9年前から潜むLinuxカーネルのptrace脆弱性(CVE-2026-46333)、root権限取得やSSH秘密鍵窃取が可能

概要 Qualysの脅威リサーチチームは2026年5月、Linuxカーネルの__ptrace_may_access()関数に存在するローカル権限昇格およびクレデンシャル漏洩の脆弱性(CVE-2026-46333)を公開した。この脆弱性は2016年11月のカーネルv4.10-rc1から存在しており、9年以上にわたって多くのエンタープライズ環境に潜伏していたことになる。Debian 13、Ubuntu 24.04/26.04、Fedora 43/44、SUSE、AlmaLinux、CloudLinuxなど主要ディストリビューションのデフォルト設定環境が影響を受ける。 技術的な詳細 脆弱性の本質は、特権プロセスが自身のクレデンシャルを降格させる処理中に生じる「狭い競合ウィンドウ」にある。__ptrace_may_access()関数は、特権プロセスがクレデンシャルを降格させている短い時間帯に、そのプロセスへのptraceアクセスを誤って許可してしまう。攻撃者はこの競合状態を、カーネルv5.6で追加されたpidfd_getfd()システムコールと組み合わせることで、権限降格中の特権プロセスからオープン状態のファイルディスクリプタを複製し、自身の非特権コンテキストで再利用できる。 Qualysは4種類の実証エクスプロイトを開発した。chageコマンドを悪用して/etc/shadowを読み取るもの、ssh-keysignを介して/etc/ssh/以下のSSHホスト秘密鍵を窃取するもの、pkexecを利用して任意のrootコマンドを実行するもの、そしてaccounts-daemon経由でsystemdのdbus処理をハイジャックしてroot権限を取得するものが含まれる。 開示タイムラインとパッチ状況 2026年5月11日にQualysがLinuxカーネルセキュリティチームへ非公開で報告し、5月14日にはアップストリームで修正がコミットされてCVEが採番された。その後数日間で主要ディストリビューションもセキュリティアップデートをリリースし、5月22日に完全な公開アドバイザリが公表された。パッチはすでに入手可能であり、各ディストリビューションのアップデートを直ちに適用することが強く推奨されている。 推奨対策 最優先の対応はディストリビューション提供のカーネルアップデートを適用することだ。即時適用が難しい場合の暫定的な緩和策として、kernel.yama.ptrace_scope = 2を設定することで悪用を防ぐことができるが、この設定はデバッグツールなどptraceを利用するソフトウェアの動作に影響を与える可能性がある。また、脆弱性の影響期間にSSHホスト鍵や特権プロセスが扱った管理者クレデンシャルへの不審なアクセスがなかったかを確認し、必要に応じてSSHホスト鍵のローテーションも検討すべきだ。QualysはQVSA(Qualys Vulnerability Signature)バージョン2.6.605-7から2.6.608-2にかけて15以上のQIDを公開しており、検出支援ツールとして活用できる。

May 25, 2026

Andrej KarpathyがAnthropicに入社、Claude事前学習チームを率いる

概要 OpenAIの共同創業者で、Tesla元AIリードのAndrej Karpathyが2026年5月19日、AnthropicのプレトレーニングチームへのジョインをXで発表した。「Anthropicに入社しました。LLMのフロンティアにおける今後数年間は特に重要な時期になると思います」と述べ、同週からNick Josephが率いる事前学習チームへの参加を開始している。 KarpathyはAnthropicにおいて、Claudeを活用して事前学習研究を加速させることに特化した新チームを立ち上げる予定だ。事前学習はフロンティアモデルの構築において最も計算コストが高いフェーズの一つであり、モデルのコア知識と基本能力を形成する根幹部分を担う。 Karpathyの経歴と戦略的な意義 Karpathyのキャリアは、AI研究の最前線を渡り歩いてきた。OpenAIではディープラーニングとコンピュータビジョンの研究に注力し(〜2017年)、その後Teslaへ転籍してフルセルフドライビング(FSD)およびオートパイロットプログラムを率いた(2017〜2022年)。2023年にはOpenAIへ復帰したが2024年に退社し、教育分野に特化したAIスタートアップ「Eureka Labs」を設立していた。 今回の採用は、Anthropicが純粋な計算リソースの増強よりも「AI支援による研究加速」をフロンティアモデル競争の鍵と位置づけていることを示している。KarpathyはLLL理論と大規模学習の実装の両面に精通した稀有な人材であり、OpenAIやGoogleとの競争においてAnthropicの事前学習能力を大きく引き上げることが期待される。 安全性強化に向けた採用も同時進行 Karpathyの入社と時を同じくして、Anthropicはサイバーセキュリティの第一人者Chris Rohlf(Yahoo・Meta出身、20年以上の経験)もフロンティアレッドチームに採用したことが明らかになっている。研究能力と安全性評価の両輪を強化するこれらの人材獲得は、Anthropicが次世代モデル開発に向けて本格的に体制を整えていることを裏付けている。

