AWSがNVIDIA Blackwell GPU搭載EC2 G7インスタンスを一般提供開始、AI推論性能が前世代比4.6倍に

概要 AWSは2026年6月18日、NVIDIA RTX PRO 4500 Blackwell Server Edition GPUを搭載した新世代のGPUインスタンス「Amazon EC2 G7」の一般提供(GA)開始を発表した。AWSは大手クラウドプロバイダーとして初めてこのGPUをサポートする企業となる。現在、米国東部(オハイオ)および米国西部(オレゴン)リージョンで利用可能で、AI推論やグラフィックスレンダリング、ビデオトランスコーディングなど多様なワークロードに対応している。 G7インスタンスは前世代のG6と比較して大幅な性能向上を実現している。AI推論性能は最大4.6倍、グラフィックス性能は最大2.1倍に向上したほか、GPUメモリ容量は1.33倍、GPUメモリ帯域幅は2.45倍、ネットワーク帯域幅は7倍(700 Gbps)に拡大した。さらに同時ビデオストリーム処理能力も1.5倍に向上しており、あらゆる面で前世代を上回る。 技術仕様とインスタンスサイズ G7インスタンスはg7.2xlargeからg7.48xlargeまで7つのサイズを提供する。最大構成であるg7.48xlargeおよびg7.metalでは、GPU 8基(各32GB VRAM、合計256GB)、192 vCPU、768 GiBのシステムメモリ、最大7.6TBのNVMe SSDローカルストレージ、700 Gbpsのネットワーク帯域幅を備える。 対応OSはAmazon Linux、Ubuntu、RHEL、Windows Serverで、AWS Deep Learning AMI、NVIDIA Workstation AMI、またはNVIDIAドライバR595を含むカスタムEKS AMIを使用して利用できる。価格体系はオンデマンド、Savings Plans、スポットインスタンス、および12xlarge以上向けの専有インスタンスの4種類から選択可能だ。 対象ユースケースと今後の展開 EC2 G7インスタンスが主に想定するユースケースは、AI推論、グラフィックスレンダリング、ビデオトランスコーディング・解析、空間コンピューティング、仮想デスクトップインフラ(VDI)、そしてGPU加速データ分析など幅広い。特にBlackwellアーキテクチャの高い演算密度と大容量のGPUメモリは、大規模言語モデル(LLM)の推論や複数ストリームのリアルタイム映像処理において強みを発揮する。 現時点では米国の2リージョンのみの提供となっているが、AWSは今後さらに多くのリージョンへの展開を予定している。Blackwell世代のGPUを主要クラウドで初めて利用可能にしたことで、AWSはGPUクラウドコンピューティング市場における先行優位性を確保した形だ。

June 25, 2026

NGINX Open Sourceにリモートコード実行を許す重大脆弱性2件、F5がパッチ公開

概要 F5は2026年6月18日、NGINX Open Sourceに存在する2件の重大な脆弱性にパッチを公開した。いずれもCVSSスコア9.2と評価されており、認証なしのリモート攻撃者がリモートコード実行(RCE)を達成できる可能性がある。対象となるNGINX Open Sourceのバージョンは、CVE-2026-42530が1.31.0〜1.31.1(1.31.2で修正)、CVE-2026-42055が1.31.1および1.30.0〜1.30.2(それぞれ1.31.2、1.30.3で修正)であり、Gateway Fabric、Instance Manager、Ingress Controller、F5 WAF製品も影響を受ける。公開時点では野放しの悪用は確認されていないものの、F5製品の脆弱性は過去に急速に武器化された事例があるため、速やかなアップデートが強く推奨されている。 脆弱性の技術的詳細 CVE-2026-42530(CVSS 9.2)は、HTTP/3 QUICモジュール(ngx_http_v3_module)に存在するuse-after-free脆弱性だ。セッションレベルのポインタが単方向ストリームよりも長く生存するライフタイムの不一致が根本原因であり、HTTP/3が有効な構成でリモートの未認証攻撃者がこの欠陥を突くことができる。ただし悪用にはASLR(アドレス空間配置のランダム化)が無効化またはバイパス可能な状態であることが条件となる。緩和策としてHTTP/3を無効化することで攻撃経路を遮断できる。 CVE-2026-42055(CVSS 9.2)は、HTTP/2プロキシおよびgRPCモジュールに存在するヒープベースのバッファオーバーフローだ。HPACKのvarintエンコーダが予約された4バイトではなく5バイトを出力してしまい、割り当て済みメモリ領域の外に書き込みが発生する。悪用の前提条件として、proxy_http_version 2またはgRPCパスの有効化に加え、ignore_invalid_headers offの設定とlarge_client_header_buffersが2MBを超えることが必要となる。回避策としてはignore_invalid_headers offディレクティブを削除するか、large_client_header_buffersを2MB未満に縮小することが有効だ。 推奨される対応 F5は各CVEのドキュメントで脆弱性を修正した具体的なバージョンを案内している。パッチ適用が即座に困難な場合は、各脆弱性に対応した設定ベースの緩和策を暫定的に適用することが重要だ。F5製品の脆弱性は過去にも迅速に悪用コードが出回った実績があるため、対応の優先度を高く設定するべきだろう。

