するmeanCI APIや、計測データをプロセス間でやり取りするためのCBOR形式でのエクスポート・インポート機能が追加された。 DTLS・VFS・Web Workersなど実験的機能の拡充 ネットワーク領域では、UDP上でセキュアな通信を実現するDTLS(Datagram TLS)の実験的APIが実装された。TLSやQUICと証明書検証のロジックを共通化する取り組みも並行して進められており、IoT用途などUDPベースの暗号化通信を必要とする場面での活用が見込まれる。また、CommonJSおよびESMのモジュールローダーと統合される仮想ファイルシステム(VFS)機能も追加され、ZIPアーカイブをファイルシステムとしてマウントするZipProviderや、マウントされたファイルシステムからネイティブアドオンを読み込む機能が実装された。Single Executable Applications(SEA)機能でも、バンドルされたアセットをこのVFS経由でマウントするよう変更されている。さらに、ブラウザ互換のWeb Workers APIのサポートも今回のリリースで加わり、ワーカーのref/unref制御も可能になった。 そのほかの修正と非推奨化 バグ修正では、Buffer.prototype.indexOfにlone surrogateを検索語として渡した際のクラッシュ、Hmac.digest()が未初期化メモリを返す可能性があった問題、RSA-PSSの過大なsalt処理エラー、HTTP/2で大きなウィンドウサイズ時に発生していた書き込みデッドロックなど、セキュリティやデータ整合性に関わる複数の不具合が修正された。HTTP/2に関しては、RSTによる不完全な読み取りに対するエラー処理と自動ドレインが導入されるのに合わせて、abortedイベントが非推奨となっており、今後はエラーハンドリングベースの実装への移行が推奨される。今回のリリースは実験的機能が多く、FFIのようにデフォルト有効化されたものがある一方、node:benchのように依然としてフラグが必要なものも混在しているため、利用する際はドキュメントで各機能の安定度を確認しておくとよいだろう。

September 19, 2026

VS Code 1.138リリース、Dev Containers内でのエージェント実行やセッション自動整理などエージェント活用機能を強化

概要 Microsoftは9月16日、Visual Studio Codeの月例アップデート「1.138」をリリースした。今回の更新は全体としてAIエージェントを日常的な開発ワークフローに組み込むことを強く意識した内容になっており、隔離された開発環境でのエージェント実行、外部AIツールとのセッション連携、増え続けるセッション履歴の管理自動化など、エージェントを「使い続ける」ことを前提にした機能が中心となっている。単発の機能追加というより、これまで積み上げてきたエージェント関連機能を運用面から補強するアップデートといえる。 Dev Containers内でのエージェントセッション実行 目玉機能は、ローカルフォルダをDev Container環境内でエージェントに実行させられるようになった点だ。設定chat.agentHost.devContainer.enabledを有効にした上でワークスペースピッカーから「Use Dev Container」を選択すると、プロジェクトが定義する依存関係やツールチェーンに揃った隔離環境の中でエージェントが作業するようになる。ホストマシンを直接汚さずに済むため、依存関係の衝突やエージェントによる意図しない変更のリスクを抑えつつ、リポジトリごとに再現性のある実行環境を確保できる。なお本機能の利用にはDockerのインストールが前提となる。 Codexセッションの拡張とセッション管理の自動化 Codexセッションまわりの機能も拡充された。GitHub CopilotとChatGPTのいずれのサブスクリプションを使うか切り替えられるようになったほか、ChatGPTアプリとVS Codeの間でセッションを継続できるようになり、ChatGPTアプリ側のコンピュータ操作機能や、VS Codeに組み込まれたツール・拡張機能・MCPツールへのアクセスも統合された。複数のツールを横断してエージェントを使う開発者にとって、作業の起点をアプリ間で行き来しやすくなる変更だ。 あわせて、プレビュー機能として完了済みセッションの自動整理が導入された。マージ済みのプルリクエストに紐づくセッションをchat.agentSessions.autoMarkAsDoneMergedSessionsAfterDaysで指定した日数後に自動的に「Done」としてマークし、さらにchat.agentSessions.autoDeleteArchivedMergedSessionsAfterDaysで指定した期間が経過すると自動削除できるようになっている。エージェントを並行して多用するほどセッション一覧が肥大化しやすいため、この自動整理は運用上の負担を軽減する狙いがあるとみられる。あわせて、エージェントセッションから直接プルリクエストを作成できるようになり、タイトルや説明、ドラフト状態、マージオプションを1つのフォームでまとめて編集できるようになった。 その他の改善点 このほか、複数セッションの中で入力待ちや確認が必要なものをタスクバーのバッジで知らせる「セッション注意バッジ」がプレビューとして追加された。オートメーション機能はデフォルトで有効化され、チーム間での共有も可能になっている。音声モードには並列で動くエージェント作業間をナビゲーションする機能が加わったほか、ローカルフォルダ・リポジトリ・リモート環境を一つの検索可能なリストにまとめる実験的な統一ワークスペースピッカーも登場した。なお、従来のチャット背景設定chat.agentSessions.backgroundImageLayoutはテーマ別設定に置き換えられ、「Chat: Clear Background」コマンドは「Chat: Set Background…」内の「No Background」オプションに統合されるなど、細かな整理も行われている。今回の一連の変更から、VS Codeがエディタとしての機能拡張だけでなく、複数のAIエージェントを日常的に運用するためのハブとしての性格を強めていることがうかがえる。