May 25, 2026

npm 11.15.0でステージド公開と非レジストリインストール制御が正式提供、サプライチェーン攻撃対策を強化

概要 GitHubは2026年5月22日、npmのセキュリティを強化する2つの主要機能を発表した。一つはステージド公開(Staged Publishing)の一般提供開始、もう一つはnpm 11.15.0で追加された非レジストリソースからのインストール制御フラグ群だ。いずれも、TeamPCPのようなサイバー犯罪グループによるオープンソースパッケージへの大規模なサプライチェーン汚染キャンペーンが増加する中、供給チェーン全体の防御を強化することを目的としている。 ステージド公開:2FA承認を挟むリリースフロー ステージド公開は、従来の「npm publish で即時公開」というモデルを改め、リリース前に人的承認ステップを挟む仕組みだ。開発者がCI/CDパイプラインから npm stage publish を実行すると、ビルド済みtarballがステージキューにアップロードされ、2FA(二要素認証)を有効にしたメンテナが明示的に承認するまで、利用者はそのバージョンをインストールできない。承認はnpmjs.comのウェブUIとnpm CLI両方から操作可能となっており、CI/CDは非対話的に実行し、メンテナが後から確認・承認するという運用モデルが想定されている。 この機能を利用するにはnpm CLI 11.15.0以上が必要で、対象パッケージはnpmレジストリに既存のものに限られる(新規パッケージは初回公開にステージド公開を使用不可)。また、OIDCトラステッドパブリッシングと組み合わせてパーミッションを stage-only に制限すれば、CIから直接公開することを完全に禁止できる。これにより、CIが侵害された場合でも悪意のあるバージョンが即座に配布されるリスクを大幅に低減できる。 インストールソース制御フラグ npm 11.10.0で導入された --allow-git フラグ(Gitソースからのインストール制御)を拡張する形で、npm 11.15.0では以下の3つの新フラグが追加された。 --allow-file: ローカルファイルパスおよびローカルtarballからのインストールを制御する --allow-remote: httpsなどのリモートURLからのインストールを制御する --allow-directory: ローカルディレクトリからのインストールを制御する 各フラグは all(現在のデフォルト)または none の値を受け入れ、CLIオプション・.npmrc・package.json のいずれでも設定できる。なお、--allow-git はnpm v12(次期メジャーバージョン)でデフォルトが all から none に変更される予定であり、今後はレジストリ外ソースへの依存がより明示的な許可を必要とする方向に進む見通しだ。 セキュリティ上の意義 これらの機能は、レジストリ外ソースからの依存関係導入や、CI/CDを経由した意図しないパッケージ公開を防ぐ明示的な許可リスト方式を提供する。サプライチェーン攻撃の手口が高度化・大規模化する現状において、パッケージのライフサイクル全体にわたってメンテナの意図的な関与を求める設計は、エコシステム全体の信頼性向上に寄与するものと評価されている。