June 25, 2026

OpenAI、Broadcomと共同開発した初のカスタムAI推論チップ「Jalapeño」を発表——NVIDIA依存脱却へ本格始動

概要 OpenAIは2026年6月24日、半導体大手Broadcomと共同設計した初のカスタムAI推論チップ「Jalapeño」を正式に発表した。同チップはユーザーリクエストへの応答として学習済みモデルを動作させる「推論(インファレンス)」に特化した設計で、早期テストにおいて「現行の最先端チップを大幅に上回る性能対消費電力比(Performance-per-Watt)」を示しているという。OpenAIとBroadcomのパートナーシップは2025年10月に正式発表されており、今回の公開はその具体的な成果となる。 開発プロセスとAI活用 注目すべきは、Jalapeñoの設計・開発プロセス自体にOpenAI自身のAIモデルが活用されている点だ。チップのアーキテクチャ検討やシミュレーションにAIを組み込むことで開発サイクルを短縮したとされ、「AIでAIを作る」という象徴的な事例となっている。OpenAI社長のGreg Brockmanは「自社のワークロードを深く理解しているからこそ、可能性の限界を押し広げられる」と述べており、ソフトウェアとハードウェアを一体として最適化できる強みを強調した。 戦略的意義——NVIDIA依存の低減 Jalapeñoの開発背景には、NVIDIAのGPUへの依存を減らしインフラコストを抑制するという明確な戦略がある。OpenAIはモデル、製品、インフラ、チップアーキテクチャ、データセンター、デプロイシステムを「スタック全体」として一貫して最適化できる体制を目指しており、同チップはその重要なマイルストーンだ。同様のアプローチはGoogleのTPUやAmazonのTrainiumでも見られ、クラウド・AI企業による独自シリコン開発の潮流がOpenAIにも波及した形となる。 今後の展望と課題 現時点でJalapeñoはテスト段階にあり、量産・実運用に向けたタイムラインは明らかにされていない。また同チップが対象とするのはあくまでも推論であり、計算負荷の高い事前学習(プレトレーニング)については引き続きNVIDIAのGPUに依存する見込みだ。それでも推論コストの効率化はOpenAIのビジネス経済性を大きく改善する可能性があり、将来的なGPUからカスタムシリコンへの移行を加速させる試金石として業界から注目を集めている。

June 25, 2026

国際共同作戦「Operation Endgame」がSocGholish・Amadey・StealCのインフラを解体、2,700万件の認証情報と4,700万ドルの暗号資産を回収

