AI半導体株が総崩れ、時価総額1兆ドル超消失でTSMC・ASML決算に市場の視線
概要 AIブームを牽引してきた半導体関連株が急速に売り込まれ、Reuters の試算では時価総額で約1兆3000億ドルが失われる「チップ株の暴落」が発生した。マイクロン、インテル、AMD、サムスン電子、SKハイニックスなど主要企業の株価が軒並み下落し、フィラデルフィア半導体指数は10.8%下落、VanEck半導体ETFは直近10営業日で13%安、iシェアーズ半導体ETFも週間で8%下落するなど、指数レベルでも急落が鮮明になっている。下落の背景にあるのは需要そのものの減退ではなく、AIインフラ投資の投資対効果への懐疑論、ドットコムバブル期に匹敵するとも指摘される割高なバリュエーション、そしてFRBのタカ派姿勢が強まったことへの警戒感が重なった結果だとされる。 TSMCとASMLの決算に集まる注目 こうした市場の動揺のさなか、7月15日発表予定のASML、16日発表予定のTSMCの決算はこれまで以上に重要度が高まっている。TSMCは6月単月の売上高がNT$4426.8億と前年同月比68%増、前月比でも6.2%増加し、2026年上半期の累計売上高はNT$2兆404億(前年同期比35.6%増)に達するなど、ファンダメンタルズ自体は極めて強い。市場関係者はNvidia向けチップの需要を支えるCoWoSなど先端パッケージング技術の採算性に注目している。ASMLについてもLSEGの予想によれば、第2四半期の純利益は前年比8.8%増の26億1000万ユーロ、売上高は14%増の88億ユーロに達し、通期売上高ガイダンスは360億〜400億ユーロへ上方修正される可能性がある。アナリストのMehdi Hosseini氏は、ASMLの生産能力は2027年末まで実質的にすべて予約済みとの見方を示しており、好決算とガイダンス引き上げが見込まれている。 ASMLの供給制約と中国リスク ASMLにとって最大の焦点は、AIチップ製造に不可欠な最先端EUV露光装置(1台あたり約3億ドル、製造に約1年を要する)の供給制約だ。同社は2026年に低NA型EUV装置を60台出荷する計画で、これは2025年実績比25%増にあたり、2027年には最大80台まで生産能力を引き上げる方針を示している。JPモルガンのアナリストは理論上110台までの製造が可能と指摘する一方、ASML自身は「理論上90台」との見解を示しており、既存装置のアップグレードや組立・設置の迅速化といった対応策の検討も進めている。一方で中国市場は2026年売上の最大20%を占めるが、これは自動車・産業用・電子製品向けチップに使われる旧世代のDUV装置が中心で、最先端EUV装置は現時点でも中国向けに販売されていない。しかし、同盟国に対中輸出管理の足並みを揃えるよう求める米国の新たな法案がASMLを名指ししており、中国向けの最後の販売チャネルが絶たれかねないリスクとして警戒されている。 見方が分かれるアナリスト評価と今後の展望 ASMLの評価をめぐってはアナリストの見解が分かれている。Morningstarのハビエル・コレオネロ氏は、同社が掲げる2030年の売上目標440億ユーロについて「過度に保守的」だとし、自身は600億ユーロの達成も十分あり得るとの強気の見方を示す一方、KBCのトーマス・クーヴルール氏は2027年予想利益に対する株価収益率が49倍と割高であるとして「ホールド」を維持している。TSMC(Nvidia向けチップ生産)、サムスン電子、SKハイニックス、さらにはインテルの巻き返しやイーロン・マスク氏が構想する「TeraFab」計画といった潜在的な設備投資需要も、ASMLの見通しを支える材料として挙げられている。今回の株安が一時的な調整にとどまるのか、AI投資バブルの転換点となるのかは、15日・16日に相次いで発表されるASMLとTSMCの決算内容とガイダンスが大きな判断材料になるとみられている。