May 25, 2026

OpenTofu 1.12リリース、10年越しの動的prevent_destroyをTerraformに先駆けて実装

概要 OpenTofu 1.12.0が2026年5月14日にリリースされた。今回の目玉は、prevent_destroyライフサイクル引数を動的に設定できるようになったことで、これはTerraformのGitHubに2016年に起票されながらHashiCorpが一度も実装しなかった機能だ。コミュニティ主導のフォークとして誕生したOpenTofuが、商業的に管理されてきたTerraformを開発速度で上回っていることを象徴するリリースとなった。 動的prevent_destroyサポートの詳細 従来、prevent_destroyはハードコードが必須であり、本番環境と開発環境を同一のモジュールで管理しようとすると、すべての環境で同じライフサイクルルールが適用されるという制約があった。これを回避するにはモジュールを複製するしかなく、管理コストが増大していた。OpenTofu 1.12では、prevent_destroyに入力変数などの動的な値を参照できるようになり、環境ごとに異なるライフサイクルルールを単一のモジュールで適用できる。例えば本番環境ではprevent_destroy = true、開発環境ではprevent_destroy = falseといった設定を変数で切り替えることが可能になった。 その他の新機能と改善 プロバイダーチェックサムの改善により、tofu initの実行時にロックファイルへzh:とh1:両方のハッシュが自動で記録されるようになった。従来はtofu initでzh:ハッシュのみが書き込まれ、キャッシュやミラーに必要なh1:ハッシュを取得するために別途tofu providers lockコマンドを実行する必要があったが、この手間が不要になった。 -json-into=FILENAMEフラグが新たに追加され、機械可読なJSON出力を指定ファイルへ書き込みながら、端末には人間が読みやすい通常の出力を維持できるようになった。CI/CDパイプラインなどでのツール統合を容易にしつつ、オペレーターの可読性を損なわない改善だ。 また、destroy = falseメタ引数により、インフラを実際に削除することなくリソースをOpenTofuの管理状態から除外できるようになった。複数プロバイダーの依存関係がある場合のtofu initの並行インストール対応も行われ、初期化時間の短縮が図られている。 廃止予定 WinRMプロビジョナーは保守が行われていないGoライブラリへの依存を理由に非推奨となり、バージョン1.13での削除が予定されている。また、386およびARMの32ビットアーキテクチャのビルドも段階的に廃止される予定だ。

May 25, 2026

悪意あるVS Code拡張機能経由でGitHub社員端末が侵害、内部リポジトリ約3,800件が流出

概要 サイバー犯罪グループ「TeamPCP」(別名:UNC6780)が、悪意を持って改ざんされたVisual Studio Code拡張機能を媒介にGitHub社員の開発端末へ侵入し、約3,800件の内部リポジトリを窃取したことをGitHubが認めた。攻撃者はすでに盗んだソースコードを5万ドル以上で売却リストに掲載しており、買い手が見つからない場合はリークも辞さないと示唆している。GitHubは調査を進める一方で、顧客データへの影響は確認されていないと説明している。 攻撃手法:VS Code拡張機能の悪用 今回の侵入経路として確認されたのが、インストール数220万件を誇る人気拡張機能「Nx Console」への不正な改ざんだ。VS Code拡張機能はサンドボックス化が不十分であり、インストールされた開発者マシン上のあらゆるリソース(認証情報、クラウドAPIキー、SSHキーを含む)に対してフルアクセス権を持つ。Aikido SecurityのCharlie Eriksenは「VS Code extensions have full access to everything on the developer’s machine, including credentials, cloud keys, and SSH keys(VS Code拡張機能は開発者のマシン上のすべてに完全なアクセス権を持ち、認証情報やクラウドキー、SSHキーも例外ではない)」と警鐘を鳴らす。攻撃者はこの特性を悪用し、GitHub社員の端末に保存されていたGitHub内部リポジトリへのアクセス資格情報を取得したとみられる。 GitHubの対応と被害範囲 GitHubはインシデントの発覚後、重要なシークレットと認証情報のローテーションを直ちに実施した。現時点では、被害は内部リポジトリのみに限定されており、GitHub.comのユーザーが利用するシステムや顧客データが侵害されたという証拠は見つかっていないと説明している。ただし調査は現在も継続中であり、今後の調査で新たな事実が判明する可能性は残る。 TeamPCPの活動背景と今後のリスク TeamPCPはオープンソースプロジェクトやAIツールを標的にしたサプライチェーン攻撃を得意とするグループで、過去にもAquaのTrivy scanner、CheckMarxのKICS、LiteLLM、Telnyx SDK、TanStack、MistralAIなどが被害を受けている。開発者が日常的に使用するツールやパッケージを侵害することで、信頼された経路を通じた広域攻撃を狙うのが特徴だ。今回のGitHub侵害は、開発者エコシステムにおけるサプライチェーンリスクの深刻さを改めて浮き彫りにしており、企業・個人を問わずVS Code拡張機能の信頼性検証や最小権限原則の徹底が急務となっている。