概要 オランダ・カナダ・ドイツ・米国・ベルギー・デンマーク・フランス・英国の法執行機関と、Microsoft・Bitdefender・Bitsight・ESETなどの民間企業が連携した国際共同作戦「Operation Endgame」の拡大フェーズが完了した。今回の作戦ではSocGholish(FakeUpdates)、Amadey、StealCの3種のマルウェアインフラを同時に解体し、326台のサーバーと142ドメインを無効化。感染したWordPressサイト約15,000件を修復するとともに、2,700万件の盗まれたログイン情報と4,700万ドル相当の暗号資産を回収した。2026年5月時点で全世界の感染コンピューターは14万台以上に上っており、Microsoftだけで1万8,000台以上の被害端末を特定・修復したという。 解体されたマルウェアの技術的詳細 **SocGholish(FakeUpdates/GhoLoader)**は2017年以来活動するJavaScriptベースのダウンローダーで、主にWordPressサイトに悪意あるコードを注入し、正規のブラウザアップデートに偽装してユーザーにマルウェアをダウンロードさせる手法を用いる。DNSプロバイダーへの不正アクセスで正規ドメインの配下に悪意あるサブドメインを作成する「ドメインシャドーイング」技術も活用しており、Evil Corp(2007年から活動するロシアのサイバー犯罪組織)をはじめLockBit・RansomHubとの関連も確認されている。今回の作戦では106台のサーバーを停止し、感染サイト14,971件を直接クリーンアップした。 Amadeyは2018年10月から稼働するC++製モジュラー型バックドアで、最新バージョンは5.87。マルウェア・アズ・ア・サービス(MaaS)モデルで1ライセンス600ドル・リビルドごとに50ドルで販売されており、53の異なるボットネットクラスターから配布される。システム情報収集・ファイルダウンロード・スクリーンショット取得・SOCKS proxy・VNCセッション・クリップボード監視・RDP有効化など多機能な攻撃能力を持ち、LummaやVidar・RedLineなどの情報窃取マルウェアの二次配布にも利用されていた。 StealCは2023年1月に初登場した情報窃取特化型マルウェアで、最新バージョンは2.2.1(2026年6月時点)。月300ドルまたは6か月1,000ドルのサブスクリプション制で提供され、認証情報・Cookie・オートフィルデータ・クレジットカード情報・閲覧履歴を幅広く窃取する。 背景と今後の展望 Operation Endgameは2024年に発足した継続的な国際サイバー犯罪対策の枠組みで、今回はその拡大フェーズとして位置づけられる。Infobloxの調査によれば、2026年に入ってクラウド顧客の55%がSocGholishのインフラへの到達を試みるトラフィックを記録しており、これらのマルウェアが広範かつ活発に利用されていた実態が浮き彫りになった。オランダ国家ハイテク犯罪ユニットのMaikel Rollman氏は「この作戦により、サイバー犯罪者が感染したコンピューターシステムへアクセスする手段を剥奪した」と述べた。今回の作戦で200件を超えるC2ドメインとIPアドレスがブラックリスト登録され、当局はWordPressサイト管理者に対してパスワード変更・多要素認証の有効化・不審なアカウントの削除・ソフトウェアの最新化を推奨している。