September 19, 2026

サムスン支援の蘭Euclyd、独自アーキテクチャの推論チップでNvidiaに挑む2億ユーロ調達

概要 オランダ・アイントホーフェン拠点のAI推論チップ新興企業Euclydが、サムスン電子が共同リードするシリーズAラウンドで2億ユーロ(約2億3,100万ドル)超を調達した。ラウンドにはSomerset Capital Partners、Innovation Industries、EQT傘下のScaleup Europe Fundのほか、EIFO、imec.xpand、Brabant Development Agency、Quadriも参加している。2024年設立のEuclydは、GPUとは異なる独自アーキテクチャの推論特化型チップとサーバーラックシステムを開発しており、AI推論需要が急拡大するなかでNvidia一強の市場構造に挑む動きとして注目されている。 Euclydの技術と製品ロードマップ Euclydの共同創業者は5人で、哲学とコンピュータエンジニアリングの博士号を持ち、かつてASMLの技術戦略家を務めたBernardo Kastrup CEOのほか、Atul Sinha、Gerard Egelmeers、Ingolf Held、Harm Peterが名を連ねる。同社は16,384基のカスタムプロセッサを搭載する推論チップ「CRAFTWERK」と、32チップを統合したシステム「CRAFTWERK Station」を開発中で、2028年までに1エクサフロップの演算性能達成を目標に掲げる。同社はNvidiaの最新「Vera Rubin」チップと比較して最大100倍の電力効率を実現すると主張しているが、これは商用規模での実測結果ではなく、現時点では自社試算にとどまる点には留意が必要だ。製品はセキュアな自社ホスト型AI推論向けのチップおよびサーバーラックとして販売するほか、独自プロセッサを開発する企業向けに技術ライセンス供与も計画している。出荷開始目標は2028年で、すでに4社の見込み顧客と交渉中、2027年には2社への供給開始を目指すとしている。 サムスンの狙いと市場背景 サムスンの半導体イノベーションセンター責任者Dede Goldschmidt氏が投資を主導した。同氏は「AIの次段階は、モデル革新だけでなくインフラの効率性とスケーラビリティによって定義される」と述べている。Kastrup CEOも、サムスンの支援は資金にとどまらないと強調し、「世界有数のメモリ製造企業として、エンジニアリング、システム知識、サプライチェーンの専門知識を提供できる」と語った。サムスンにとっては半導体製造面での協業を視野に入れた出資とみられ、同時期にはフランスのMistral AIにも30億ユーロを投資しており、カスタムAIシステム開発における協業を広げている。 競合環境と展望 Nvidiaは現在、AIトレーニング向けチップ需要の約80%を握るとされるが、推論分野ではより多くの企業が競争に参入しつつある。Google、Amazon、Meta、OpenAIといった大手プラットフォーマーも、コスト削減とNvidia依存の低減を狙い自社チップ開発を進めており、Euclydは非GPUアーキテクチャという切り口でこの潮流に加わる格好だ。背景には、データセンターの運用コストと電力消費の削減が業界共通の課題となっている事情がある。グローバルAIチップ市場は2026年時点の約1,000億ドルから2030年には4,000億ドル超へ拡大すると見込まれており、Euclydが掲げる2028年の量産開始と2030年までに数千社の企業顧客獲得という目標が実現するかが、今後の焦点となる。

September 19, 2026

米FAA、AI管制支援プラットフォーム「SMART」導入へ 12年8.75億ドルの契約でワシントンD.C.圏から先行運用

概要 米連邦航空局(FAA)は、深刻化する航空管制官不足と、それに伴う遅延・欠航の増加に対応するため、Air Space Intelligence社が開発したAIプラットフォーム「SMART」(Strategic Management of Airspace, Routes, and Trajectories)を導入する。契約規模は12年間で8億7500万ドルにのぼり、政府機関によるAI基盤への投資としては大規模なものとなる。SMARTはクラウドベースのソフトウェアで、既存のFAA航空管制システムを補完・強化する位置づけであり、まずワシントンD.C.都市圏の空域で先行導入されたのち、他地域へ順次拡大される計画だ。 SMARTの技術的な仕組み SMARTは、航空会社のスケジュール、気象パターン、空港の処理能力、空域の状況、運用上の制約といった多様なデータをAIで分析し、交通流を予測して、問題が顕在化する前に潜在的な空域上のコンフリクト(競合・輻輳)を特定する。これにより、管制官は業務負荷を管理しやすくなり、悪天候や空港のキャパシティ変動を踏まえたフライトスケジュールの事前調整を支援できるようになる。既存システムを置き換えるのではなく、その上に予測・意思決定支援のレイヤーを重ねる形で運用される点が特徴だ。 背景にある管制官不足とシステム老朽化 FAAは全米的に航空管制官の不足に長年苦しんでおり、その要因は勤務環境の厳しさや養成パイプラインの制約など多岐にわたる。同庁は2026年に入ってから、この人員不足に対応するための新たな採用強化策も発表しており、SMART導入はこうした人的リソースの逼迫を技術面から補う施策の一つと位置づけられる。あわせて、老朽化した航空管制システム全体の近代化も政府主導で進められており、SMARTはその一翼を担う格好だ。 今後の展望 ワシントンD.C.圏での先行運用の結果を踏まえ、他の主要空域への展開が見込まれる。AIによる予測的な交通管理が実際に遅延・欠航の削減にどれだけ寄与するかは今後の運用実績次第だが、12年という長期契約は、FAAがこの種のAI活用を一時的な実証実験ではなく、航空管制インフラの恒久的な一部として位置づけていることを示している。

September 19, 2026