May 25, 2026

Cisco Secure Workload REST APIの最大深刻度脆弱性(CVE-2026-20223、CVSS 10.0)を修正

概要 Ciscoは2026年5月、Secure WorkloadのREST APIに存在する最大深刻度の脆弱性CVE-2026-20223(CVSSスコア10.0)に対するパッチを公開した。この脆弱性は「RESTAPIエンドポイントへのアクセス時における検証と認証の不備」に起因するもので、認証されていない遠隔攻撃者が細工したAPIリクエストを送信するだけで、サイト管理者(Site Admin)の権限でテナント境界を越えた機密情報の読み取りや設定変更が可能となる。影響はSaaS環境およびオンプレミスのCisco Secure Workload Clusterソフトウェアの両方に及び、構成に関わらず対象となる。 影響範囲とパッチ情報 脆弱性の影響を受けるバージョンと対応状況は以下のとおりである。 バージョン3.9以前:パッチは提供されず、修正済みバージョンへの移行が必要 バージョン3.10:3.10.8.3で修正済み バージョン4.0:4.0.3.17で修正済み 本脆弱性を緩和する回避策は存在しないため、該当バージョンを利用している組織は直ちにアップデートを適用することが強く推奨される。CiscoはこのCVEを自社の内部セキュリティテストを通じて発見しており、現時点で野外での悪用事例は確認されていない。 背景と注意点 今回の修正は、Cisco製品における認証バイパス系の脆弱性が相次いで報告されている文脈の中で発表された。直近では、Catalyst SD-WAN Controllerにおいても同様に最大深刻度(CVSS 10.0)の認証バイパス脆弱性CVE-2026-20182が明らかになっており、こちらは脅威アクター「UAT-8616」による実際の悪用が既に確認されている。Cisco Secure Workloadは主にクラウドワークロードのマイクロセグメンテーションや可視化に利用されるプラットフォームであり、攻撃者に管理者権限を奪取されると、ネットワーク内のセグメンテーションポリシーの変更や機密データへの不正アクセスなど、深刻な影響を招く可能性がある。早期パッチ適用と脆弱性管理プロセスの見直しが急務である。