June 25, 2026

輸出規制で一時停止のClaude Fable 5、国籍ベース制限付きで復帰——AnthropicはGPT-5.5の同等性を盾に規制の不公平を訴える

経緯:輸出規制命令と全世界的なサービス停止 2026年6月12日午後5時21分(米国時間)、米商務省はAnthropicに対してClaude Fable 5とMythos 5のサービス提供を停止するよう命じる輸出規制令を発行した。この命令は「裁判所命令なし、公開申請なし、詳細な説明もない」まま下されたものであり、外国籍者を含むすべての外国人によるアクセスを禁じるという内容だった。 Anthropicは外国人ユーザーを選別的にブロックする技術的手段を持たないと判断し、やむを得ず両モデルを世界中のすべてのユーザーに対してシャットダウンした。6日間の停止を経て、Fable 5は6月18日に国籍ベースのアクセス制限付きで復帰した。 政府が当初示した規制の理由は「既知で軽微な脆弱性に関するジェイルブレイク技術への懸念」だったが、その後の報道では「技術的欠陥ではなく個人的および政治的要因」が背景にあると示唆された。さらにNSA司令官が議会でMythosについて「数週間ではなく数時間で機関のほぼすべての機密システムに侵入した」と証言したとも報告されており、規制の実際の根拠をめぐる情報は錯綜している。 争点となった能力とAnthropicの反論 政府が問題視した能力は「コードベースを読んでソフトウェアの欠陥を特定すること」だった。セキュリティエンジニアが日常的に行う作業と本質的に同様のこの能力を、Anthropicは「業界全体に広く存在するもの」と主張した。 特にAnthropicが名指ししたのがOpenAIのGPT-5.5だ。同社の公開文書では「このレベルの能力は他の商用モデルからも広く利用可能」とし、同じ基準を業界全体に適用すれば「すべての新しいモデル展開が本質的に停止する」と警告した。この主張を裏付けるように、英国AI安全研究所(UK AISI)はGPT-5.5とMythos Preview(Fable 5の基礎モデル)をサイバータスクにおいてほぼ同等と評価していた。 しかし批判もある。Anthropicは春にMythosを「異常に強力なサイバーツール」として積極的に宣伝していたにもかかわらず、規制に際して同じ能力を「ありふれたもの」と言い換えたことで、修辞的な矛盾を露呈した。 規制の不均衡と業界への影響 最も論争を呼んだのは、同等の能力を持つGPT-5.5が引き続き利用可能だったという非対称性だ。OpenAIはより厳格な分類器とアクセス制限によってその能力を管理していたとされるが、結果として同能力を持つモデルが一方は禁止され、もう一方は稼働し続けるという状況が生まれた。脆弱性研究の専門家であるKatie Moussourisはこれを「完全な過剰反応」と批判し、規制の整合性に疑問を呈した。また数十人の上級研究者がこの命令の撤回を求める声明に署名している。 この事件の余波は業界全体に及んでいる。単一の連邦機関が司法審査なしに米国企業のフラグシップ製品をオフラインにできるという現実が示されたことで、中国製オープンウェイトモデルへの移行加速や、米国の統制が及ばないモデルへの依存を避けようとする「国家主権AI」の動きが強まりつつある。今回の措置は商用AIモデルが規制当局によって強制停止された初の事例として、業界に新たなリスク認識をもたらすことになった。

June 25, 2026

AnthropicがSlack常駐AIチームメイト「Claude Tag」を発表、社内コンテキストを自律学習

概要 Anthropicは2026年6月23日、Slackに常駐するAIチームメイト「Claude Tag」のリサーチプレビューを発表した。Claude EnterpriseおよびClaudeチームプランのユーザーを対象に提供され、Slack上で@Claudeとメンションするだけで呼び出せる。これまでの単発的な質問応答型のSlack連携から一歩進み、継続的なコンテキストと記憶を保持しながら「チームメンバー」として組織内に常駐することが最大の特徴だ。 主要機能と仕組み Claude Tagは単なるチャットボットではなく、複数の自律的な機能を持つ。ユーザーがタスクを指示すると、Claudeはそれを複数のステップに分解し独立して処理を進め、最終結果をSlackスレッドで報告する。また「ambient(周囲感知)」モードで動作することで、組織全体の重要な情報を能動的に通知したり、フォローアップが滞っているスレッドやタスクをリマインドしたりする。 企業全体で単一のClaude「アイデンティティ」を共有できる点も注目される。複数の従業員が同じClaude IDにアクセスし、途中でタスクを引き継ぐことが可能だ。権限管理は管理者が細かく設定でき、法務部門のClaude Tagが工学部門のチャネル情報にアクセスしないよう、スコープを厳格に制限できる。Anthropic自身の社内では、Claude Tagが製品チームから提出されたコード変更の65%を承認・統合するという実績も紹介されており、実用的な効果を裏付けている。 企業市場での競争と背景 この発表はAnthropicの企業市場への注力戦略を象徴している。Rampが2026年5月に公表したAIインデックスによれば、AnthropicはOpenAIを初めて上回る企業導入率を達成しており(34.4% vs 32.3%)、エンタープライズ領域での存在感を急速に高めている。Claude Tagは、SalesforceのSlackbot機能やViktorなどのスタートアップと直接競合する位置づけで、予測可能で継続的な収益をもたらす企業顧客のさらなる獲得を狙う。 今後はリサーチプレビューを経て機能拡充が進む見込みであり、Slackを起点に組織の業務フローへAIを深く組み込む動きが加速しそうだ。

June 24, 2026

Go 1.27 RC1公開——ジェネリックメソッドを筆頭に言語・標準ライブラリを大幅強化

概要 2026年6月18日、Goチームはバージョン1.27の最初のリリース候補(RC1)を公開した。正式リリースは同年8月を予定しており、Goチームは本番環境や単体テストでのRCの検証とフィードバックの送付を呼びかけている。バイナリはgo installコマンドまたはgo.dev/dl/#go1.27rc1から入手できる。 最大の目玉は言語仕様への「ジェネリックメソッド」の追加だ。これまでGoのジェネリクスは関数をパッケージスコープで宣言する形に限られていたが、Go 1.27ではメソッド宣言が独自の型パラメータを持てるようになった。なおインターフェースのメソッドには型パラメータを宣言できない制約は残る。言語仕様の他の変更として、構造体リテラルのキーにトップレベルのフィールド名だけでなく有効なフィールドセレクタを使えるようになったこと、ジェネリック関数を関数型変数に代入するすべてのコンテキストで型推論が適用されるよう一般化されたことが挙げられる。 標準ライブラリの主要な追加 Go 1.27の標準ライブラリで最も影響が大きいのはencoding/json/v2とjsontextパッケージの追加だ。encoding/json/v2は既存のencoding/jsonを大幅に刷新したもので、無効なUTF-8やJSONオブジェクト内の重複キーを拒否するなどより厳密な挙動を持つ。既存のencoding/json APIはv2実装を内部で使いつつ後方互換性を維持するが、GOEXPERIMENT=nojsonv2で旧動作に戻すことも可能だ。またjsontextパッケージが低レベルなJSON構文処理のためのエンコーダ・デコーダを提供する。 暗号関係では、FIPS 204で規定されたML-DSA署名スキームを実装したcrypto/mldsaパッケージが追加された。crypto/tlsはMLKEM1024鍵交換をサポートし、crypto/x509もML-DSAに対応した。その他の新パッケージとして、UUIDの生成とパースを行うuuid、実験的なポータブルSIMDサポートを提供するsimdおよびsimd/archsimd(GOEXPERIMENT=simdで有効化)がある。ユーティリティ面ではbytesとstringsにCutLast()関数が、math/rand/v2にジェネリックなN()メソッドが、net/urlにURL.Clone()とValues.Clone()が追加されている。unicodeパッケージはUnicode 17へアップグレードされた。 ランタイムとツールの改善 ランタイムではメモリ割り当て速度の改善が注目される。サイズ特化の割り当てルーチンにより80バイト未満の小さい割り当てが最大30%高速化し、割り当て集約的なプログラム全体では約1%の性能向上が見込まれる(バイナリサイズは約60KB増加)。Go 1.26で実験的に導入されたゴルーチンリークプロファイル(/debug/pprof/goroutineleak)が正式機能に昇格した。またasynctimerchan GODEBUG設定が完全廃止となり、timeパッケージのチャネルは常にバッファなし(同期)で動作する。 ツール面ではgo docがpackage@version構文をサポートし、特定バージョンのパッケージドキュメントを参照できるようになった。go fixにatomictypes、embedlit、slicesbackward、unsafefuncsの新しいモダナイズツールが追加された。go mod tidyはGo 1.27以降のgo.modで重複したrequireブロックを自動マージし、最大2ブロック(直接依存・間接依存)に整理する。コンパイラのcompile・link・asm・cgo等のツールが@file形式のレスポンスファイルに対応した。プラットフォームではmacOS 13 Ventura以降が必須となり、それ以前のバージョンはサポート対象外になった。bzrバージョン管理システムのサポートも削除されている。