May 24, 2026

Laravel-Langパッケージがサプライチェーン攻撃で侵害、700以上のバージョンに認証情報窃取マルウェア

概要 2026年5月22〜23日、Laravelアプリケーションのローカライゼーションライブラリとして広く使われているLaravel-Langの複数パッケージがサプライチェーン攻撃を受けた。SocketとAikidoのセキュリティ研究者が発見したこの侵害では、laravel-lang/lang・laravel-lang/http-statuses・laravel-lang/attributes・laravel-lang/actionsの4パッケージ合計233バージョン以上が悪意あるコードを含む形で公開され、700以上のGitHubリポジトリが関与していた。なお、これらはPHPフレームワーク本体(Laravel公式)ではなく、コミュニティが保守する多言語化パッケージである。 攻撃の痕跡として、複数のリポジトリで秒単位の間隔で大量のバージョンタグが発行されており、自動化されたスクリプトによる組織レベルの認証情報侵害が強く疑われている。 攻撃手法:Composerオートローダーを悪用した自動実行 攻撃者はGitHubのバージョンタグシステムを悪用し、正規のタグを悪意あるフォークのコミットに向け直す手口を用いた。開発者がComposer経由でパッケージを取得すると、パッケージ内のsrc/helpers.phpがComposerのオートロード設定に登録されており、Laravelアプリケーションの起動時に自動実行される仕組みになっていた。クラスのインスタンス化や特定の関数呼び出しは不要で、vendor/autoload.phpを読み込むだけでペイロードが走る。 初期ドロッパーは難読化された文字コード配列を用いてC2サーバー(flipboxstudio[.]info)と通信し、二次ペイロードをダウンロードする。TLS証明書の検証は無効化されており、一時ディレクトリ(sys_get_temp_dir()/.laravel_locale/)を作業領域として使用する。 マルウェアの窃取能力 ダウンロードされる二次ペイロードは約5,900行のPHP製スティーラーで、15〜17個の専門的な収集モジュールで構成されている。窃取対象は広範にわたる。 クラウド・インフラ系ではAWS IAMロールやメタデータエンドポイント(169.254.169.254)・GCP・Azure・DigitalOcean・Herokuの認証情報、KubernetesサービスアカウントトークンおよびHashiCorp Vault設定が対象となる。CI/CDパイプラインではJenkins・GitLab Runner・GitHub Actions・CircleCI・TravisCI・ArgoCDの設定・シークレットが盗まれる。開発ツールではSSH秘密鍵・Git認証情報・Dockerトークン・.envファイルが対象だ。これに加え、Chrome・Firefox・Edge等のブラウザパスワード、1Password・Bitwarden・LastPassなどのパスワードマネージャーデータ、MetaMaskやElectrumなどの暗号資産ウォレット、VPN設定、Discord・Slack・Telegramのセッショントークンも収集される。 収集したデータはAES-256で暗号化したうえでflipboxstudio[.]info/exfilに送信され、その後スティーラー自身を削除してフォレンジック証拠を消去する。 推奨される対応 影響を受けたパッケージを使用している場合、侵害が疑われるシステムは完全に危険な状態として扱い、既知の正常なイメージから環境を再構築することが推奨されている。加えて以下の順でシークレットをローテーションする必要がある。 クラウド認証情報(AWS・GCP・Azure) Kubernetes / HashiCorp Vault トークン CI/CDシークレット(GitHub Actions・GitLab・CircleCI等) SSH鍵・Dockerトークン データベース認証情報・その他の.env変数 侵害の確認にはcomposer.lockで対象パッケージの該当バージョンが含まれていないかチェックし、ネットワークログでflipboxstudio[.]infoへの通信履歴を確認する。一時ファイルsys_get_temp_dir()/.laravel_locale/やWindows環境ではDebugChromium.exeの存在も侵害指標となる。 まとめと教訓 このインシデントはComposerのオートロード機構という「信頼された実行経路」がサプライチェーン攻撃のベクターになりうることを示している。秒単位での大量タグ発行という異常なリリースパターンを検出できるCI/CDパイプラインの整備や、パッケージのハッシュ検証、最小権限の原則に基づくシークレット管理の重要性が改めて浮き彫りになった。