June 24, 2026

QualcommがAIチップ企業Tenstorrentを最大100億ドルで買収交渉、Jim Keller率いるRISC-V勢力と合流へ

概要 Qualcommが、AIチップスタートアップTenstorrentの買収に向けた交渉を進めていると、Reutersおよびメディア「The Information」が報じた。買収金額は80億〜100億ドル(約1.1〜1.4兆円)とされており、条件次第でパフォーマンスベースのマイルストーン条項が含まれる可能性もある。両社はコメントの要請に応じておらず、交渉が決裂する可能性も残されている。ニュース報道を受け、Qualcommの株価は時間外取引で約1%下落した。 Tenstorrentとは Tenstorrentは2016年に設立されたAIチップ企業で、AI モデルのトレーニングおよび推論向けアクセラレータの開発を手がける。最大の特徴はRISC-Vアーキテクチャを採用している点で、ARM一色のモバイル・エッジ市場や、CUDAエコシステムで覇権を握るNvidiaとは異なるアプローチを打ち出している。 同社を率いるJim Kellerは半導体業界の著名エンジニアとして知られ、AppleのAシリーズチップ開発や、Teslaの自動運転向けカスタムチップ設計に携わった経歴を持つ。業界では「チップ設計者の中のチップ設計者」とも評され、彼の参加がTenstorrentの注目度と資金調達力を高める大きな要因となっている。 Qualcommの戦略的意図 Qualcommは3G/4G/5G向けワイヤレス接続技術とコンピューティングプラットフォームを主力とし、近年はエッジデバイス上のオンデバイスAI機能の強化に注力してきた。しかしNvidiaがデータセンター向けGPUで圧倒的なシェアを持つAI学習・推論市場においては、存在感が限定的だった。Tenstorrentの買収が実現すれば、Qualcommはデータセンター向けAI推論チップという新たなセグメントへ本格参入し、Nvidiaへの対抗軸を持つことになる。 また、RISC-Vベースの独自アーキテクチャを取り込むことで、ARMライセンスへの依存を低減しながら、AI特化のカスタムシリコンを自社ポートフォリオに加えられる点も戦略的な意味を持つ。 今後の見通し AI半導体市場ではNvidiaのH100/B200が依然として標準的な選択肢として君臨する一方、AMDのMI300シリーズやIntelのGaudiシリーズ、そして各社の独自ASICが台頭しており、競争は激化している。Qualcommによる買収が成立すれば、RISC-Vという異なるアーキテクチャのプレイヤーが大手の後ろ盾を得て市場に挑む構図となり、業界全体の勢力図を塗り替える可能性がある。交渉の行方と最終的な買収条件が注目される。

June 24, 2026

Squidプロキシに29年来の脆弱性「Squidbleed」(CVE-2026-47729)、HTTPリクエスト平文が漏洩の恐れ

概要 広く使われているオープンソースのWebキャッシュプロキシ「Squid」に、1997年から存在していた脆弱性「Squidbleed」(CVE-2026-47729)が2026年6月22日に公開された。CVSSスコアは6.5(中程度)で、ヒープオーバーリードによって同一プロキシを利用する他ユーザーのHTTPリクエストや認証情報が平文で漏洩する可能性がある。名称はOpenSSLの重大脆弱性「Heartbleed」に類似したメモリ露出の性質にちなんで命名された。 技術的な仕組み 脆弱性はSquidのFTPディレクトリリストパーサー(FtpGateway.cc)に存在する。攻撃者が制御するFTPサーバから不正なファイルリスト行を送り込むと、パーサーのポインタがメモリバッファの境界を越えて読み込みを続ける。Squidは使い終わったバッファをゼロクリアせずに再利用するため、直前に処理した別ユーザーのHTTPリクエストデータがそのままメモリに残り、攻撃者に漏洩してしまう。これによりセッショントークン、認証情報、APIキーなどが窃取される恐れがある。なお、標準的なHTTPS通信(TLSトンネル)は影響を受けず、平文のHTTP通信またはSquidがTLSを終端する構成に限定される。 影響範囲と緩和策 最もリスクが高いのは、企業ネットワーク、学校、公共Wi-Fiなど、複数ユーザーが同一プロキシを共有する環境だ。攻撃の成立にはプロキシからアクセス可能なFTPサーバの制御が必要であるものの、FTPとポート21はSquidのデフォルト設定で有効化されているため、悪用のハードルは低い。 緩和策としては、FTP機能が不要な場合にFTPサポートを完全に無効化することが最も効果的だ。修正パッチは2026年4月にSquid version 8へマージされ、同年6月リリースのversion 7.6に搭載された。パッチの適用時はFtpGateway.ccにNUL終端チェックが含まれていることを確認されたい。 発見の経緯 脆弱性はセキュリティ企業Calif.ioの研究者チームが発見した。注目すべきは、AnthropicのClaude Mythosモデルを活用してパーサーのバグを検出した点であり、AIを活用した脆弱性探索の実例として広く注目されている。29年にわたって見過ごされてきた脆弱性を機械学習モデルが検出したことは、AIを用いたセキュリティ研究の有効性を示す事例として業界に与える影響は大きい。