May 24, 2026

Node.js 26.2.0リリース — Temporal API統合、量子耐性暗号、HTTP 1xx新メソッドを追加

概要 Node.jsチームは2026年5月20日、Current系の最新版となるNode.js 26.2.0をリリースした。リリースマネージャーは@aduh95が務め、100件以上のコミットが含まれる大型アップデートとなっている。今回の目玉は、JavaScriptのTemporal APIをファイルシステム統計オブジェクトへ組み込んだことに加え、次世代の量子耐性暗号アルゴリズムのサポート開始、そしてHTTPプロトコルに関する利便性向上である。 Temporal APIとファイル統計の統合 セマバー的にMINORの追加として、fs.Statsおよびfs.BigIntStatsオブジェクトにTemporal.Instantサポートが実装された(PR #60789)。従来のDateオブジェクトはタイムゾーン処理や算術演算において多くの落とし穴があったが、Temporal APIを活用することでより精確かつ安全な日時操作が可能になる。合わせてStatsオブジェクト上のDateプロパティがenumerableに変更され(PR #63328)、オブジェクトの列挙やシリアライズ時の挙動が改善された。 量子耐性暗号のサポート BoringSSL環境向けにML-DSA(Module-Lattice-Based Digital Signature Algorithm)とML-KEM(Module-Lattice-Based Key-Encapsulation Mechanism)の2つの量子耐性暗号アルゴリズムが追加された。これらはNIST(米国標準技術研究所)が標準化を進めているポスト量子暗号の代表格であり、将来の量子コンピュータによる攻撃に備えたアプリケーション開発が可能となる。暗号関連では他にも、Web Cryptography APIでのChaCha20-Poly1305とAES-KWのサポート追加、CryptoKeyとKeyObjectの内部スロットセキュリティ強化、macOSでのシステム証明書列挙改善なども含まれている。 HTTP 1xxステータスコードとその他の新機能 HTTPモジュールに新メソッドwriteInformation()が追加され(PR #63155)、任意の1xxステータスコードを応答として送信できるようになった。これにより、103 Early Hintsなどのプリロードヒントや進捗通知など、中間的なHTTPレスポンスを扱う実装が容易になる。また長らく実験的扱いだったstream.composeがstableとして昇格したほか、QUICプロトコルの内部実装が完全に整備され--allow-netパーミッションへの対応も加わった。テストランナーでもタグによるフィルタリング機能が追加され、大規模なテストスイートの管理が改善された。 依存関係の更新 主要な依存パッケージも更新されており、undiciが8.3.0、corepackが0.35.0、sqliteが3.53.1、simdjsonが4.6.4、QUICライブラリのngtcp2が1.22.1へそれぞれバージョンアップしている。Node.js 26.2.0のバイナリおよびソースコードは公式サイトからダウンロード可能だ。

May 24, 2026

Victoria's SecretがScattered Spiderによるサイバー攻撃でECサイトを停止、Q2業績に約1,000万ドルの影響

概要 大手ランジェリーブランドのVictoria’s Secretは2026年5月23〜24日にかけてサイバーセキュリティインシデントが発生し、ECサイトと一部店舗サービスを緊急停止した。同社は「セキュリティインシデントを確認し、対応措置を講じている」と声明を発表し、外部セキュリティ専門家を起用して調査を進めていることを明らかにした。最高経営責任者(CEO)のHillary Super氏は社内向けに「復旧には時間がかかる」と伝えており、完全な業務正常化には相応の期間を要する見通しだ。なお、約70か国に展開する1,380店舗での実店舗営業は継続されており、物理的な販売活動への直接影響は限定的とみられる。 Scattered Spiderの関与疑惑と攻撃の手口 サイバーセキュリティ専門家の間では、今回の攻撃に脅威アクター「Scattered Spider(別名:UNC3944)」が関与しているとの見方が広がっている。Google Threat Intelligenceのアナリスト、John Hultquist氏はこのグループについて「攻撃的で創造的であり、成熟したセキュリティプログラムを持つ企業に対しても特に効果的に侵入を果たす」と評している。Scattered Spiderはソーシャルエンジニアリングやフィッシングを駆使して内部ネットワークへのアクセスを確立した後、ランサムウェアや恐喝を組み合わせた手口で被害者に圧力をかける手法が特徴だ。グループは近年、英国の小売業者への攻撃から米国の大手チェーンへと標的を移しており、FBIは主要小売企業に対して同グループの活動活発化を警告するインテリジェンス・ブリーフィングを実施している。 相次ぐ小売業へのサイバー攻撃 今回のVictoria’s Secret攻撃は、大手小売・ブランド企業を標的にした一連のインシデントの一部として位置づけられる。直近ではDiorが顧客情報に関するデータ侵害を公表し、Adidasもカスタマーサービスプロバイダーを経由した侵害を発表した。英国でもHarrods、Co-op、Marks & Spencerがそれぞれ攻撃を受けており、Marks & Spencerの損害額は最大3億ポンド(約4億200万ドル)に上る可能性が報じられている。また、Scattered Spiderは過去にカジノ大手のMGM ResortsやCaesars Entertainmentへの攻撃にも関与したとされており、インフラ規模の大きい企業を集中的に狙う傾向がある。 業績への影響と今後の見通し Victoria’s Secretの2024年通期の純売上高は62億ドルに達し、約3万人の従業員を擁する大規模企業だが、今回のECサイト停止により第2四半期の営業利益に約1,000万ドルの影響が見込まれると同社は発表した。復旧作業の長期化が懸念される中、顧客データの流出有無や詳細な攻撃ベクターについては現時点では明らかにされていない。セキュリティ専門家は小売業界全体に対してサプライチェーンリスクの見直しと多要素認証の徹底を呼びかけており、今後も詳細な調査結果の公表が注目される。