June 24, 2026

WhatsApp経由のVBScriptキャンペーン、ManageEngine RMMを悪用して遠隔操作を確立

概要 Kasperskyの研究者が、WhatsAppを介して悪意のあるVBScriptファイルを配布するマルウェアキャンペーンを発見した。攻撃者はまずWhatsAppアカウントを侵害し、被害者の連絡先リストにある人物に対して偽のビジネス文書を送り付ける。ファイルは「Financial Reports.vbs」「Account Statement.vbs」「Outstanding Payment List.vbs」といった名称で、請求書や債務通知・銀行明細書を装っている。メッセージが既知の連絡先から届くように見えるため、被害者は疑わずにファイルを開いてしまう。文書名はポルトガル語・フランス語・ドイツ語・マレー語など複数言語で作成されており、マレーシア・ブラジル・インド・メキシコ・シンガポール・英国・スペイン・台湾・オーストラリア・ロシア・ベトナムを含む世界10カ国以上のユーザーが標的となっている。特にマレーシアが被害の約80%を占めている。 多段階の感染チェーン 攻撃は複数のステージで構成される巧妙な感染チェーンを採用している。まず初期のVBScriptがWindows Script Host(WScript.exe)によって実行され、C:\Users\Public\Documents\ 配下に Temp_<ランダム文字列> という名前の隠しワークディレクトリを作成する。次にcurl・bitsadmin・certutil・PowerShellのいずれかを使って攻撃者のインフラから2つの追加スクリプトをダウンロードする。 2つ目のスクリプトはWindowsのUAC(ユーザーアカウント制御)設定をレジストリで改ざんし、ConsentPromptBehaviorAdmin の値を0に設定することで管理者操作の確認ダイアログを無効化する。その後、ManageEngine Endpoint Centralの展開パッケージを含むZIPアーカイブをダウンロードし、setup1.vbs が正規のEndpoint Centralエージェントをサイレントインストールする。インストールされたRMMソフトウェアは攻撃者が管理するサーバーに接続するよう設定されており、これにより攻撃者は被害者のマシンに対する永続的なリモート管理権限を獲得する。スクリプト内には大量の難読化・ジャンクコード・文字列連結・偽のWindows Updateコメントが含まれており、セキュリティソフトによる検知を回避するよう設計されている。 正規ツールの悪用とLiving-off-the-Land戦術 このキャンペーンの特徴は、マルウェアを直接配布するのではなく、ManageEngine Endpoint Centralという正規のIT管理ツールを遠隔操作の手段として悪用する点にある。正規のRMMソフトウェアはセキュリティソフトのホワイトリストに登録されていることが多く、悪意のある通信として検出されにくい。攻撃者の目標は、データ窃取・ラテラルムーブメント(横展開)・さらなるネットワーク侵害など、継続的なアクセスを通じた多様な攻撃活動の実施と見られる。 攻撃インフラと帰属 確認された攻撃者のインフラには、temu.baskwms[.]top・invoice.msopsa[.]top・qse.shoppes[.]help などのドメインや、C2サーバーIPアドレス 202.61.160[.]201・202.61.160[.]202・38.55.151[.]63 が含まれる。ファイルの配信にはAliyun OSS・AWS S3・Backblaze B2などのクラウドストレージも利用されている。複数のVBSバリアントが記録されており、キャンペーンが活発に続いていることを示している。 帰属については、スクリプト内に中国語(簡体字)のコメントが埋め込まれていること、ValleyRATやGh0st RATとのインフラの重複が確認されていることから、中国語話者の攻撃者が関与している可能性が低〜中程度で示唆されている。ただし確定的な帰属には至っておらず、研究者らは引き続き調査中としている。本キャンペーンは2026年6月時点でも活動中であり、ユーザーには見覚えのない実行ファイルやスクリプトファイルの開封を避けるよう注意が呼びかけられている。

June 24, 2026