May 24, 2026

WordPress 7.0「Armstrong」正式リリース、プロバイダー非依存のAI統合とモダンな管理画面を実現

概要 WordPress 7.0「Armstrong」が2026年5月20日に正式リリースされた。リリースリードのMatias Venturaが発表したこのバージョンは、ジャズ音楽の巨人Louis Armstrong(“サッチモ”)に捧げられたもので、WordPressにとってAI時代の幕開けを告げる節目のリリースと位置付けられている。世界各地から875名以上のコントリビューターが参加し、200名以上の初回コントリビューターも加わって、420件以上の機能強化とバグ修正が盛り込まれた大規模なアップデートとなっている。 AI統合:Abilities APIとネイティブAIクライアント 7.0の最大の目玉は、コアに組み込まれたネイティブのAIクライアントとAbilities APIだ。このAIクライアントは特定のAIプロバイダーに依存しない設計で、管理画面の「コネクターズ」画面という一元的なハブから外部AIサービスへの接続を管理できる。3種類のプリセット接続が用意されており、独自の接続を追加することも可能だ。Abilities APIと組み合わせることで、ワークフローの自動化や新たなコンテンツ作成ツールをWordPressサイト上で直接利用できる。 さらに、JavaScriptベースのClient-Side Abilitiesパッケージも新たに導入された。これはAbilities APIのフロントエンド対応版で、組み込みUIとコマンドパレットを備え、AIを活用した多彩な操作を可能にする。別途提供されるAIプラグインをインストールすれば、画像の生成・編集、タイトルや抜粋の自動生成、代替テキスト(alt text)の提案といった機能も利用できる。 モダンな管理ダッシュボードと新ブロック 管理画面も全面刷新された。新しいカラースキームと洗練されたデザインが採用され、画面遷移時のスムーズなトランジションが追加されている。管理バー上部に追加された⌘K/Ctrl+Kのコマンドパレットショートカットにより、ダッシュボード内のどこからでもよく使うツールに素早くアクセスできる。また、テーマを問わず全フォントを一元管理できる専用フォント管理ページが加わり、ブロックテーマ・ハイブリッドテーマ・クラシックテーマの全タイプに対応している。リビジョン履歴のUI改善も行われ、変更箇所をビジュアルでスクラブして確認し、任意のバージョンに素早く戻せるようになった。 コンテンツ制作面では、ライトボックス形式のスライドショーを表示できる新ギャラリーブロック、新Headingブロック、Breadcrumbs(パンくずリスト)ブロック、Iconsブロックが追加された。デバイスごとにブロックの表示・非表示を切り替えられるレスポンシブ制御の強化、ブロックレベルのカスタムCSS記述、メニューオーバーレイのブロックベース構築、パターンの単体管理と要素スワップも実現している。 開発者向けツールの拡充 開発者向けにも重要な強化が行われた。PHPのみを使用したブロックとパターンのサーバーサイド生成がサポートされ、Block APIへの自動登録が可能になった。サイトエディターのルーティング・ルートバリデーション機能が拡張され、新たなwordpress/bootパッケージによりプラグインがカスタムのサイトエディターページを構築できるようになっている。70以上のロケールで翻訳が完了しており、200以上の言語への対応が進んでいる。21以上のウェブホストがリリース前のバージョンをテストし、ホスティング環境との互換性確保にも取り組んでいる。

May 24, 2026